14 望み
メネルカ魔導国は、この世界での魔法文明の頂点。
いにしえより受け継がれてきためっちゃヤバい魔法とか、
今では再現不可な超絶魔導具が、
山盛りてんこ盛りで秘匿されてるそうですよ。
で、さっきの3つの宝箱の中にあったのは、
国宝にして秘宝の、極め付けにヤバい魔導具。
ダニがどうこうなんてことになったら、
国がどうこうなっちゃいますよ、と。
でもさ、世界イチの魔法の国だったら、
ダニ対策とか余裕なんじゃないの?
「我が国全土を覆っている大結界内では、吸魔虫は生存出来ません」
ほら、だったら宝箱から出しとけば虫干し完了でしょ。
「魔法・魔導具にも"格"というものが存在します」
「秘宝の"格"は、まさに別格」
「国全体を守護可能な大結界ですら、影響を及ぼすこと叶わず」
「秘宝に取り付いた吸魔虫が、秘宝の"格"によって守護されてしまうのです」
あーなるほど、もしダニが引っ付いてたら、すげぇ魔導具の守護効果に守られちゃうので、やむなく手作業ですりすりっと。
そんで、メネルカの子たちは全員超一流魔法使いばっかだから、ダニには絶対近付けない、
俺みたいな無魔力野郎がダニ掃除役に適任、と。
「本当に、感謝しております」
「ただ、殿方が我が国を自由に往来することは禁忌」
「このような非礼を取らざるを得ないこと、お詫びいたします」
いえいえ、俺なんかがお役に立てて何よりです。
虫干しが必要でしたら、今後ともご贔屓に。
うん、やっと女王様が笑ってくれたね。
やっぱ乙女は笑顔がイチバン。
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女王様からのお話しの続きは、今回の件の報酬について、でしたよ。
「望みがあれば、何なりと」
うん、女王様って、お声まで女王様ですな。
失礼、えーと、報酬……
……すみません、急に言われても思いつかないんで、保留ってことでも良いですか。
「つまり、メネルカ再訪の権利をお望み、ということですね」
あーそっか、そもそも男子禁制でしたっけ、ここ。
そりゃあ連れてくる時に魔導目隠しもされちゃいますよね。
ってか良いんですか、俺みたいな男が、この部屋でこんなことしちゃってても。
「よろしかったら、こちらを」
はい、書面ですね、なになに……
『"吸魔虫駆除士"契約証』
あーなるほど、これにサインして、メネルカ再訪手続きの簡略化っと。
はい、サラサラサラ、署名完了。
「ちゃんと証書の規約、読んだの?」
大丈夫でしょ、たぶん。
なに、メリシェラさん、その目は。
えーと、どれどれ……