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6話 新しい家族……!?


ゆるふわ戦士『狩りありでした~!』

SIKA焼肉定食『ありです』

ゆるふわ戦士『おかげで八門(はちかど)悪魔の魔導書ゲッツできました!』


 画面内で水色の髪の少女が効果音と共に自分の持っているアイテムを見せつけるエモートで動く。

 それに対し、パチパチと拍手のエモートで返される。


SIKA焼肉定食『いやぁ、とうとうゆるさんも大戦争参加ですか~』

ゆるふわ戦士『これで多くのプレイヤー共を阿鼻叫喚の渦に陥れてやれるぜ……ゲヘヘ』

SIKA焼肉定食『ゆるさんだったらネームバリューだけでも怖がられると思うけど』

ゆるふわ戦士『いやー、そんなの前職の頃だけですよw今はこのキャラも悪魔召喚士用に調整してますし』

SIKA焼肉定食『大戦争中、突然響き渡るタイマーウォッチの音。「これから敵対勢力全滅RTA始めまぁ~す」という死の宣告……!』


 ぶるぶる怯えるエモートを出す黒髪に赤いメッシュの入った男にツッコミエモートで返す。


ゆるふわ戦士『んな訳ないじゃろがい!でもいつかは悪魔召喚士の方でもTAやってみたいですね』

SIKA焼肉定食『マジすか!?楽しみにしてます!!!!!!!!』

ゆるふわ戦士『めっちゃ喜んでんじゃんwww』


 今時ボイスチャットもない、キーボードで文字を打ってコミュニケーションが取れるチャットだった。


 会話をしている相手の個人情報はまったく分からない。

 男性かもしれないし、女性かもしれない。

 俺と同年代の高校生かもしれないし、働いている社会人かもしれないし、それとも自宅警備員なのかもしれない。

 どんな事情があるのかも分からない。


 でも、そんなリアルを抜きにして、好きなアニメやゲームで話が合って、時には配信して……。

 そういうのが出来るゲームだったから、そういうことが出来るオンラインゲームだったから。

 ――すごく楽しかったんだ。



 ○



 この時期になると、いつも静かで穏やかな村もにわかに活気づく。

 近々控えているのが収穫祭。一年に一回、村で行う大きな祭りだからだ。


 昔は貴族が取り仕切っていた大規模農場だった時の名残らしいが、今では昔から農家も半数に減って、俺の両親みたいにアイテムの卸売業やってるとか、冒険者の増加に伴い飲食店やら宿屋やらが増えてと多様化してはいるものの、収穫祭自体は無くならずお祭りとして毎年欠かさずにやってきた。


 ――という話をかなり噛み砕いて毎年村長が話す。講習の場は勿論ながらヨナン先生のいる教会。

 村にとっても、そして子供にとってもお祭りは必要ということは分かってるって。


「ねぇ聞いた? お祭りに合わせてサーカス団が来るんだって! しかもあのブランシュ・ローズ!」

「えぇ!? なんでそんな有名どころが来るんだ?」

「知らないわよ。でも絶対良い機会よ、ぜぇーったい見に行きましょうね!」

「うん、行こうぜニナ!」


 そんな話会の帰りでニナと一緒に帰っていたら嬉しいお誘いが来た。

 流石の俺でも知ってる超絶有名サーカス団が村に来るらしいってよ!

