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遺物管理局捜査官日誌  作者: 黒ノ寝子
第三章 天使と黒猫
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8 花姫


 アレク捜査官も情報交換するつもりだったようで、警備局製防音装置を作動させたが、腕輪に多くの報告が届いているのか忙しそうなので、オレから話すことにした。


「取りあえず、博士とアリアのお使い任務は完了したが、肝心のセクサロイド型人工物は会場内にはないようだ。取引するにしても、人型人工物をこの会場内に持ち込む危険は冒さないつもりかもな。旧世界管理局から連絡があったが、会場の外では、オレの女装姿を笑いに来た奴らが人型人工物の存在を感知して追跡している。

 クレア捜査官が極上品の存在を感知したようだが、大好物相手に大騒ぎしかねないので、周辺に散っていた旧世界管理局職員に総動員かけてどうにかするらしい。事件はこの会場では無く会場外で起こっていそうだ」


「警備局長からも速報がきましたが、旧世界管理局長と話はついていて、連携して合同捜査をすることにしたそうです。今後の関係改善も見込める良い機会とのご判断で、会場の外は外で何とかするので、私たちは会場内に専念するようにとのことでした」


「了解。どっちに何を仕掛けているか詳細不明だからな。そう言えば、ヘンリーは?」


 大好物のセクサロイド型人工物を求める姉御が襲い掛かっていないといいのだが。姉御が本能なのか女の直感で嗅ぎつけて突撃しそうなのが怖いが、幸いにもヘンリーは無事だった。


「宝飾品の遺物を出品して、娘を連れて会場入りしました。ティアラを娘のために入手するつもりだと声高に話していたようですが、別の狙いもありそうです。小鳥の宝飾品のところに行く前に私が話しかけられていた人たちを覚えていますか?」


「おそらく治療局長だと思うが、物知らずな小娘は気づいていないことにしていた」


「物知らずというよりは、気になるものがあるのに、そちらに行けない少女という風情でとても良かったと思います。治療局長は大事な末娘がヘンリーに迫られていて気が気ではなかったのでしょうが、私にどうしても娘を紹介したいとしつこかったので、手を引いて貰って助かりました」


 そう言えば、ヘンリーが150回目の結婚相手に、治療局長の娘のヒミコを狙ってるとか言っていたか。


「ヘンリーと結婚させるより、英雄と結婚させたい親心は分かるが、唐突過ぎないか?本人意志とかどうなんだ」


「……あなたは恐ろしく鋭く何もかも見通すときと、全然わかっていないときの差が激しいですね。ヨーカーン大劇場占拠事件のときは敵か味方か人質かでしか区別していなかったようですが、その後の情報も興味が無かったんですね?

 ヒミコ・ハナ・サクラもあの占拠事件の人質の一人です。そして花王役は逃がしましたが、今回から導入された花姫の一人に選ばれました。祝花祭を盛り上げるために、花姫たちは各イベント会場で華やかに着飾って協力しています。遺物展示交換会では、世界管理機構が出品した遺物のティアラをヒミコがつけて、天使人形を抱いて、会場を一周してあいさつ回りすることになっています」


「なるほど、ヒミコがこのイベントに花姫として参加するから、ヘンリーもそれを見に来るのか?治療局長としては、娘を150人目の嫁に狙っているハーレム王より、娘の恩人でもある頼りになる英雄に託したい気分になるのは分かる。

 だが、うがった見方をすれば、何か企みがあったり、こっそり裏取引をするなら、会場中の注意が花姫に向いている隙を狙う方が賢い。その花姫のイベントはいつやるんだ?」


「今頃花姫が会場を回っているはずですよ。警備局長もことを起こすならこのときだろうと、会場警備を増員して監視体制を強化しています」


「鋼の女が手配しているなら、オレがいらん心配する必要はなかったか。オレが盾として役に立っていない自覚はあるが、アレクは自由行動しづらいことくらい、ばばあは分かっていたよな?今さらだが、オレたちの存在意義があまりない気がしてきた」


 潜入捜査だと警戒されない人選であるのは確かだが、思っていた以上にアレクが大人気なので、会場内を歩き回って人型人工物の探知をする以上のことはできない気がする。

 もしかして、密かに別任務もあるのかと思ったが、そうでもないらしい。

 

「私たちの役回りは、どちらかと言えば陽動攪乱です。どうあっても目立ってしまうのでしたら、あちこち歩き回って私たちに注意を引き付けておけば、その分、会場警備担当の警備局職員が動き回りやすくなります。

