囚われの皇帝
地下の監獄にて
(リュート)
「お前がプリランスの皇帝か?なるほど、威厳があるな。なぜ戦争をする?」
(ドロンス皇帝)
「なぜ⁉︎我々は敗戦の者。何を語ろうとも捻じ曲げられる。真実などないのだよ。」
(リン)
「お前の中の真実を話せ!話さないなら無理矢理吐かせる!」
(ドロンス皇帝)
「お前達の国は魔物との境界に唯一接している。それを脅しに使っている。グレートウォールを開放すれば1番初めに被害を受けるのは我が国だ。我が民を守るのは私の役目だ。何度も交渉したが、お前達の国は妄想だと切り捨てた。我が妻からの提案で秘密裏に調査隊をビキンスに送った。その調査結果はグレートウォールを開放して自由に移動できるようになっている。その元凶はそこの領主だと報告を受けている。グレートウォールを国際社会での管理にするよう世界会議で提案したが、ガイア帝国とムハンド聖教国、グリーン王国が賛成で他は反対で否決された。グレートウェイ王国はグレートウォールを独占し、世界の平和を脅かしている。近年は食糧を大量に生産し利益さえも独占しようとしている。我が国内においてもグレートウェイ王国を属国にすべきだという声も上がっていた。そこへ防衛の為に送った兵士が全員拘束され、我が国への進軍のためシュバイツに兵力を集めていると聞いた。兵士の救出と防衛の為に戦争になったという事だ。」
(カイト)
「お前の兵士に奴隷が多いよな。奴隷はどうゆう経緯で奴隷になりお前達の兵士になったのか知ってるのか?」
(ドロンス皇帝)
「奴隷とは名ばかりだ。奴隷になった経緯は知らんが、みんな兵士へ志願したのだ。奴隷だからといって前線に出すことはない。正規兵も奴隷兵も関係なく、強き者が前線に立つ。それが我が国の方針だ。」
(カイト)
「話が違うな。まぁいい。俺の話を聞いてくれ。俺の両親はプリランスのフラン王妃の刺客によって殺された。当時9歳の俺や弟、妹たちは奴隷に売られそうな所を冒険者に助けてもらった。しばらくしてビキンスに戻ると俺の屋敷はナーフ侯爵が住んでたよ。多くの女性の手足を切断し、男達の慰め物になっていた。そのナーフ侯爵から聞いたよ。フラン王妃の依頼でビキンスのオースティン公爵家の殲滅、ブロンズマロのグレント公爵家の子息の暗殺、皇太子の誘拐と暗殺、王女の暗殺、グレートウォールの開放は全て王妃が企てた事だ。実際に王妃から依頼された者もここにはいる。それにな、俺が会った奴隷兵達は家族を人質に取られ、奴隷兵として働かなきゃいけない者達ばかりだった。奴隷から開放するか問うとみんな喜んで応じてくれたよ。お前が何を信じるかは知らんけど、お前の妻だけは殺す。俺の両親と仲間の大切な人達を殺した張本人だからな。簡単には殺さない。時間をかけてやった事の重大さをわからせてやる。お前が邪魔するならすればいい。お前も大切な人を奪われる苦しみを味わえ。」
(ドロンス皇帝)
「にわかには信じられん。だが、それが本当なら私は皇帝として責任は取らねばならない。二度とこの国へは攻め込まん。明日釈放されたら妻から真実を聞き出そう。」
(カイト)
「ダメだ。王妃を差し出せ。今まで騙されてたヤツに嘘をつくのは簡単だ。お前には真実を知る事はできない。王妃だけは絶対に目の前で殺す。他にも恨みを抱いている者達も多い。」
(ドロンス皇帝)
「お前の気持ちは受け取った。しかし、殺す事は待ってくれ。我が名にかけて必ず真実を聞き出す。剣を貸してくれ。」
そう言って皇帝はリュートから剣を受け取り、自らの右腕を切り落とした。
(ドロンス皇帝)
「この腕は貴殿との約束として受け取ってくれ。真実を聞き出せなかった時は妻と私の首を差し出す。我が配下の将達は優秀で強き者達だ。私の首を差し出した後は貴殿の下で使っていただきたい。」
(カイト)
「いやいや、いらねぇ…俺の下よりもこの国の王子たるサイクロード様に使ってもらえよ。特にハリコイフはいい奴だしな。」
(ドロンス皇帝)
「貴殿は欲がないのか?あんな強き者達が手に入るというのに」
(カイト)
「俺には血より濃い絆の仲間がいる。それに大切な恋人がいる。それで十分。俺には過ぎた存在だ。」
(ドロンス皇帝)
「なるほど、貴殿は人を惹きつける能力に長けているようだ。妻の件とは別にもし今後何かあればいつでも力になろう」
(カイト)
「覚えておこう。しかしな、自分の首をかけて部下を生かしても残された部下は一生あんたの面影を追うんだ。そんな業を部下に押し付けるな!あんたはおそらく王たる器なんだろう。部下を大事にしな。」
俺達は心にモヤモヤを抱えながら屋敷に戻った。
(カイト)
「なぁ⁉︎俺はあの皇帝がたぶん好きだ。あんな漢はなかなかいないと思う。」
(リュート)
「オレもアイツと闘ってみたい。強そうだからな。」
(アリス)
「これだから男は⁉︎アイツは強くて上に立つ男だと私も思う。だが、そんなヤツは大概長生きできない。これ以上アイツに関わるといい事はない。」
(リン)
「私もアイツに関わりたくない。あんた達に比べたら私はフランからの被害もない。でも、カイト達と一緒にいられるならどうでもいい。」
(サーシャ)
「わたしはカイトといられるならそれでいい。プリランスに行くでも世界一周でも未開拓の地に行くでもどっちでも。」
(カイト)
「ごめん。俺のわがままだった。予定通り世界一周してから未開拓の地に冒険しに行こう。」
戦争は終わり、王国の平和は守られた。それが一時的であってもいいと思う。
世界各地から王国に移住してくる者も増えて繁栄している。
人類の住む世界はまだまだ不安定だが、それでも平和が1番だ。ガイア帝国は世界の統一に向けて行動している。プリランス帝国の力が落ちたこの時が一番危ないだろう。でもそれは冒険者の仕事ではない。外交努力は国に任せ平和を少しでも長く続いてほしいと願うばかりだ。
俺達は冒険に行く準備に取りかかった。
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