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遺物管理局捜査官日誌  作者: 黒ノ寝子
第三章 天使と黒猫
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5 潜入捜査開始


 翌朝、大変複雑な気分のまま、アリアに女装させて貰って任務に赴いたが、会場に着いたところで愕然とした。


 なんなんだこれは。暇なのか、馬鹿なのか。


 見知った顔があちこちにいたが、潜入捜査が始まる前に任務失敗の予感しかしない。

 遺物の鑑定依頼をするふりして、遺物展示交換会の受付にいた課長に文句つけたら、会場には入らないように通達したし、ごく自然な通行人をしてるだけだとか言われたが、どこが自然だ。


 つまりあれか、オレの女装姿を見て笑いに来たわけか。


 だが残念だったな、オレのというか、マリア・ディーバの技術力を甘く見るな。元がオレと分からない見事な仕上がりになっているし、オレも、これは女装では無く変装と割り切ることにしたくらいだ。

 どこから覗いているのか分からないが、ローゼスから猫どこよという通信文が届いたので、胸とだけ返信しておいた。


 あまり腕輪を触っているとばれるとでも思ったのか、アレクが手を差し出してきたので素直にエスコートされて会場に入った。



 遺物展示交換会のシステムは受付でも説明されたが、まずは受付で出品登録をして、遺物の場合は鑑定されたのちに出品番号が設定される。

 出品登録された品はその出品番号と共に展示され、その品を見て自分が出品したものと交換したいと思った場合は、その品の出品番号に自分の展示した品の出品番号を送信する。相手がその品を見て興味を持ったら、交渉して取引する流れだ。


 会場内は結構賑わっているし、遺物のティアラと天使人形のところには多くの人がいそうなので、そちらは避けてまずは博士のお使い任務をすることになった。警戒されないためには、その方が自然だろうしな。


 人形師パリラが作った大きい猿型人形があるかもしれないので、それも探すことにしていたが、早速発見した。

 思った以上に大きいし、オレならすっぽり入れる大きさだ。この中にセクサロイドを隠して取引する可能性も想定していたが、猫に反応は無い。


 先を進みつつ、取り決めていた合図で伝えた。


「疲れていませんか?休憩所もありますので、そちらに行ってもいいですが」


 そこで情報交換をするということは分かったが、もう少し会場の情報が欲しい。なるべく喋るなと言われていたので、首を振っておいた。


 じじいのお使いはともかく、アリアのお使いは果たしたいと思って探していたら、なかなか可愛い猛獣型の人形を見つけたが、アレクは納得いかなかったらしい。

 もう少し可愛い方がと言ったが、姉の趣味ではないということか。出品者がちょうど近くにいたが、それを聞いて出品登録するほどの作品ではないが、取引成立のおまけか、取引に足りなかった分の補填とするために、他の動物型人形を持ち込んでいると見せてくれた。


 これならアリアも納得の可愛さではないだろうか。


 ふわふわした毛並みで、柔らかいし、見た目も可愛い。

 旧世界管理局のデータベースにはぬいぐるみという名称で、こういう類のものが結構登録されているが、ローゼスが乙女心をくすぐる品だと言っていたので、女性は好きなはずだ。


 オレの視線からそれを読み取ったのか、アレクは博士がくれた遺物の出品番号を告げて、気に入ったら取引の連絡をくれるようにと言った。

 出品者は、早速オレたちの出品物を見てくると言って去って行ったが、猛獣型人形も動物型人形もその人の作品だそうで、作品が評価されたことが嬉しそうだったので、オレたちが出品した遺物が多少気に入らなくても取引してくれそうな気がする。


 そろそろ情報交換してもいいかと思って合図したら、アレクが休憩所に連れて行ってくれた。会場の案内図も完璧に覚えているらしい。オレは完全に丸投げである。



 休憩所は、間仕切りで区分されてテーブルと椅子が置かれており、取引交渉もここでできるようになっている。

 アレクが警備局の防音装置を腕輪から出して起動したので、機密性は問題ない。別のことが気になったので確認しておくことにした。


「警備局だと腕輪の空間拡張機能の拡大申請が通るよな?武装も持ち込んでいるのか?」


「はい。ヨーカーン大劇場の時に使用した護身用のものではなく、特務課で使っている強行突入用を持ち込んでいます。捜査に必要となりそうな品も一通り揃えてありますので、あなたが何も持っていなくても対応可能ですよ。旧世界管理局の受付館でお話した後、そのまま同行していただいたので、準備する余裕がありませんでしたしね」


