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遺物管理局捜査官日誌  作者: 黒ノ寝子
第三章 天使と黒猫
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15 時間稼ぎ


 警備局長の時間稼ぎという発言に対して、アレク捜査官がどうしても言わずにいられないという顔で突っ込んだ。


「そこは素直に私たちの番号のみを指定してくれれば良かったと思います。おかげで無駄に目立って、時間を費やすことになりました。ヘンリーに無様な姿を晒させることが目的ですか?」


「違うよ。単にあたしがこの会場に急行して、ヘンリーを捕まえるための執行命令出すまでの時間稼ぎのつもりだったさ。この場で直接捕まえないと逃がしかねないからね。

 でもあんたたち、本当にいい仕事したね。揉めて時間稼ぎしてくれるだけでよかったのに、真っ向勝負とは。おかげでヘンリーのみっともない姿も拝めたし、英雄様はかっこよく圧勝決めたじゃないのさ。一つだけ言いたいことがあるとすりゃ、黒猫、あの場面はキスしてやるとこだよ」


 ばばあに言いたいことがあったはずのアレク捜査官が、ばばあの発言にそのとおりと強く頷いたので、言いたいことは流したらしい。

 そういう態度でいると、ばばあにいいようにこき使われるぞ。


「オレなりにアレク捜査官がいらん誤解受けないように配慮したつもりだった。そんなことより、ヘンリーは?」


「捕縛済み。大猿との交換用に出品していた小箱も確保したよ、脅迫の証拠としてね。大猿を確保して、発明家の証言もあれば、とうとうヘンリーをぶちこめる。

 ヘンリーもお気の毒だねぇ。まさか、大猿を要望するような奇特な人がいたばかりか、それが警備局の英雄様とはね。警備局に持っていかれたらあたしが出て来るし、そうなりゃ色々調べられて終わりだから、なりふり構わず大猿を確保するしかないって頑張ったのに、最後は追い討ちまでかけられて。

 それで、黒猫はどこまで読んでたんだい?アレクが大猿に取引要望を出したとは思えないし、あんたが要求したんだろ」


「単に保険をかけただけだ。正当な取引を装って水面下で禁制品の取引でもするなら、中に何か仕込めるものとか、中が見えない箱は使いやすいと誰でも思うだろ?

 だから会場の出品物を見て回るときに注意していたが、疑うときりがないのは分かったし、取りあえずはパリラが作ったものだし、事件に一番関わっていそうな大猿に取引要望出しておいて、様子見しておくかと思ったくらいだ。

 そうしておけば、競うことになった場合は参加できるだろ。別の誰かとの間に優先取引が成立した場合でも、取引要望出しておけばそれが通知されるから、支援班に連絡して調査してもらえばいい。

 オレたちが大猿を入手したら、警備局に押し付けてお任せすればいいだけだから、何にせよ取引要望を出しておいて損はない」


「ありがとね、黒猫。じゃあ、遠慮なく大猿は貰っていくよ。さっきの設定通り、あたしにくれるつもりで大猿を確保したってことで、あたしは欲しかったものを貰いに来て喜んで持って行ったってことでいいね」


「はい。局長への贈り物として入手したことも記載した受け渡し証を作りましたので、誰かが難癖付けて来た場合はそちらをどうぞ」


「治療局長もあたしが引き取っていくよ。何ならヘンリーの尋問に立ち会わせてもいいさ。面白い反応してくれそうな気もするし。それで、アレクは緊急任務だよ。発明家の家の捜索に行きな。パリラのとこにあった設計図を読み込んでいたし、猿の中身の動作機構も分かるだろ?」


「分かりますが、ユレスをジェフ博士の家に送り届ける時間はいただきます。潜入捜査ですので、最後まで設定を守った方がいいですし、ここに一人で置いて行くわけにはいかないでしょう」


「っち、融通の効かない男だね。確かに黒猫が一人でうろついてるのはまずいか。何故って顔するんじゃないよ、今の設定思い出しな。ジェフから高評価の遺物をぽんと渡された子だよ?アレクがいなかったら、様々な思惑持った連中が、大量に沸いてくるに決まってるだろ。あと時事情報放送の連中が、小さなレディに何か一言言わせようと待ち構えてると思うよ」


「めんどくさいな」


「証拠確認してヘンリーをここで尋問しちまうつもりだから、この周辺からはすでに人払い済みだけど、会場の出入り口付近に行ったらまだ人がたくさんいるよ。あたしは取りあえず大猿と治療局長持ってヘンリーのとこに行くから、アレクは頃合い見計らって連れて行きな」


「了解」



 バトルドレスをばさばさ翻して、大猿を肩に担ぎ、ついでに治療局長を引き摺って、ベルタ警備局長が去って行った。

 何故だろう、すごい光景なんだが、ああいうのが似合う人は似合うんだな。


「ベルタ局長には大猿がお似合いだと思いますよ」


「オレもそう思ってお見送りしていたところだが、それ言うと怒られそうな気もするんだが」


「ご本人には言わないでくださいね。ところでジェフ博士の家にあなたを送って行った後は緊急任務となりますので、今、お話したいことがあるのですが」


 説教でも始まりそうな空気になった。ちょうど腕輪に通信文が届いたので助けの手かと思ったら、助けてくれの方だった。


「悪い、少し待ってくれ。旧世界管理局から問い合わせが来たんだが、姉御が、いや、クレア捜査官がセクサロイド型を追って行方不明らしい。遺物展示交換会の会場方面に走って行ったのが最後の目撃証言だ。ここの警備担当に目撃情報とか聞けるか?紫色のバトルドレス姿らしいが」


「それだけ目立つなら情報が回っていると思います。……取りあえず目撃情報は無いです。見かけ次第連絡くれるよう依頼しました。ああ、局長からも連絡が回っていて、クレア捜査官というか紫のバトルドレスを見たら支援するよう通達されているようです。ですが、行方不明とは……心配ですか?」


「アレク捜査官が思っているのと真逆の方向性で。大好物の獲物を前にした危険なハンターの首輪は、誰かが持っていないと、旧世界遺跡でならともかく平和な街中では大事件か大騒動しか想定できない。だからオレにまで緊急連絡が回ってきたんだ。見つからないようなら、オレは旧世界管理局の捜査官としての姉御を捜索しに行かないといけないから、ここで潜入捜査を終了させて貰うことになる」


「……分かりました。ですが、この会場の警備担当から何らかの情報が得られるかもしれませんので、しばらくここで待機したほうがいいと思います。ところで、祝花祭がそろそろ終わりますが、あなたもこれから長期休暇でしたね?」


 休暇の話をしたかったのか?

 情報を待っている間、雑談で気を紛らわせようと配慮したのかもしれないが、説教されるよりいいので、休暇の話をすることにした。


「そうだ。五日後からの予定だが、休暇のようでいて職務に近い。旧世界管理局に遺跡観光課があるのを知ってるか?」


「はい、旧世界遺跡のうち安全性が確認されていて観光向きなものが公開されていますが、観光する際には旧世界管理局職員の案内が必要でしたね」


「安全確保する上での最低要件なんだ。旧世界管理局職員であればいいので、休暇の宿泊施設提供という名目で案内人当番も回って来る。そんなわけで、オレはデルシー海洋遺跡行きが決定だ」


「ジェフ博士からお聞きしました。海の中が見える美しい遺跡だそうですね、それで」


 話の途中で前触れもなく、突然扉が開いた。


ここまで読んでくれてありがとうございました。

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