謎の魔物
巨大な森の入り口
森全体はむせ返る血の香りとピリついた空気で進入自体ためらわれる雰囲気だ。
(アリス)
「カイトから楽しいオーラが溢れてるな、どんな魔物がいるんだ?」
(カー子)
「予想だが、虫種が多いからマンティス種がいるだろうよ。だが、虫種の頂点はキングカブトかキングクワガタの双璧、相性にもよるが、キングアント辺りも強いぞ。」
(リン)
「マンティスは厄介なの?」
(カー子)
「マンティス種は弱い。が、生命力はゴキブリより強い。奴らは死ぬほどの致命傷を負って生き残る事があれば致命傷の元になる攻撃の耐性がつく。火で炙られれば火耐性、水没されれば水耐性の様にな。体力の回復量もハンパない。瀕死から回復すると倍の体力がつく。だから三つか四つあたりで瀕死になる事がないからな…大概はその辺りで死んでいく。」
(サーシャ)
「なら、キングアント辺りが一番強いのかも!」
(カー子)
「たしかに強い。個々で強いが群れた時は強さが数十倍跳ね上がるからな。いずれも虫種ゆえ、ドラゴンや獣、鳥種から比べれば脅威にすらならないがな」
(リュート)
「エンプーサは虫種だろ。なんで聖獣の地位になってるんだ?」
(カー子)
「エンプーサは確かに虫種だが、ヤツはもはや虫の領域にない。アイツは獣種でも上位のタイガーやウルフにも勝てるほど強い。ドラゴンの硬い鱗でさえ刈り取れるほどじゃ!しかもスピードは群を抜いて速い。聖獣に相応しい存在じゃ」
(アリス)
「エンプーサに会えるといいな、カイト」
(カイト)
「コレから会うマンティス種の最弱が目的だ。ソイツを仲間にして、エンプーサにするんだ!楽しみだろ!」
(カー子)
「そんな事を考えておったか⁉︎うーん、マンティスがエンプーサにのう⁉︎面白い発想じゃな!」
(マグ)
「ねぇ、早く行こうよ。森の入り口で立ち話って…飽きた!」
森の入り口で話し込んでいるとマグが早く行こうとせがむ。
森に入り多くの虫達が蠢いていた。森は鬱蒼と木々が立ち、陽の光は地面に届かず、猛烈な湿気に血の香りが立ち込め、息を吸うだけで気分が悪くなりそうだ。
(カー子)
「リンよ!この森にいるキングアント辺りを隷属してみたらどうだ?」
(カイト)
「隷属⁉︎あっ⁉︎そういえば、サーシャに渡すものがある。プレゼントだ。」
カイトは収納ポーチからかつて手に入れた隷属の指輪をサーシャに渡す。
(サーシャ)
「コレは?プロポーズかな?」
(カイト)
「コレは昔俺達が緑の迷宮攻略の時に手に入れたものだ。雷属性の魔物を一回だけ隷属することができる指輪で、プロポーズはまた今度だ。」
(リン)
「忘れてたの⁉︎まぁ、私もこの指輪の事忘れてたけど…で、カー子⁉︎キングアントかぁ⁉︎なんで?」
(カー子)
「アント種は数も多く、仲間のコミュニケーション能力が高い。あやつらを仲間にできれば世界のどこにいてもグレードウェイ王国との連絡ができる様になる。ワシらがお使いに行かなくて済むのじゃ」
(カイト)
「お使いが嫌だったのか?」
(リン)
「そんな能力があるならもっと前に教えてよ。」
(カー子)
「以前のリンでは無理じゃ。隷属には膨大な魔素が必要だからな。じゃが、今のリンならキングアントぐらいわけない。中でも使い勝手が良いのはブラックアントかのぅ。そのキングなら申し分ない。カイトは情報が一番大事だと言っておったのう⁉︎」
(カイト)
「確かに情報は大事だ。リンの領域か?」
(カー子)
「そうだ。まぁ指輪で失敗しても力で屈服させる事で隷属化できるがな!」
(マグ)
「また始まった!話に夢中で…」
話に盛り上がるカイト達は1時間ほど森の中に入り、話ばかりのカイト達に痺れを切らしたマグがツッコミを入れる。
木々の間に現れる小さな平原
その中央に大きな蟻塚
ポーンアントがゾロゾロ出てきて警戒態勢をとる。一匹あたりの大きさは手のひらサイズで、それが数百と出てくる。
マグは小さなマグマの塊を降らせポーンアントを焼いていく。
キングアントはポーンアントの3倍はある。しかも、群れを指揮することができる為とても厄介だ。
今のアントはグリーンアントで火に弱い。ファイアントは水に弱いなど弱点を突けば簡単に討伐できる。
キングアントが見つからないまま森の奥に進むと一際大きい広場があり、そこに緑色のマンティスとそれを取り囲むレッドキングカブト、プレートキングクワガタに更にそれらを取り囲むようにキングアントとその群がいた。
