表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遺物管理局捜査官日誌  作者: 黒ノ寝子
第二章 博士と黒猫
24/373

10 不幸なすれ違い


 ポーラ女史が素直に白状して協力してくれそうなので、一息つくことにした。


「……アレク、二階から証拠品持って来てくれ」


「はい。ですが、記録は」


「そこに局長がいるだろ。雑談して待っているから」


「分かりました」


 追い払おうとした気配を察知されたかもしれない。

 だが、アレクがいると話しづらいからな。扉が閉まったところで言った。


「雑談だから話していいぞ。ポーラ女史、取引だ。相手がアリアだと、ベルタ局長ではない相手だと知っていたら、こんなことはしなかったという態度を貫け。そうしたら女史の最大の秘密は守ってやる。

 じじいとばばあは、オレを働かせた対価だと思ってその点だけは追及するな。犯罪には関係ないし、犯罪に至ったときはオレが開示する。だが、うちの祖父さんでも、恥ずかしいから孫にも絶対言えないし、死ぬまで秘密にすることくらいある。300年生きてればそういうのが無い方がおかしいんじゃないか?突っ込んだら自爆すると思って見逃せ」


「訳分からんが、儂自身も思い当たることは多々あるし、子猫ちゃんには絶対言いたくないから了承した」


「そうだね、あたしもジェフ以上に大量に持ってるけど、あたしが死ぬときは自宅を爆破して消し飛ばす覚悟くらい決めてるし、他人のそういう秘密を掘り返したら、あたしの秘密も暴露されるじゃないのさ。何の得にもならんことはしないよ!」


 ポーラ女史は躊躇ったようだが、一応頷いた。それでいい。


 見計らったかのようにアレクが戻ってきたが、要求したものを持ってきたので、外で立ち聞きしていた余裕は無いはずだ。

 素早く取りに行って素早く戻ってきたようだな。少しくらいアリアと雑談するか声かけてくればいいものを。


 ベルタ局長は自然な感じに出迎えて言った。


「なかなか洒落た箱だけど、結婚祝でも入ってた箱かい?ようやくジェフが嫁を紹介する気になったし、嫁が妊娠してるなら改めて祝賀会やってやろうと思うけど、あんたの姉の好みとかある?ユレスはそういうの全然駄目だからね。あたしが見本みせてやらんとって話さ」


「甘いお酒が好きですね。人によっては寝台に誘っていると強引に解釈してくる人もいるので、言わないようにしているようですが」


「あー、あるね、そういうの。結構前に流行った、寝台では甘いカクテルをって感じのタイトルの遺物映画だったか。アーデルの馬鹿ほどでなくても、何でもかんでも遺物のせいにする性犯罪者が増殖したりもしたさ。あたしに言わせれば、遺物映画の口説き言葉を使うことしかできないから、もてないんだよ!ってことで指導入れまくったよ」


「ベルタ局長名言集なるものが編集されているのを見たことがあるが、口説き文句は皆無だったと思うが。では、再開するので全員口を閉じろ」


 不満そうに睨まれたが、言ったもの勝ちだ。

 アレクが持ってきた箱を開けたら、そちらに警備局長の注意が逸れて助かった。


「不幸なる勘違いの果てに届いたものがこれだが、最後に届いたものにつけられていたメッセージを見るまでは、ジェフ博士宛てなのかそれとも妻宛てなのか分からない文面だ。

 なお、マリア・ディーバの周囲は、300年越えのジェフ博士と結婚したことを知っている人は知っているが、こんなじじいより自分の方がと思う人々もいて、弟以外は心から祝福しているとは言い難い状況らしく、二人を引き裂くためにこういう嫌がらせをされかねないと判断していた。

 ジェフ博士とマリア・ディーバが結婚したことは、妊娠するまでは公表しないことにしていたし、マリア・ディーバの身近な人たちが嫌がらせをしている可能性が高いので、警備局に届けて正式に捜査というのもしづらかった。

 取りあえず警備局の弟に相談したが専門ではないし、秘密を守って配慮できる捜査官を選んで相談するところだったが、ヨーカーン大劇場占拠事件があったり、その後も復古会関係の後始末もあり、今のところ実害のない嫌がらせより優先することは多々あった。

 だが、最後の脅迫文と人形の頭が送られて来た段階で、危険度は一段階上がった。いままでの不幸になれとか、恨みがましい文面と違って、これははっきりと脅迫に該当するし、下手したら殺人予告だ。しかもお前の男と指定している以上、あて先は妻の側、アリアに対してお前の男を殺すぞと言っているようなものだ。

 そういうわけで、ジェフ博士たちは真剣にこの状況に向き合わざるを得ないし、オレも呼ばれた。というのがこちら側の状況だが、これを送りつけて来た側としては全く別物と認識されていたのだと思う」


 ポーラ女史がようやく涙をおさめて、しっかり頷いた。


「まず、不幸な勘違いで、ジェフ博士の嫁はベルタ局長だと思い込んだのが、不幸なすれ違いの始まりだ。ここからはオレの推測を繋げた話になるから、修正したい場合は合図してくれ。

 まず、ポーラ女史がこらえきれずに勘違いした秘密情報を打ち明けた相手は、人形作りの関係者である。おそらくは人の大きさの人形作りに規制がかかったときに、ベルタ局長が大暴れした巻き添えになったか、作品を壊された一人なのでは?」


 ポーラ女史が頷いた。


 箱の中身を見た瞬間にすべてを察したらしいベルタ局長と、オレの説明を聞いた段階で理解したらしいジェフ博士は事前知識があるからいいのだが、驚いた顔をしているアレクのために解説するか。


「唐突に言いだしたように思えるだろうが、この二人もオレもポーラ女史とはそれなりに付き合いがあるし、ポーラ女史の家に招かれたこともある。

 さっき訪問したときは玄関室だけしか見ていないが、居間には友人が作ったという人形作品が多数飾ってあるし、ポーラ女史の趣味は人形用の小さい服を作ることだ。職務は服飾に関わることだったし、今でも小さい子どもの服をデザインしたり製作していると聞いたことがある。

 そういう背景情報があるので、人形の部品が出てきたときに、オレも博士もポーラ女史というか、ポーラ女史の友人の方に注意が行った。それに、ポーラ女史もおそらくその友人も、最後の贈物のときはもはや隠すつもりも無かったのでは?

 散歩していて預かったと言って、ポーラ女史が持ってくるあたり、杜撰もいいところだ。むしろ、気づけ!と主張したい心を強く感じだ」


 ポーラ女史も強く頷いてくれたから、その通りなのだろう。

 だが、気づいて貰いたい相手を勘違いしていたあたりで、居心地悪そうな顔をしている。


「本当は最初の贈物で気づいてもらえるはずだったと思う。勘違いのせいで意味不明な脅迫になってしまったが、ポーラ女史たちが届けたかった相手がベルタ局長だとすれば、警備局長に渡されれば、脅迫では無く恨み言だと即座に理解してくれたはずだ。

 自分はお前に不幸にされたんだ、なのに今さらお前が結婚して幸せになろうだなんて許せないとでも思ったのか。これに関してはオレが勝手に心情を語るものではないから、ポーラ女史が語る気があるなら、頼む」


ここまで読んでくれてありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