 ただ、会場警備担当は取引に参加できませんので、不正取引や禁制品の取引を察知して介入するのは、私の仕事になります。花姫のイベントが終わったら取引交渉が活発になりますので、ヒミコのあいさつ回りが終わる頃合いで会場に戻りましょう」


「オレたちはもう二件取引を終えてしまったが、まずかったか?」


「警備局長からはいい仕事したとお褒めの言葉が来ました。そろそろ入場締め切り時刻、つまり、出品が締め切られる時刻です。早めに出品物を取引してしまった場合、欲しい品が締め切り間際で出品されると取引交渉できなくなってしまうので、それまでの時間は品を見て回って、様子見するのが通常の流れです。

 ヘンリーが来たのも、締め切りぎりぎりです。娘のためにティアラをと声高に言う以上、確実に入手するつもりで来ていますし、そのために、先に会場で展示されている品々の情報を集めて、勝てるだけの品を出品する作戦だったのでしょう。同じことを考える方はそれなりにいますし、受付の段階である程度の展開は読めるようですが、支援班の報告によれば今回は全く読めないそうです」


 そう言ってアレクがオレに微笑んだが、さすがに理解した。


「説明されるまで全然わかっていなかったオレのせいか?」


「攪乱任務は完璧にこなしています。これは博士の責任もありますね。無造作に渡してくれたので私も価値を見誤っていましたが、最後に残した宝飾品の旧世界時計、あれだけで、ティアラと天使人形を両方合わせて釣り合うくらいの価値と見込まれています」


「……あれって、オレと博士で壊れていた旧世界時計をつぎはぎしまくって、適当に修理しただけのものなんだが。ああでもそうか、旧世界時計は動いているだけで価値が跳ね上がるし、傷や破損部分を誤魔化すために他の遺物の装飾部分を上手くはめ込んだから見栄えは良くなったと思う。すべて遺物製なのは間違いないが、完璧な状態で発見されたそのままの遺物ではない。そういう来歴も明かした方が良かったか?」


「そういう情報も登録遺物情報として開示されていますよ。だから正当に評価されていますし、ジェフ博士が修理したという付加価値も加算されます。一流の研究者がそれだけの手間をかけた価値あるものと判断されますので」


「価値の評価は人それぞれだから、納得されているのであればそれでいいが。オレも博士も場を荒らす気はないから、ティアラに取引要望出さなければ問題ないと思う」


「はい。ただ、迷惑な期待をされていることは説明しておきます。治療局長は遠回しに言っていましたが、私が出品した遺物でティアラを得てヒミコに渡して求婚して欲しいというのが、あの方の勝手な願いです。そうすれば、娘のヒミコを狙うヘンリーを追い払える上に、ヒミコの結婚相手も決まると」


「アレクがそうしたいなら構わないが、本人同意が無いなら人権問題だな」


「私に同意させようとしていたのがあの場での話ですが、私はヒミコに興味も無いし、あなたのお相手に専念したい態度でいました。黒猫さんは小鳥さんが気になって、全然聞いていなかったようですが」


「悪かった。オレは黙っているくらいしか役に立たないから、せめて博士のお使い任務くらいは果たすつもりだったんだ。それにしても想像以上にめんどくさいな、このイベントって。駆け引きが好きなら盛り上がるんだろうが、オレには向いてないから任せた」


「任されました。では、引き続き会場を見て回りましょう。ティアラを取引するつもりはありませんが、さすがにあの大猿はどうかと思うので、別の出品物を選んで欲しいです」


「妙に嫌がるな?警備局としては確保した方がいい品だと思うが」


「設定を思い出してください。私たちはジェフ博士の厚意で遺物展示交換会を見物して回って、欲しいものがあったら交換してくるようにと送り出されています。事件の証拠品を確保するためにジェフ博士が遺物をくださったわけではありません」


「他に何も無かったら別に大猿でもいいだろ。猛獣型人形を取引済みだし、大猿を取引しても、そういう動物型人形が好きなのだろうと納得されるんじゃないのか?オレが欲しがったことにすればいい」


「やめてください。それくらいなら、私があれを入手したい理由をこじつけたほうがましです。いいですか、あなたに大猿は駄目です」


 何故大猿は駄目なんだと聞く前に、ヒミコのあいさつ回りがそろそろ終わるから任務に戻ると手を引かれて休憩所を連れ出された。


ここまで読んでくれてありがとうございました。

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