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2話 五年経った



 あれから五年が経った。

 五年間の間に母から読み聞かせられた絵本やお話、父がちょくちょく話す今の情勢の話から考えて、この世界がどこなのか、そして転生者はどういう役割を担っているのかが分かった。

 イメージ的に転生者という立場で一番近いのはギリシャ神話の神とか、英雄かな? そんぐらい、大体の人が知っていて、偉業とかも知られてるポジションにいるらしい。そして現在進行形で転生者がいるもんだから神聖視されたり、恐れられたりされてるようだ。

 隣国にいる転生者がめちゃくちゃ強いらしくて、外交でなにかあれば「やんのかこら? こちとら国簡単に滅ぼせる転生者様がおんのやぞ? お?」と脅されている――のが俺のいる国エギンの現状らしいです。こっちには有力な転生者がいないから……、ヤバイね。高校生ながらにヤバたにえんな状況なことは分かった。


 次にここがどこなのか――ぶっちゃけて言うとMMORPG『ファーレン・オンライン』に近しい世界じゃね? っていうのが俺の仮説。というのも、俺はこの『ファーレン・オンライン』の一プレイヤーだったから。転生前に「やろっか~!」と意気込んでいたゲームに出てきた地名や設定が出て来たからウホホーンと最初は興奮した。だが、次にその興奮は覚めることになる。


 ほら、あるだろ。好きな世界観だけど、絶対にこの世界には転生したくないなっていう作品。

 それが『ファーレン・オンライン』である。


 このゲームの一番の特徴というのが、世界が階層構造になっていることだ。俺がやっていた時では五階層まで実装されていた。それぞれの階層を繋ぐ回廊を落ちていって、階層の移動を行う。


 人や無害な動物が住める――俺が今いる場所である一階層『ラーイディス』。

 五階層に比べて危険度が跳ね上がり、そこら中を魔物が闊歩する二階層。

 グロイ絵面の魚型魔物しか出てこない三階層、最早廃人プレイヤーの通り道こと四階層。

 そして、廃人しか行かない五階層。フレンドの廃人さんから「五階層いかない? モチ守ったるから」としつこ……、何度もお誘いがあったから行ってみたことがある。

 ……あそこは廃人しか行けないエリアだ。俺なんて一撃当たっただけで死ぬね!


 これの何が問題かって、一階層にいるだけならいいんだよ。でも、時折階層を繋ぐ回廊が暴走してね?

 二階層の魔物が一階層に現れたり、最悪の場合――二、三階層すっ飛ばして五階層の魔物が出てくるっていう可能性があるんだよな~! 通称『回廊暴走』。そういうイベントストーリーがあって、しかも頻繁に起きてたから……。五階層と繋がったらもう死ぬしかない。


 行きたくない世界観にランキングインしてる『ファーレン・オンライン』だが、その似た世界で転生者ってなんなのかっていうと……ゲームのプレイヤーっぽい。

 絵本『最初の転生者たち』に普通に出てきた会話の例を抜き出すと……。


 とんでもなくつよーい人が突然現れてこう言いました

「――skn狩り行こうぜ」

「skn?」

「ああ、俺とお前なら行けるさ」

 森で迷った少年は、その言葉を聞いて――自分が彼と同じく、秘められた力を持っていることを思い出しました。


 絵本にskn狩りなんて単語出ると思わんやろ……。


 このskn狩りというのは「三階層へ狩りに行こうぜ」だ。sknというのは魚狩りを示し、魚型のモンスターは三階層にしか存在しないから。

 この最初の転生者たちとやらはキャラメイクは人間種だったようで、当然のことながらもう生きてはいないようだ。


 そう、ここで何より俺が疑問を覚えたのは「人間種だからもう生きてはいません」と絵本が締められたから。

 転生者というのは『ファーレン・オンライン』のプレイヤーのことであり、それから……。


 もし、キャラメイク時の設定が……今に関わるとするのなら…………。


 ――俺が女の子になってるのにも納得がいくんだよなぁ~!


 白状します。俺は女性でキャラアバターを作っていました。

 理由は単純に、他のゲームで男アバター作ってたから、たまには女性キャラでアバター作ってみよ~って思ったから。

 今、姿見で睨みつける美少女――この顔も自分がキャラメイクしたアバターより数年幼い感じなのだ。カラーリングもそのまま、中二心赴くままにやったものだし……。あ、でも名前は違った。

 俺、ネット内では『ゆるふわ戦士』の名前でやってたから――。あ、変な名前? う、うるさいやい!

 と、ともかくだ。同じ部分もあるけど、名前など微妙な所は違う。

 それでも、転生者というのが『ファーレン・オンライン』のプレイヤーであり、この世界が『ファーレン・オンライン』であることはよぉく分かった。


 その上で言おう。俺は絶ッッッ対転生者って名乗らないことにする。

 ごめんな母上に親父殿。転生者を養育すれば謝礼金がマジパネェ額貰えるのは知ったけど、だからといって転生者として生きてくつもりはない。

 この国の情勢――俺のいるエギンは、少しでも転生者の力が欲しいからこそ出ている法令らしいが、転生者が出た場合は齢十歳までは生みの親元にいられるが、それ以降は国が預かるという。

 もうバリバリ戦争兵器にする気じゃまいか。俺は絶対なりたくないね。


 俺は細心の注意を払って年相応を振舞った。こういう時、転生者と区別する方法は『皆と一線引いた行動を取っている』とか、『一人で本を読み漁り、その内容を理解している』とか、『魔力制御をしている』とかあるらしい。子供の内から行動を監視されてるとか怖いんだけど……。あ、ついでに『本の内容に鋭い質問をする』とかも入ってるっぽい。

 なんで知ってるかって、母上と親父どのとがナカヨシした後のトークを盗み聞いてたからだよ。ウチの家、壁が薄いから色々聞こえるんだよ……。近い内に弟か妹が増えるわよって報告されても驚かん。



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