「それは助かるが、準備したとしても、会場に持ち込めなかったかもな。捜査用の装置類は運搬ケースにぎっちり詰め込んでもかなりかさばるし、この格好のオレが持っていたら違和感甚だしくて怪しまれること間違いなしだ。実はオレの腕輪は、空間拡張機能を使えない。旧世界管理局の職員だと珍しい話でも無いが」


「禁制品の遺物を扱うからですか?ですが、腕輪の空間拡張機能を利用して物品を収納しようとしても、禁制品だと自動的に判定されて警告が鳴り響きますよね?」


 腕輪には各種便利機能が組み込まれていて、空間拡張機能を利用すると一定容量に入るだけの物品を腕輪に収納して持ち運ぶことができる。

 旧世界の人は、カバンというものに身の回りの品を入れて持ち運んでいたようだが、それとほぼ同じ機能だな。だから、今の世界でカバンのようなものを持ち歩いている人はあまりいない。

 

 腕輪に収納できる物品の範疇は結構狭くて、基本的に私物で禁制品や危険物でないものに限定されるし、他の誰かに所有登録されている物品や、禁制品を収納しようとした場合、警告が鳴り響くことになるし、収納もできない。

 収納するときに腕輪の機能を介して、そういうものに該当するかどうかの情報照会が一瞬でなされるし、簡易的な情報解析での判定もされるから、その結果殺傷性の高い物品と判定されると収納できないときもある。

 

 護身用の武装を持ち運びたいときは、事前に警備局に申請して許可を得ることができれば収納可能になるし、ヨーカーン大劇場のときのアレクもそれは持ち込むことができた。

 職務上で必要だと認められると、空間拡張機能を拡大することが可能で、容量が大きくなる。職務上に必要な物品を収納するためであり、職場で申請して許可が下りた品は大体収納できるようだ。


 潜入捜査するにあたって、アレク捜査官がしっかり準備してきていることは疑っていない。

 むしろ、オレは何一つ持っていないことを早めに伝えておいた方がいいと思って話をふったし、相棒の機能のことも説明しておいた方がいい。


「オレに限らず、旧世界管理局の職員の腕輪は特殊仕様なんだ。そもそもが禁制品である旧世界AIが入っているというか、人で言うところの魂にあたるような、AIの情報記録媒体が組み込まれている。だから、旧世界管理局職員は強制的に遺物管理者になるし、腕輪を付けている以上、禁制品を常時持ち歩いているのと同じ状態だ。

 それは空間拡張機能が使えないのと直接的には関係しないが、間接的には関係する。相棒のAIの機能を最大限有効活用するために、AI用の動力源とAIの機能補助用の装置も腕輪に組み込むからだ。AIにはそれぞれ異なる独自の機能があるが、許可が下りたものだけに限定しても、AIの機能補助装置は腕輪の機能も容量も大きく占有してくる。

 オレの腕輪の機能はかなり制限されていると思ってくれるといい。その代り、相棒のAIワトスンの機能が利用できるが」


「局長からは、危険物探知能力に優れていると、セクサロイド型の人型人工物を探すには最適人材でもあるとお聞きしました」


「そうだな。では、報告するが、セクサロイド型人工物はこの会場内には無い。たとえ部品であっても、機能するものであればワトスンは感知するんだが、反応が無いので、この会場内にはまだ持ち込まれていないと考えていいと思う。あの大きい猿型人形、長いから大猿と呼ぶが、あれの中にも入っていない。そう言えば、大猿って、ヘンリーの出品なのか?」

 

 大猿の設計図から想定される見た目の映像を見せてもらっていたが、それとほぼ同じだったし、職人の手で作られたしっかりした仕上がりなので、人形師パリラの作品で間違いないとは思う。

 作りこまれた動物型人形なので、出品条件は満たしているが、可愛いとか綺麗の真逆なので、悪い意味で目立っているというか、会場内の雰囲気に合わなすぎて違和感がすごかった。


 大猿の近くには誰もいなかったが、警備局の潜入捜査支援班が、ヘンリーが会場に来たら報告してくれることになっていたはずだ。

 不審なものを発見した場合も、アレクが警備局の潜入捜査支援班に連絡したら、出品物と出品者情報を調査の上報告してくれることになっている。アレクが大猿を見たとき、腕輪を触っていたので、調査を指示していたのだと思う。


「ヘンリーはまだ来ていません。あの大猿の出品者は、発明家と自称している男で、道具づくりの職人と言ったところでしょうか。ヘンリーとも取引がありますが、ヘンリーに雇われているということでもなさそうです。研究局や治療局だけでなく、各個人とも取引事例があるようですから。

 ですが、パリラとは取引事例がありませんし、両者に接点もありませんので、ヘンリーを介してあの大猿が発明家の元へ渡ったと推定されます。現在、背景事情も含めて調査中です」


ここまで読んでくれてありがとうございました。

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