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遺物管理局捜査官日誌  作者: 黒ノ寝子
第四章 蛇と黒猫
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2 新人


 ローゼスにカクテルを追加で作らされて、宴会場に連行された。


 さっそく姉御に見つかったが、すかさずカクテルを渡して、ローゼスが証言してくれたので、無事にお許しを貰った。姉御もオレが作ったカクテルは高く評価していたらしい。芸は身を助けるのだ。


 だが、少しは交流して来いと新人たちが集う席に放り込まれた。

 旧世界管理局側の新人たちはさすがにオレに気づいたが、警備局側の新人たちはオレも旧世界管理局の新人だと誤解しただろうな。


 新人という概念は旧世界にもあったが、今の世界では、成人して世界管理局が指定する職務についたら、その職場の新人と呼ばれることになる。

 別の職場に移動した場合は、また新人からやりなおしだ。局の内部で移動する場合は新人とは呼ばれないが、局によって扱いが違うかもしれない。


 新人には職務に慣れるまでの間、指導相談役が付けられる。三年もすれば指導役の手を離れて一人前と扱われるようになるが、五年経っても指導役が必要な場合は、その職務に適性なしと判断されて別の職務が手配されるし、そこで新人から始めることになる。

 職務に適性があって優秀な人は、三年経たなくても一人前として扱われることもあるので、指導相談役が付いている人を新人と区別した方が分かりやすいかもしれない。


 新人が集まっている席であるが、この中でも新人の中の新人がいた。成人したばかりの旧世界管理局遺物調査課のミヤリと警備局特務課のリマだ。

 成長期の頃から友人だったという二人が仲良く話しているおかげで、旧世界管理局と警備局が微妙に緊張感を持って同席している他の宴席と違って、ここはかなり砕けた空気になっている。


 警備局と旧世界管理局の今後の関係改善は、こういう人たちに任せた方がいいだろう。

 そこに、警備局の一部から嫌われていたり、警戒されていたり、都合よく使われたり、さらに警備局長相手に暴言吐いて態度の悪いオレを混ぜるのはどうなのか。


 もしや新人の純粋な精神を見習って、初心からやり直せと?


 姉御の思惑が読めずにいたら、意外に早く理由が判明した。この場にいる全員が、明日からデルシー勤務らしい。

 各宴席を回りつつ雑談して回っていた<菩提樹>の管理者にして前旧世界管理局長がそう説明してくれた。


「旧世界管理局の新人の方たちは、デルシー海洋遺跡で遺跡管理の方法を学ぶとともに、宿泊施設デルシーの職員の一人として、来客に対しての丁重な受け答えや礼儀作法を学んでいただくことになります。職務外の時間は自由に行動できますが、デルシーの職員だと分かる方には分かるので、羽目を外さないようにしましょうね。

 警備局の方たちは新人教育の一環として、デルシーのような旧世界遺跡の警備の実践訓練を積みつつ、砂浜のような特殊な現場で行動するための訓練に励むとお聞きしていますよ。警備する場はデルシー海洋遺跡ですが、デルシー近くの浜辺に警備局専用宿舎兼訓練場があって、基本的にはそこを拠点に活動することになるでしょう。近くの砂浜では海水浴ができますし、一種の交流場ともなっていますから、砂浜の監視や警備も任務に含まれるので、なかなかにお忙しいようですね」


 ボーディは新人たちから質問されて丁寧に答えていたが、オレも知らなかったことがあるのが新鮮だ。それを察知されたのか、ボーディに去り際に言われた。


「それでは明日から、職務もおろそかにせずに楽しんできてください。分からないことはデルシー専属職員か、そこにいるデルシー経験豊富なユレス捜査官に聞けばいいでしょう。何故、新人さんたちの席に混じっているのです?」


