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遺物管理局捜査官日誌  作者: 黒ノ寝子
第三章 天使と黒猫
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16 仮面の不審者


 突然扉が開いて見知らぬ誰か、というか仮面をつけた明らかに不審者な男が入ってきた。

 仮面は年代物に見えるが装飾品と言うより顔を隠す目的で作られた実用品のようなので、遺物展示交換会の関係者ではなく、何らかの不穏な思惑がある不審な侵入者と考える方が妥当だろう。


 オレはまったく反応できなかったが、アレクは即座にオレを背後に回していたのはさすがだ。


『邪魔をして悪いけど、い』


「邪魔ですので、出直してください」


 ……いや、それ、警備局としていいのか?今は表向きは職務外の個人活動中ではあるが、裏事情的には任務中なんだが。

 オレが混乱したことを考えている最中、不審者の方も予想外の回答にうろたえたようだった。


『で、出直す?』


「はい、大変邪魔ですので」


『それは……そうか、邪魔か。確かにそうだな、見れば分かる。いや、だがな、警備局の英雄さん、この俺を見て、出直せでいいのかい?』


 うん。仮面の不審者という見るからに怪しい相手は、せめて不審尋問するべきだとオレも思うのだが、アレク捜査官は断固とした口調で言った。


「心底邪魔ですので、出直す必要もありませんが」


『……そうもいかないので、話を進めさせて貰う、すぐに終わるさ。ここにあった猿はどこだ?答えろ、猿はどこだ?』


 仮面で人工的に声を変えているせいか、妙に作り物っぽい声でしつこく繰り返すように言われたが、オレではなく相棒のワトスンが反応していたことに遅れて気づいて、アレクの手を咄嗟に掴んだ。


「?どうしましたか?」


『猿型の人形はどこにある?』


 無駄だ、不審者。それから、油断が過ぎるぞ!


 オレたちが思い通りにならない方に気を取られて警戒がおろそかになるから、姉御に不意打ち喰らって吹っ飛ぶことになるんだ。


 その後は急展開過ぎて思考が追いつかなかったが、気づいたらアレクに抱えられて不審者から一番遠い位置にいたし、オレたちを不審者から庇うように紫色のバトルドレスが翻っていた。

 姉御が、軽く放り投げるようにして何かを投げ渡して来た。


「それ、お願いね!」


 特級危険物を投げ渡すな!と言いたいが、今はそれどころではない。


 仮面の不審者が、先ほどまでのどこか軽い調子を捨てて、真剣というより凄みのある殺気を出してこちらに向かって来たが、姉御の蹴りで牽制されたし、オレを背後に庇ったままアレクが武装を展開していた。


『っく、仕方ない。お嬢さん、それはしばらく預けておく』


 不審者のくせに引き際が見事だな。

 即座に窓を蹴破って逃走に移ったが、そういうことをすると当然警備装置が鳴るし、警備局職員が集合してくる。


 わざわざ逃走しづらくするとか被虐趣味か?


 姉御が追うかもと思ったが、長い付き合いなので追わないとも分かっていた。姉御は窓の残骸を見て少し顔をしかめてからオレの方に来たが、獲物を狙う目が怖すぎるので、預かったものを渡した。


「姉御、ワトスンが簡易ロック済みだが、早急に最深部に持って行ってくれ」


「分かってるよ。でもそれまでの間はあたしがしっかり可愛がってあげる。あー、これ、ぞくぞくするよね。このぴりぴり来る感じがたまらなーい」


 この変態め!


 誰か早く引き取りに来い!というオレの通信文を受け取ったのか、警備局から通報があったのか、すぐにローゼスが駈け込んで来たし、別方向からは遺物管理課長も走ってきた。


「や、やだ、良かった、助かったわ!!アタシもうどうしたらいいのかと、明日の、いえ、今夜の時事情報放送に流れちゃう大騒動の映像がありありと見えたもの。さ、姉御、大人しく一緒に来てもらうわよ!それで、ユレス、これってあれよね?あれ」


「あれだ。ワトスンが簡易ロックかけたし、効果発揮する前にすべて消去した、そっちの被害は?」


「姉御が単独で追ったから大丈夫よ。駄目なのは姉御の性癖だけど、それはもうどうしようもないし。あ。局長から封印箱持ってきたって連絡あったから、後はこっちで引き取るわね。悪いけど、アレク捜査官に説明よろしく」


「了解」


 とにかく説明している余裕が無いので、このまま姉御たちは行かせてくれないかと説得しようとしたら、頷いてどうぞと言うように通してくれて助かる。


 オレのことは確保したままなので、オレから事情聴取すればいいと割り切ってくれたのだろう。課長とローゼスが姉御を両脇から捕獲して連れて行くのを見送ってから、オレを捕獲している腕を叩いた。


「説明するから」


「はい。ですが、まずは移動しましょう。あの不審者は会場警備を突破して会場外に逃げのびたようです。いつ戻ってくるか分かりませんし、ふざけた仮面を被っている割には相当できます。なので……暴れないでくださいね?」


 アレク捜査官がオレを抱えあげて走り出したが、さすが特務課の班長をしていただけあって、すごい身体能力だな。


 会場のどこかから地下に入ったのか、何かの通路を抜けたのか、訳が分からないまま転送装置の部屋に入ったと思ったら、ジェフ博士の屋敷の見慣れた転送装置の部屋にいた。


「……会場から人がいなくなるのを待つより、今の経路を通って帰ればよかっただけでは?」


「緊急時にのみ使用許可が下りる通路ですので、あの時点では無理でした。襲撃されたことを局長に報告したら、即座に許可いただけたのでお連れできたわけです。あの、暴れないでください」


「なら、降ろせ。オレに合わせて走っていられないのは分かるが、目的地着いただろ」


「そうですね。ただ、まだ説明していただいていませんので」


「事情聴取するまで相手を確保し続けるのは立派な捜査官精神だと思うが、もう少し柔軟になってくれ。そこの応接室で話す。博士たちには、屋敷に到着したが仕事の話が終わってから行くと連絡してくれ。オレは説明する前に旧世界管理局の連中からの情報をまとめたい」


「わかりました」


 応接室のソファに降ろされたが、見張っているのか、オレのことをじっと見ているので落ち着かない。

 ついでに胸元でも、もぞもぞし始めたのでなおさら落ち着かない。とうとう胸元の詰め物にされていた監視猫が這い上がってきて、服の首元から顔を出してにゃあと鳴いた。


ここまで読んでくれてありがとうございました。

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