精霊の愛し子
話が長くなりそうだったので、とりあえず家に上がってもらいハーブティーを出す。
見た目は少女だが、話し方といい雰囲気といい何歳なのか分からなくなる。
「それで愛し子とは何ですか?」
彼女はハーブティーを優雅に一口飲むと、答えてくれた。
「愛し子とはといっても、その名の通りよ
あなたが精霊に好かれる気質ということよ」
「好かれる?」
「自覚はないのかしら?
あなたは見たところ薬師のようだけれど……
貴方魔術は使えるかしら?」
「確かに僕は薬師ですが、ただの平凡な薬師ですよ
ましてや、魔術なんてとんでもない」
魔術は限られた者だけが使える能力で、人によっては様々だが、人を癒したりも出来るらしい。
そういう人たちは、揃って国のお抱えになり一生安泰だ。
「やはり無意識なのね
貴方が薬を作っている時に、良いものが出来る様に祈るでしょ?
その祈りに反応して、貴方の周りにいる精霊たちは、力を使って薬の効果を跳ね上げているのよ」
「そんなことって……」
今までの自分の力を否定されたように感じ、悔しく感じてしまう。
「それも貴方の才能なのだから、そんな風に考えなくても良いと思うわ」
心が読めるようなことを言われ驚くが、彼女の表情は特に変わらない。
全く何を考えているのか分からない人だ。
「それで精霊たちが私にお願いしているのは、その姿を貴方が見えるようにして欲しいと」
「そんなことが出来るのか?
というより貴方は何者なんだい?」
「貴方が魔術を意識して使えるようになれば、可能よ
わたしが何者か……ね」
すっと姿が変わっていく
ラピスラズリの髪も綺麗な顔立ちも変わらないけれど、頭には羊のようなツノがあり、背中にはドラゴンのような翼がある。
でも不思議と恐怖は感じない。
むしろ人ではなくてホッとしたくらいだ。
そうでなければずっと感じていた、この神聖さは説明なんてつかなかった。
さっきまでは感じなかった、威圧感がすごい。
立っているのがやっとなのに、目を離すことの出来ない存在感。
「私は女神――」