「姉御にここに放り込まれたんだが、オレは明日からデルシー勤務組で親睦を深めろと言いたいのかと解釈していた」


「単に見た目で放り込んだだけということも想定しましょうね。ここの席は見ていて初々しいのですが、一人だけふてぶてしいのが混じっていて、わたしには大変違和感です」


 警備局の連中の誤解を解いてくれたのかもしれないが、かえって恐縮されたぞ。特務課の新人のリマはかなり動揺した。


「え、うそ、ごめんなさい。あたしたちと同じ年頃かと思ったけど、見たこと無いから、一つ上かと思ってて、ミヤちゃん、分かっていたなら早く言ってよ!」


「いつ気づくか、様子見していたのよ。私も旧世界管理局に入った当初は同じ誤解をしていたし」


「オレは個人的事情で未分化型だから仕方ない。そこはもう割り切っているから気にするな。見た目で驚きと言えば、あそこにいるローゼスの方が話題になると思うが」


 わざわざ近くの宴席で様子を窺っているようなので、話を振ってやったらにんまり笑って参加して来た。


「なーに、アタシの話題?焦らさないでさっさと呼んでよ」


「新人には刺激が強すぎると配慮したんだ。手加減して普通の話題にしろよ」


「えー、普通って何かしら、深淵な話題ね。まあいいわ、あんたたち明日からデルシー行きの組なんでしょ?じゃあ、デルシーの話をしてあげるけど、ボーディから真面目な話は聞いただろうし、アタシはお勧めの場所を教えてあげる!狙ってる子がいるなら誘ってみるといいわよー。落とせる確率上がるから」


 こういう話題は宴席で人気なのがよく分かる感じに盛り上げてくれたが、オレが参加しないのが不満なのか、こっちに話題振ってきた。


「んもう、新人じゃないからって、冷めた顔しちゃって!あんたは子ども専門とはいえ、その態度はどうなのよ」


「変な誤解をされそうなこと言うな」


 幸いにも、新人のミヤリが冷静に発言してくれた。


「私の指導担当の先輩からは、ユレス捜査官はデルシー海洋遺跡のご案内役として一番人気と伺いました。子ども優先で枠を埋めるので、成人は参加しづらいと。そういう意味ですよね?」


「んもう、ネタばらししたら、つまらないじゃないのよ。あ、そうだ、デルシーでのルールを念のため言っておくけど、ユレス捜査官とか呼ばないのよ?

 堅苦しいし任務中って感じが強く出ちゃうし、観光施設で捜査官とか不穏じゃないのよ。課長とか役職名で呼ばれることが多い人たちも、あんまり名前呼ばれないと、名前忘れられちゃうからたまには呼んであげて欲しいのもあって、役職名は基本的に使わないわ。

 基本的に役職名で呼ぶ相手って支配人くらいかしら。遺跡で緊急事態発生の場合って、支配人の指示で動かないといけないから、誰が支配人か分かってないと混乱しちゃうのよ。遺跡のご案内当番のために短期で出入りする職員が多いから、支配人だけは名前でなく役職名で呼んで周知図るのよね。

 ユレス捜査官のことは、ユレスって呼べばいいし、呼びづらいならユレスさんでいいのよ。この見た目のせいで常連客からはユレスちゃんとか呼ばれるときもあるから、遠慮はいらないわ」


「ユレスちゃんはやめてほしいんだが」


「あ、あの!ユレス捜査官、いえ、ユレスさんって明日から呼んでいいですか?ご案内で一番人気って、何か理由があるんですか?その猫ちゃんが可愛いから?」


 監視猫は子どもにも人気あるんだよな。本物の猫っぽいし、割と動き回るから、成人であっても目で追ってしまうようだし。

 この宴席でオレはさして喋ったりしていないが、猫を見る人と猫の話題を振って来る人は多いので、一応は会話に参加している。だが、デルシーでは猫が一番人気ではない。


「確かに猫は可愛いけど、一番の理由ではないわ。ミヤリは理由を知ってるのかしら?先輩から聞いた?」


「いえ、見る機会があったら驚くぞとだけお聞きしました」


「んふふふふ、じゃあ、アタシも先輩的なものとしてちょっとサービスしちゃお。ユレスもせっかくこの席に混ぜてもらったんだし、職務外にご案内くらいしてあげなさいよ。めんどくさいとか言わないで」


「……仕方ないな。だが、一回だけだぞ。ミヤリが取りまとめてくれ。デルシーに着いたら支配人と調整して、その機会を設定しておく」


「え、いいのですか。ありがとうございます」


 余計な仕事を振ったにも関わらず、礼を言われてしまった。新人は純真で働き者なんだな。


 オレは宴会の後デルシーに移動すると言ったら、何故か全員一緒に来ることになった。もしや仕込みか?新人たちの勤勉さを怠惰なオレに見習わせようと?オレが与える悪影響の方を心配した方がいいと思うのだが。


 どこからか情報が回ったのか、ボーディがまたやってきて、引率しようとは立派になりましたね、これはデルシーの支配人へのお土産のお酒と料理ですと、荷物持ちがたくさんいるのをいいことに、新人たちにあれこれ持たせて、オレたちを転送装置に押し込んだ。


ここまで読んでくれてありがとうございました。

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