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遺物管理局捜査官日誌  作者: 黒ノ寝子
間章 新人捜査官ミヤリの日記
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本当に自分を救えるのは自分だけよ・2


 確かに旧世界映画を見た後は、精神的にどんよりした気分になりがちなので、お誘いに甘えた。

 リマも空腹だったのか、美味しいお菓子を遠慮なくがっついているわ。


「これどこのお菓子ですか?すごく美味しいです」


「新しくできたお店のよ。宣伝して欲しいって、招待券貰っているからあげるわね」


「ありがとうございます!あ、そうだ、ローゼスさんって美容関係に興味あります?あたし、招待状とか招待券を色々貰っても、全然興味無くて。良かったら貰ってくれませんか?」


「あら、嬉しいけど、全然興味無いってどうなのよ。そこはミヤリと一緒に行ってみたらいいじゃないの」


「美容サービスを受けている間に雑談もすることになるのですが、恋愛話になると会話が続かないのがいたたまれなくなりました。提供できる話題がありません」


「うん、気楽に楽しい会話をしつつ、サービスを受けるものだと分かっていても、いっそ黙ってやってくれた方がいいと思いました。普通の女の子なら盛り上がれる話題だと思いますけど、あたし、それは性犯罪者に狙われる典型的な流れとか、そういうことを言う女は迷惑行為を周囲にばらまくとかそういう方向に思考がいって、いらんこと言わないようにするのが大変で」


「そうね、これで色気を磨けば素敵な出会いがと助言されても、お色気振りまいて性犯罪者を際限なく呼び寄せていた女のことを思い出して、ぞっとしてしまいました」


「えっとぉ……うん、まあ、二人とも苦労していたみたいだしねぇ。じゃ、アタシが遠慮なく貰っちゃうわ!」


 ローゼス管理官ならいかなる話題にも対応できそうで頼もしい。

 私たちの相手をして気楽な雑談もしつつ、どんよりとお菓子を食べている遺物管理課長の世話も焼いているし。


「んもう、課長ったら、せっかく女の子たちとお茶しているんだから、もっと楽しみなさいよね。ごめんなさいね、うちの課長ったら、今は女の子より猫ちゃんの方が恋しいのよ」


「猫ちゃんって、ユレス捜査官のことですか?」


「そっちも猫っぽいけど、相棒のワトスンの方よ。新しく発見された旧世界遺跡から、未鑑定遺物が大量に送られて来るんだけどね、猫ちゃんは一瞬で判定してくれるけど、課長は緊張感に満ちた数日を過ごして判定するしかないから、精神的にちょっときちゃってるわけ」


「そう言えば、先日戻って来たガンド捜査官が未処理の事務仕事の山を見て、ユレス捜査官がいたらと嘆いていましたね。私がお手伝いできればいいのですが、圧倒的な知識不足で無理でした」


「あーうん、そっちも大変よね、姉御が事務仕事しないし、ユーリ捜査官が事務仕事から逃げるから。ミヤリ捜査官は頑張ってあげてちょうだい。旧世界映画をたくさん見ると、意外に多くの知識を習得できるわよ。ただ、それなりに時間が必要になるから、すぐに習得できないのは仕方ないと思うの。

 ユレスはねー、ある意味英才教育受けてるから、知らぬ間に知識習得しちゃっただけなのよ。子どもの頃から旧世界映画を見ていたからね」


「情報制限かかってるのかもしれないですが、あたし、ユレス捜査官は子どもの頃から臨時職員だったって聞いたことあるんですが」


「そうよ。情報制限かかるほどでもないけど、警備局は配慮して言わないようにしてくれているのかしら。でも、小さい子が遺物管理局に通ってくるわけだから、遺物管理局の警備担当職員は当然把握しているわよ。警備局長が直々に選んだ精鋭が配備されているから、そっちからも聞いているだろうけど」


「やっぱり、精鋭が配備されていますよね?身のこなしが違うし、特務課の先輩だった人もいるみたいだし」


「そうよぉ。だって遺物管理局って危険物保管してるから、何かあったときは最前線になりかねないもの。警備局の警備担当は遺物管理局の監視役も担ってるけど、旧世界遺物の危険度を十分に教育された精鋭が配備されるから、遺物が暴走したときは協力して対応しようっていう暗黙の了解があるわね。だから、姉御みたいな戦闘に参加できるうちの職員と、警備局職員でときどき合同訓練をしてるわよ」


「ローゼス管理官も参加していますよね?」


「アタシは遺物管理官であって武装所持資格も無いのに、無茶振りされて困るわ!」


 そう言うローゼス管理官だけど、ガンド捜査官は自分より強いと言っていたし、私もそう思うわ。


 私は捜査官資格があるので捜査官用の武装所持が許可されているけど、後方支援に徹する方が賢いとクレア捜査官に言われたし、自分でも最前線に出る実力はないと弁えている。

 自衛はできるし、何人か庇うくらいはできるけれど、前に出ても、頼りになるどころか足手まといになるわ。


 ローゼス管理官は確かに武装所持資格は無いけれど、武装的に使える攻撃的な服装を装備して暴れ回るし、見事な筋肉を持っているので、武装を使用する私よりも各段に強いわ。


 リマが冷静に実力を分析していたことがあるけど、特務課でも上位に入るくらいの実力と査定していた。

 今もじっくりローゼス管理官を見て頷いたわ。


「ローゼス管理官は武装より体術って感じだし、むしろ武装とか邪魔そうだから持ってない方が強そうです」


「やだ、ばれちゃった。だって、武装とか可愛くないし、そういうの持って交流場に行くのって無粋だし、何よりお洒落じゃないわ!でも、絡んでくるお馬鹿さんもいるから、乙女心と貞操を死守するためには持ち運び不用で、体が動く限りは使える体術習得した方がいいじゃないのよ。

 警備担当とか本職がいるなら助けを求めた方がいいと思うけど、いつも近くにいるわけでもないし、いない場合もあるじゃない。誰かに頼っていては我が身を守り切れないわ。向き不向きもあるから、誰もが体術習得しろとか無茶振りしないけど、か弱い女の子だとしても万が一の緊急事態に対応できる護身用の何かを持っていた方がいいと思うのよ」


「私もそう思います。むしろ自衛できない女ほど、そういうものを仕込んでおくべきです」


「うん、警備局でもそういう指導はしてるんだけど、結構考え甘い子が多いからなぁ。ヒミコほど酷くは無くても、そうは言っても誰かと一緒に行動するなら、助けてもらえるって思ってる感じかな。

 でも、同行者に襲われることも想定しないと駄目だよね。ただの友達と思って警戒もせずに二人きりになって、そのままって流れもあったけど、さすがに迂闊すぎ!女の子一人で行動するのは危ないって自覚あったみたいだけど、対策にその友達の男と行動しても、そいつに襲われることを考えないってのは甘すぎる。うん、本当に自分を救えるのって、最終的には自分の判断とか備えだったりするね」


ここまで読んでくれてありがとうございました。

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