プリランス戦争(3)
前線まで戻ると激烈な戦闘が繰り広げられている。
国境の橋を挟み、遠距離からの魔法攻撃が味方の陣営に襲いかかっている。前線では敵の騎馬隊が縦横無尽に駆け巡っている。
状況的にはかなりの劣勢のようだ。
第1線は突破され、魔法攻撃隊は散り散りになり、陣形はもはやないに等しい。
マルクス団長は敵の隊長らしき人物と闘っていて拮抗している。他の騎士団も善戦はしているが敵にも強い連中がいるようだ。寝返り工作していた奴隷兵達は迂回してシュバイツの方向に逃げている。
つまりは正規の軍勢だけで我が陣営に襲いかかっている。
(カイト)
「まずいな!このままでは被害が大きいだけでなく負けるぞ!国境の橋方向に特攻をかけるぞ!先陣はアリスとリュート、次にリンとサーシャが続け!俺は敵陣営を掻い潜って皇帝を抑えに行く。意見は?」
(全員)
「ない!」
(ライ)
「ワシらも参加していいのか?」
(カイト)
「お前達はダメだ!なるべく隠れてろ!それぞれが主の危機の時だけ護れ!姿は見せるなよ!情報を敵に与えるな」
(聖獣)
「はーい…」
やる気のない返事は無視して俺達は山を駆け降りて敵陣側から攻撃を仕掛けた。
風魔法で強化されたリュートの動きは残影しか見えない。普通の人なら見る事も出来ないだろう。
横一閃に放たれる剣の前に居る人達は振り向く動作で下半身が離れている事に気付き、声を出す暇を与えていない。
一方のアリスも長い蜻蛉斬りを振り回し敵陣に道が出来ている。
続くリンとサーシャも魔法で攻撃し不意を突かれた敵の陣形は崩れた。
国境の橋まで到着すると手強い敵に行軍速度は落ちた。
アリスやリュート、リンとサーシャともアイコンタクトで意志の疎通を図る。
俺は敵陣を掻い潜り、武装された黄金の鎧を纏った馬車というか戦車というかを目指す。おそらく皇帝がいるはずだ。
すれ違う敵に注意しながら進むが、一目で強者のオーラを纏っているのが少なくとも30人はいる。
魔法で身体強化しても対応する強者も多い。
避ける事もできない一太刀に鳶剣で受け止める。
(騎士)
「ほう⁉︎これを受けるか!なかなか強き者よな。名乗りがまだであった。我が輩はプリランス帝国第2師団長のハリコイフ子爵である。以後お見知りおきを。」
(カイト)
「騎士道か⁉︎丁寧な挨拶だ。俺はカイト、S級冒険者だ。よろしく!」
(ハリコイフ)
「S級とな!なるほど強い。ならば本気でいかせてもらうぞ!」
(カイト)
「イヤイヤ!闘いたくない!引いてくれ!」
(ハリコイフ)
「戦争で強き者に会うためだけに来たのだ!せっかくのチャンスだ。逃さぬ!」
ハリコイフは蒼い格子柄をあしらった2m程の長い槍を軽そうに振う。スピードも早い。
鳶剣だけで捌けそうもないので蒼剣も抜刀する。
刀身にそれぞれの属性魔法を纏わせ、ハリコイフの槍を捌く。
それにしても強い。
スピードは互角だがパワーが違う。一撃一撃がとてつもなく重い。
全てを受け止めると腕がもたない。体捌きしながら避けたり、剣でいなしたり、攻撃したりと暫く攻防が続く。
そんなに時間はかけられないため、少し卑怯な気はするが武器を取り上げようと腕輪で受け止める。瞬間にハリコイフの槍は消えた。
ハリコイフ「なっ!どんな魔法だ!卑怯だぞ!堂々と闘え」
カイト「オッサン強すぎだよ!また今度やろう!俺は先を急ぐんでこれで!」
それで逃すわけもなくハリコイフは拳を貫く。
カイト「あぶ!な!まだやるか?」
ハリコイフ「武器が無かろうとも倒す!第2師団長の名は飾りではない!」
ハリコイフの突きを躱し横腹に強化した蹴りを叩き込む。
一瞬耐えたハリコイフに瞬間的に軸脚の左脚を鳶剣で斬り落とし回し蹴りで吹き飛ばした。
50メートルは飛ばされたハリコイフを置き去りにして皇帝を目指す。
黄金の鎧馬車が見えた。
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