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遺物管理局捜査官日誌  作者: 黒ノ寝子
第三章 天使と黒猫
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11 取り合われるもの


 全く盛り上がらないイベントとなったが、最後がいい感じに終わったので、主催者も笑顔で仕切って、オレたちを別室にご案内した。

 いや、これ以上の騒ぎの原因とならないように隔離したと言う方が正解かもしれない。


 大猿をここに運ぶので少し待つように言われて二人で残されたので、この隙に打ち合わせした方がいいか。


 アレク捜査官もそう考えたのかオレを座らせて……何故この態勢?囲い込むように椅子の肘に手を置いて上から覗き込んで来たが、尋問するつもりか、それとも逃走防止のためか?


 オレが今回はまったくと言っていいほど役に立たなかった自覚もあるし、よりにもよって大猿を競わせることになって悪かったとは思っているのだが、尋問されても言えないこともあるのだが。

 オレがどうするかを悩んで大人しいからか、アレク捜査官は少しだけ表情は和らげて言った。


「色々とお話ししたいのですが、その前に、ひとつだけいいですか?」


「なんだ?」


「ああいう場合は、キスの一つくらい、いただけるものです」


 何の話か一瞬分からなかったが、さきほどの会場での対応が駄目だったと言われているのは理解した。


「……もしかして、不審だったか?」


「会場警備の報告では、初々しいと好評らしいですよ?ただ、私が完全にお守役にしか見えなかったようですので、残念です」


 お守役に見えるのが不満だったのか?会場ではオレのことを容赦なく盾に使おうとしていたが、もしや……。


「まさかと思いたいが、この任務が終わった後もオレというか、小さなレディとやらを盾に使えるように、わざと派手にやったな?」


「任務の都合上その方が良かったのもありますが、周囲にそう認識していただけるよう振る舞っていましたので否定はしません。それに」


 アレクが圧力を感じる微笑みで迫ってきたが、止まって扉の方を見た。

 うん、さすが警備局職員は警戒心を忘れていないな。乱暴にノックされて、返事してもいないのに勝手に扉を開けて治療局長が入ってきた。


「頼むから、話を聞いてくれ。あの大猿を私に……」


 そう言えば、まだこの態勢だった。傍から見ればアレクが少女を襲っている光景にでも見えそうだな。

 治療局長が絶句したところで、アレクが冷たく言った。


「申し訳ありませんが、話は後にしていただけますか?」


 いや、後にしたら駄目だろ。


 オレの不手際もあるとはいえ、アレクの雰囲気が怖かったから、治療局長の乱入は助かったので追い払いたくはない。

 アレクは容赦なく追い払おうとしたが、幸いにも大猿が運ばれて来たので色々うやむやになった。


 そして、大猿を前にして、治療局長と取引交渉することになった。


 大猿が大人気である。製作者である人形師のパリラですら、この作品がこうも熱烈に求められるとは思わなかったのではないだろうか。

 だが、残念なことに、作品を評価してではない気配が濃厚だが。


 アレクのある意味勇敢で意義ある勝利の直後に、大猿を譲れと言えるのもなかなかすごいが、治療局長は大猿を欲しい理由も言わない上に、これは世界全体のためだから、警備局職員として気を利かせて差し出せと言いたいらしい。

 治療局長はオレ以上に、取引交渉とか苦手なのかもしれないな。


 アレクは、本日は警備局の職務外で個人として参加しているのに、職務のことを持ち出すのはどうかと言っているが、表向きはそうなってるが、オレたちも任務だろと突っ込みたくなる。

 警備局長だったらまだるっこしいと切れそうなやりとりだと思いつつ見守っていたら、噂をすればなのか、ノックもせずに扉を開け放ってやってきた。


 ベルタ警備局長が、深い緑と真紅という実に攻撃的で際どいバトルドレスでご登場だ。


「邪魔するよ!その猿、あたしに寄越しな。警備局長権限で拒否権なしだよ!」


 実に単純明快に強権使ってきたが、治療局長のように遠回しに言われるより清々しい。

 それから、証拠品として確保できたら警備局に渡すつもりだったので、ばばあが寄越せと言うなら構わない。オレが頷いたのを見て、アレクが応じた。


「分かりました、差し上げます」


「な、なんだと!?先ほどまで、そこの、えーと、名前は知らぬがその少女のために入手したものだからと、あれほど言っていたというのに!いくら直属の上司だからと言って、それは!」


「私は、こちらの小さなレディのお望みのままにするだけです。私たちは、贈物を探して遺物展示交換会に参加していたんです。猛獣型の人形は姉のために入手したものですが、もう屋敷に届いていて姉からとても気に入ったという連絡がありました。それで、この大猿は小さなレディが警備局長のために選んだものですから」


 え、そういう設定で行くのか?


 だが、大猿の近くに立っているバトルドレスのど迫力美女は何故か違和感が無いというか、アレクが言うところの似合うという表現がしっくりくる感じだ。

 贈物にいいのかどうかはともかくとして、鋼の女のために選んだと言われれば、納得できなくも、うん、納得させるつもりなのは分かったので、ただ頷くことにした。


 大猿を見て微妙な顔していた警備局長も、即座に割り切って乗ってきた。


「なんだ、そのつもりだったのかい?だったら局長権限なんて無粋なことは言わないよ。悪かったね、どうしても欲しくてさ。ジェフにお使いして来いって言われたんだね?」


 ベルタ局長用のものではないが、お使いはしてくるよう言われたので頷いておいた。


「な、待ってくれ。何故、ジェフ博士が、それにベルタ警備局長は何故その子と」


「察しの悪い男だね。あたしとジェフが昔馴染みだってことくらい常識だろ。ジェフのとこで、この子とも会うわけ。ジェフがようやく嫁をお披露目したし、最近も会ったよ。それで、この子も社会勉強させないとなって言ってたから、うちの若い男を貸してやるから出かけさせたらいいと言っておいたんだよ。妻の弟だから自分で頼むと却下されたけど、同じことだろうに」


「そ、そうだったか。なるほど、ジェフ博士とベルタ局長から頼まれていては、つききりになってもおかしくは無かったか」


 いや、潜入捜査だからだ。


 治療局長は相手を警備局長に切り替えて、局長同士で話をしたいと誘ったが、鋼の女に挑むのは勇者すぎる。

 鼻先で笑い飛ばされて、部屋から追い出された


「お黙り。あんたは今は治療局長でなく単なる個人としてここに来てるんだろ。あたしは現在緊急任務として、警備局長として来ているんだ。個人活動楽しんでたのに急遽呼び出されて苛ついてるってのに、ぐだぐだ言うんじゃないよ。

 局長として話したいなら正式に予定取って警備局長室に来な!そこを押してってなら、あたしの用件が終わるまで扉の外で待っていることだね!アレク、あんたにも緊急任務だよ」


ここまで読んでくれてありがとうございました。

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