初恋
全く隠しきれていない、人の振りをしたこの女神は、ティアというらしい。
あれからティアに、魔術の使い方を教えてもらっていた。
女神なんかに教えられるのか?と疑問に思ってはいたが、意外にも教え方は上手かった。
精霊の力を感じ、その力を借りて魔術を使う。
それを繰り返し行う中で、薬を使う時にも、無意識に魔術を使っていたことにも気付いた。
随分と精霊に助けられていたようだ。
そして少しずつ精霊が見えるようになり、最後には会話も出来るようになった。
その頃には、ティアと出会ってから3年が経っていた。
「ディーは本当に精霊に好かれているわね」
出会った頃はそんなに変わらなかった表情も、最近は少し変わるようになっていた。
今も精霊の懐かれ具合に苦笑している。
「……そろそろ精霊のお願いも叶えた訳だし、ここを出て行こうと思うの」
窓から庭を眺めていて、ティアの表情は見えない。
「そのことなんだけど……
ティア――僕はこの3年間で君と過ごす毎日が、楽しかったんだ
君の突拍子もない言葉や、僅かに見せてくれるようになった表情をもっと見てみたい
いつまでも隣で見ていたいって思う
女神であるティアからしたら、こんなちっぽけな人間て思うかもしれないが、ティアを好きな気持ちが止められない
愛してるんだ」
「――!!
ほ……んと……に?」
俯いたままのティアのラピスラズリ色の髪をかき上げれば、顔を真っ赤にし、潤んだ瞳で見上げていた。
「わたしも、好きになってしまったの
あなたとディーとこの先ずっと一緒にいたいって」
ぽろぽろと涙を流しながら、2人は抱き合った。
祝福するかのように、精霊は2人の周りを飛び、無駄にキラキラさせていた。
これ以上はないくらいに幸せだった……