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遺物管理局捜査官日誌  作者: 黒ノ寝子
第四章 蛇と黒猫
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1 大宴会

第四章開始。



 その獣は、人が愛と呼ぶものが世界を崩壊させたのだと告げた。



◇◇◇旧世界管理局遺物管理課捜査官日誌◇◇◇

63410432 1300 ユレス・フォル・エイレ捜査官、捜査官席に待機開始。

63410432 1700 特段の変事なし。ユレス・フォル・エイレ捜査官勤務終了。



 本日の日誌を登録し、いつも通りの退出手順をこなしたが、受付館が渋滞していた。

 職員の勤務時間はある程度ずらして設定してあるが、本日の勤務終了時間はあえて合わせてあるから仕方ない。


 転送装置には詰め込めるだけ人を詰め込んで転送を繰り返しているが、しばらくかかるだろう。

 巻き込まれたくないので、この状況が落ち着くまで休憩室にいようとしたら、がっちりと首に手を回されて捕まった。ローゼスではなく姉御だった。


「どこに行こうとしてるのさ、ユレス。猫であっても数の足しになるから、強制参加だと言っておいただろ!」


「一人くらい、いなくても問題ないはずだ」


「にゃーにゃー騒ぐと女装させるよ!」


 耳元で声を落して脅しをかけて来た。だが、甘いな。オレも声を潜めて応戦した。


「姉御、不審者の件があるから、局長の許可が下りないぞ」


「っち、いらんことしてくれたよね、あの不審者」


 オレの女装映像は局長預かりの秘匿物品となり、オレが女装した件も口外しないよう馬鹿どもに念押しされた。

 女装していたことがばれたら、オレが特級危険物の<天使>系遺物を持っていた不審者に狙われるかもしれないわけなので、裏切る馬鹿はいないと信じている。


 窓を蹴破って逃走した仮面の不審者は、捕縛できなかったし追いきれなかったので、<天使の歌声>を取り返しに来るのを警戒する必要がある。

 幸いにもオレは変装した姿だったので、いつも通りの姿でいれば気づかれないはずだ。


 姉御によれば、仮面の不審者は姉御でもぎりぎりなくらいの実力だそうなので、オレなど相手になるわけがない。

 局長は苦渋の顔でオレが女装して現場にいた件の隠蔽工作に走ったが、オレの女装映像を封印することに対して苦渋の顔をしたわけでないと信じている。


 姉御については、仮面の不審者と直接やりあってるし、紫色のバトルドレスで大暴れして映画撮影と誤魔化したので、隠蔽できるわけがない。

 むしろ大々的に宣伝したようなものだが、姉御はまた極上品を持って来てくれるかもしれないと、不審者を待ちかまえているくらいのやる気である。


 我が身は大切にしてほしい。大好物を前にして暴走する姉御を止めねばならないオレたちのためにも。



 姉御に構われている間に作業効率が上がったのか、思ったより早く転送装置に押し込まれて、転移した先は<菩提樹>だ。


 本日は、大祭終わった後で一度は宴会をすることにしている旧世界管理局的暗黙の了解と、大捕り物に参加した組のお疲れ様会と、色々と誤魔化すための映画製作用に大宴会映像を撮影するために、まとめて全部片づけるための大宴会が開催される。


 警備局が旧世界管理局と慣れ合うのもまずいかもしれないが、防犯対策のための映画を合同で作るという大義名分があるので、警備局も大宴会に参加することになった。

 そんなに多くは参加しないだろうと思っていたが、思っていた以上に多くの警備局職員が参加しているようだ。警備局職員は体格が違うから結構分かりやすい。見慣れた旧世界管理局の警備担当も混じっているが、ほとんどが知らない顔だ。


 <菩提樹>の給仕たちは忙しく働いているが、料理や酒類を運ぶ人手が明らかに足りていない。勝手知ったる旧世界管理局職員は手伝ったほうがいいだろうと、オレは厨房に回った。カクテルを作るくらいはできる。

 なかなか好評のようで、さっきと同じカクテル40とか無茶な要求に応え続けていたが、ようやく落ち着いたと思ったら、また誰か注文に来た。だが、今は酒類の補充中で手が離せないので声だけかけておいた。


「そこに見本があるから、どれがいくつ欲しいか言ってくれ」


「……あんた、いつから、ここのカクテル担当になったのよ」


 聞き慣れた声だと思ったら、ローゼスだった。


「本日<菩提樹>に入った時からでございます、お客様」


「あら、デルシーの予行練習してるわけ?そういや、デルシーのカクテルカウンターにも入ってたわよね。じゃ、これ3つとこっち4つよろしく」


「かしこまりました。オレはデルシー行きは休暇ではなくて、職務だと思うんだが」


「あんたはそうかもねぇ。明日からだっけ?」


「そうだ。ローゼスは、ご案内当番は雨の森だったか?」


「そうよ、まだ先だけど。あ、でも、アタシ、ユレスがいる間にデルシーに行くと思うわ。ロージーに付き添ってあっち方面に行かないといけないのよ。そっちの用事がめんどくさいから、職務でなく休暇で行きたいわ」


「お客様、デルシーは宿泊権利をお持ちのお客様が事前に予約いただかなければ、お部屋をご用意できません。腕輪から確認できるデルシー総合情報に各種情報が公開されておりますので、そちらをご確認ください」


 デルシーに行きたいという人は結構いるのだが、宿泊権利のない客は利用できない。旧世界管理局職員の場合、宿泊権利がなくても、勤務に就くのであれば支配人が部屋を用意してくれるので、ローゼスは休暇とか言わずに働け。

 そういう気持ちをこめて、支配人に叩きこまれた一礼をしてやったら、にやりと笑って流された。 


「見事な口上よ、あんたいっそデルシー専属でやっていけるわよ」


「あそこの支配人に何度か誘われてるが、捜査官を常駐させる観光宿泊施設って胡散臭い。旧世界的小説だと確実に事件が起こるだろ」


「それ、フラグって奴じゃないのよ。言ったら事件が起こる的な。ところでユレスったら、映画撮影に参加しなかったわね?姉御が探していたわよ。逃げたかって。幸いにもここの給仕の人がいます、働いていますって証言してくれたけど、ここにいたとは」


「カクテル40とか30とかいう注文を捌いていたオレは、かなり貢献した自信があるが?」


「確かに。じゃ、アタシも姉御に証言してあげるわ。あんたはカクテル提供で出演していたって。その40とか30って映画撮影の小物というか飲み物に使ったんだもの。色合いと見た目が綺麗にできてたから、映像的に映えるでしょ。旧世界時計の修理といい、ときどき細かい芸を見せて来るわね」


「役に立つならいいだろ」


 旧世界的に言えば、芸は身を助けると言う。だが、そもそも助けが必要な状況にならない方がいいと思うのだが。


ここまで読んでくれてありがとうございました。

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