ムハンド聖教国の異変
翌朝に宿を出発したカイト達は迷宮の都市コンセキを目指して歩いていた。
前日に偵察に行ったシロはまだ帰らない
(カイト)
「シロはまだかなぁ⁉︎」
(リュート)
「何かあったか?」
しばらくするとシロは慌てて帰って来た。
(カイト)
「遅かったな。強いヤツは居たか?」
(シロ)
「強いも何も、迷宮の都市はすでに壊滅していた。激しい戦闘の跡だけが刻まれて。魔物の軍団は首都の方向に続いていた。生きている者は誰一人いなかった。死体の状況から5日前ぐらいだと推測される」
(カイト)
「なんだって⁉︎それは大変だな。先回りしてもギリギリだな。空から行くか?」
(ライ)
「急ごう。さぁ乗れ!」
ライは本来の大きさになり、全員を乗せて空高く羽ばたいた。
(ライ)
「カイトよ!まずは何処に行く?」
(カイト)
「迷宮の都市まで行こう。そこから魔物が通った跡を追いかけて、首都に迫って間に合えばその前に降りよう。間に合わなそうなら首都の背後に降りて地上からムハンド聖教国の騎士と合流する。」
迷宮の都市はすでに壊滅していた。
魔物の通った跡は確かに首都へ真っ直ぐ伸びていた。
急いで追いかけると首都の入り口では騎士団と魔物の群れが激しい戦闘を繰り広げていた。しかし、魔物の数の方が多い。
首都の城壁は一際大きいサイクロプス達が大きな岩を投げ、その衝撃で城壁が崩れている所にウルフ型の魔物達が首都の中へ雪崩れ込んでいた。
また、上空からはドラゴン型の魔物が火の玉や雷球、風の刃が容赦なく注がれていた。
(カイト)
「間に合わなかったか。ライ背後に回るぞ。降りたらアリス、リン、俺、サーシャ、リュートの順で扇形に展開、従獣達も好きなだけ暴れていいぞ。特に上を飛ぶ虫達に格の違いを見せてやれ」
(サーシャ)
「住民の避難は⁇」
(カイト)
「それはここの王様がなんとかすんだろ。俺達はあくまでも魔物を殲滅する。何処かに魔物の司令官がいるはず。ソイツを見つけたら第一優先で倒せ。」
「「了解」」
こうして魔物の殲滅戦が始まった。
首都に雪崩れ込んだ魔物達を倒しながら進んでいくとサーシャの前方に黒いフードを目深に被った怪しい人物がいた。
(⁇)
「まだ冒険者が残っていたか?」
(サーシャ)
「貴方がこの魔物を率いているの?」
(⁇)
「これから死ぬお前には冥土の土産に教えてやろう。私は人類を超えた魔族の一人ヤンバル・タラ・ペテルギウスだ。」
(サーシャ)
「ヤンバル⁉︎ま、まさか…」
(ヤンバル)
「どうした?あぁ、この姿に見覚えがあるのか?」
(サーシャ)
「ヤンバルは私の兄よ。それに魔族ってなに?」
(ヤンバル)
「確かに私の記憶の中にいるな…ほぅ、お前が妹のサーシャか?身体だけ大きくなったみたいだな。魔族ってなにか?だったか…詳しくはわからんが、魔物を従える事ができ、魔素量は人の20倍を有し、身体強化はせずとも肌に傷をつけることもない防御力を併せ持つ。多くの実験に私は勝ち抜いてここにいる。もういいか?時間がない。そろそろ死ね」
(サーシャ)
「待って。もう一つだけ。何故この国を襲うの?」
(ヤンバル)
「この国の闇を知らんのか?この国は太陽神や海洋神など10の神柱を崇拝する宗教的思考を持っている。新たな神の創造にセントラルでの不死化の実験には一番協力してくれたよ。反対側にいるガイア帝国も協力してくれてたがな。私はガイア出身だ。魔族第一号の成功はガイアに渡った。それを知ったこの国は私の妻であるモナリザを人質に取り協力する様に脅してきた。モナリザも魔族だ。そう簡単に死ぬ事はないとたかを括っていたが、私の元には光を失ったモナリザの頭だけが送られて来たよ。だから私はこの国に復讐しに来たってわけだ。」
(サーシャ)
「そんな…なんて残酷な…」
そこに異変を感じたカイトが近づいて来た。
(カイト)
「見た事ないタイプだな。どうした?」
泣き崩れるサーシャを抱きしめ、ヤンバルに向かい合う。
(ヤンバル)
「サーシャの恋人か?」
(カイト)
「そうだ。サーシャになにをした?」
(ヤンバル)
「まだ何もしていない。これから殺すところだ。」
(サーシャ)
「カイトごめん。この人私の兄なの。見た目はかなり変わったけど、幼い時に行方不明になった…」
(カイト)
「わかった。ヤンバル!引いてくれ。俺も恋人の兄を殺したくはない。」
(ヤンバル)
「お前如きに殺されはしない。それにもう少しでモナリザの身体を取り戻せる。邪魔するな!」
(カイト)
「モナリザ?身体?」
(ヤンバル)
「我が妻の身体を取り戻す。我らは魔族だ。死ぬ事はない…はず。身体にくっ付ければ生き返るかも知れん。いや、モナリザはまだ生きている。」
(カイト)
「その身体は何処にあるんだ?」
(ヤンバル)
「王宮の地下にまだあると思う。」
(カイト)
「わかった。妻の身体を手に入れたらすぐに引いてくれ。関係ない者まで巻き込むな。」
(ヤンバル)
「なるほどな。不思議なヤツめ。お前に頼まれると断れない感じだ。モナリザの身体はお前がここに持って来い。早くしないと外の騎士団はもうすぐ壊滅するぞ。」
カイトは急いで王宮に向かった。王宮の中はすでにみんな避難していて誰もいない。
地下に行くと銀色の棺にモナリザの身体が保管されていた。
身体に触れると確かに生きている。
急いで棺を抱え、ヤンバルの元に戻り棺を引き渡した。
ヤンバルは棺を開け、首元に自らが持っていた頭を添えた。
するとゆっくりだが首がつながり、モナリザの瞳は黄金に輝き出した。
(ヤンバル)
「お前は約束を守る様だな。いいだろう。こちらも約束を守るとするか。」
(モナリザ)
「ゴホッ、ゴホッ、危なかったわ。ホントに死ぬところだった。」
(ヤンバル)
「モナリザ!良かった。愛してるよ。」
ヤンバルはモナリザを抱きしめ、口づけを交わした。
(モナリザ)
「私もよ。チュッ…」
しばらくするとモナリザはこちらを見て微笑んだ。
(モナリザ)
「貴方がサーシャ?私の妹ね。また会いましょう⁉︎私達はセントラルとガイアの国境沿いの森にいるわ。お話しはその時ゆっくりと」
(サーシャ)
「はい。あの…」
(ヤンバル)
「…行くぞ、モナリザ」
ヤンバルとモナリザは互いに手を繋いで上空に光となって消えて行った。
首都に溢れていた魔物達も一斉に引き返し、城壁の外では騎士団の雄叫びが響き渡った。
ムハンド聖教国の首都は壊滅的ダメージを負ったが、幸いにも王族は避難しており、首都からも避難できた人達が大勢いた。騎士団は約半分が崩壊していて、何故魔物達が引き返したかは謎のままになった。
後日談として、首都が陥落寸前に黄金に輝くドラゴンが現れ、首都を守ったという。首都の中央広場には黄金のドラゴン像が建てられ、毎年感謝祭が行われる様になったらしい。
『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。
感想もお待ちしております。
今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!