 これはもう行くっきゃない。ただでさえゲームなんていう便利な娯楽が無い中でサーカス団なんて面白いに決まってる。


「あら、野蛮人のイリーガさんもご覧になるのかしら」

「あんですって!?」


 俺じゃなくてニナが睨み返した先には、同じく帰り道を歩くカイラがいた。

 一言で言うなら俺にツンツンしてる女子。前はそんなでもなかったんだけど、なんか嫌われることしたっけな。未だに複雑なオンナゴコロが分かんないもんで……、サーセン。


「わたくしは特別席から見物できますが、イリーガさんたちはろくに見られない席に座ることになるのでしょうね。可哀想に」

「なーにーがー可哀想よ。イリーほど図太い子供がどこにいるってのかしら!」

「ちょっとニナ、どういうこと」


 カイラから庇うよりに手を広げて立ったニナの背に問いかけても答えてくれない。

 ねぇちょっとどういことですかニナさん。


「イリーは確かに恋バナのってくれないし、ガサツだし、男っぽいし、スカート履いてるくせに足開いてみっともないけど、でも! あんたなんかよりオトナなんだから!」

「えっ」

「な、なんですって!」


 え………………。


「イリーはまだ習ってない三ケタの暗算できるのよ! 足も早いんだから!」

「なッ――!」

「えぇ……」

「おっきくなって魔物だってやっつけたんだから‼」

「待てニナ! 流石に出来ない! 大きくはなれない!」

「――魔物は、退治出来ると?」

「いやそれも出来ないってぇぇぇ!」


 何言っちゃってくれてんのニナァ!!!

 おかげでカイラが「マジ?」みたいな目向けてんじゃん。違うの、全然変身とか出来ないから! 魔物と論外!

 フシャー!

 毛を逆立てた猫のように憤っている様子のニナをなんとかカイラから離すと、ようやくニナは落ち着いた。


「ごめんなさい、さっきはとんでもないこと言っちゃった」

「ホントだよもう……」

「でも、前からカイラはイリーに冷たいから、なんだか嫌な気分になっちゃう」

「そっか……」


 プンスカしているニナと再び帰り道に戻る。もうその頃にはカイラもいなかった。恐らく帰ったのだろう。


「なんでイリーは怒らないのよ。怒りなさいよ」

「いつもニナが怒ってくれるからかなぁ、あんまり怒る気になんないや。今んとこ怪我とかさせられてないし」


 俺はカイラとニナが会う度ヒシヒシと「キャットファイト」なる単語が脳裏に過ぎっているが、このままカイラが俺への言動がエスカレートしていけばもっと激しくもなっていくだろう。しかも分は悪い。

 カイラは昔からここを仕切っている貴族の家系こと、ファートプ家の娘ちゃんなのだ。

 一介のアイテム卸売業とは格が違うのだよ、格が。


「もう、イリーったら」

「ありがとうニナ」

「も~……」


 膨らんだニナの頬をつついて空気を逃がせばやれやれといった顔になる。


「いじめられたらちゃんと言うのよ! あたしが助けるんだから!」

「頼もしい~。流石ニナ」


 俺より年下なのにすげー人間出来てるわ。それに可愛い。

 雑談を交わして、先にニナが家に戻り、その二軒先にある家に戻ってきた。

 家近いんだよ。アイテム屋と宿屋って大抵セットだからか?

 表は店の出入り口なので、裏口から帰るのが常。


「ただいま~」


 靴を……脱がないんだな。アメリカンというか、ヨーロッパチックで未だに慣れないが、ここで靴脱いだり抵抗感示したらそれこそ転生者疑惑強くなっちゃうから大人しくしような。


「おかえりイリーちゃん。ね、今日は嬉しいお知らせがあります」

「なになに?」


 キッチンでご飯の支度をしていた母さんがうふふふと寄ってきた。


「それはね~……」


 耳元まで顔が近付く。




「家族が増えます」




 ――おっふ。


「え、どういうこと?」

「これからイリーちゃんは『お姉ちゃん』になります!」


 母さんは顔を離して、にっこりと微笑んでお腹をさすった。


「こ、子供が出来るってこと⁉」


 ワー、ウレシイナー。マイバンガンバッテタカラカナー。

 でも……。なんだろう、本当に嬉しい。前は一人っ子だったからかな。


「お姉さんになるの? おれ」

「そうよ」


 母さんに手を取られ、お腹を触る。普段と変わらないように見えるけど、ここには赤ちゃんがいるんだよな……。

 弟かな、妹かな……。耳を当てても分からない。


 でも、でも。


 じんわりと、感じたことのない喜びが自分から湧き出ているのが分かった。


「お姉さんかぁ……。嬉しいや」


 なんだか照れくさくて、誤魔化すように笑い飛ばした。


「良かった。さ、手を洗ってらっしゃいイリーちゃん」

「はーい」


 洗面所で手を洗う。目の前には鏡があるから自分の顔が見える。

 ――なんだか自分でも見た事ないほど、幸せそうな顔をしている。

 両親のモニャモニャを茶化しつつも期待してたってことかな、恥ずかしい……。

 むに、と自然と上がってしまう口角を触って、変顔をしてから洗面所を出てった。


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