しばらく観戦していると、どうやらマンティスが虐められている様だ。
(リュート)
「助けに行くか?」
(カイト)
「もう少し様子を見よう。ヤバそうならみんなで助けに行くぞ。リュートはキングカブト、アリスはキングクワガタ、サーシャとリン、従獣はキングアントを蹴散らしてもらう。」
(全員)
「了解」
カイト達はいつでも飛び出せる様に準備した。
レッドキングカブトの攻撃はツノでの一突き、しかもツノが燃えている。
マンティスは避けるが羽根と脚を持っていかれた。
動きが悪くなった瞬間にプレートキングクワガタはその大きなハサミで胴体を切断し、頭以外の部分にアントが群がる。
もう少し善戦すると思っていたため、少し判断が遅れた。
(カイト)
「ヤバっ!行くぞ!」
カイト達の飛び出しにカブト、クワガタ、アント達は一瞬で逃げていった。
カイトはマンティスを静かに眺め、助かりそうにもない事を悟る。しかし、マンティスの瞳は生きる事の希望は捨てていなかった。頭の触角を動かし、自らの身体だったものを貪り始めた。
マンティスの身体はゆっくり再生していき、先程より一回り大きくなった。
何より驚いたのはもともと緑色だったのが、今は赤い線が身体の色々なところを縁取っている。
再生が終わったマンティスは魔素切れなのかその場に倒れた。
(カイト)
「カー子の言うとおり、生命力が強いな。いや、生への執着かな…ちょっと失礼」
カイトは倒れたマンティスに触れ、魔素回復する。しばらくするとマンティスは起き上がり何度も何度も頭を下げ、カブトが飛び去った方へ飛んで行った。
(カイト)
「アイツ可愛いな。追いかけようぜ」
マンティスが飛んで行った方に追いかけて行くと、またしても頭だけのマンティスが居た。今度は身体だったものもない。カイトは慌てて魔素を流し、再生を促す。全回復したマンティスの身体は縁の赤い色が少し増え、大きさも一回り大きくなった。
(カイト)
「お前かなり強いな。凄いよ。頑張れ」
(マンティス)
「ギギ、ギ」
(カー子)
「もう一度って言っておる。」
(カイト)
「あのツノを叩き斬ってやれよ!お前の鎌に魔素を纏えば行けんだろ!」
(マンティス)
「ギ、ギギ、ギギ」
(カー子)
「わかった、やってみると言っておる」
マンティスはもう一度飛び立ち、カブトに勝負しに行った。
カイト達も慌てて後を追う。到着すると勝負はまだついていなかった。
カブトのツノにはヒビが入っているが他は無傷、一方マンティスは手脚の数本は焼け落ちていた。が、再生スピードも上がっており、カイト達が到着と同時ぐらいに手脚は再生していた。
カブトはツノに炎を纏い、口からは炎を吐き出し仕留めに行った。
初めの頃は焼け爛れていたが耐性がついたのか今は表面が焦げている程度
マンティスは両手の鎌でカブトのツノに攻撃してツノを叩き斬った。が、同時にカブトに胴体を食いちぎられ、またしても頭だけの状態となった。カブトはこのまま放置は危険と判断し頭部へトドメを刺そうとし、それをカイトが救出した。
カイトはすぐにマンティスに治癒魔法と再生を図る。
マンティスの胴体部は防御力が上がったのか光沢が増えた。
回復したマンティスは更に一回り大きくなり、キングカブトと同じくらいの大きさになった。そしてカブトを横一閃に薙ぎ払い、やっと勝利した。
(マンティス)
「ギ、あ、ギ、とう」
(カー子)
「ありがとうだそうだ。」
(カイト)
「俺の仲間にならないか?一緒に冒険しないか?」
(マンティス)
「ギ、い」
(カー子)
「はいだそうだ」
(カイト)
「お前は今から俺の仲間、深碧と焔を宿す複眼の双鎌使い、名を[モス]と名付けよう!」
(モス)
「わ、ギ、ギギは、モ、ギギ」
(アリス)
「カイトって改めて凄いね。もう会話が成立してるよね!」
(カー子)
「カイトも凄いが、モスも凄いぞ。すでに人族の言語を理解し始めておる。ワレは人語を習得するのに50年はかかったかのう」
(シロ)
「ワシはカー子に教えてもらったから20年ぐらいで習得したぞ。」
(リュート)
「そんなにかかるのか⁉︎まぁ俺達が魔物の言語を理解すると考えるとそれぐらいかかるか」
(カイト)
「モス、とりあえず戦うにはまだまだだ。魔素循環ってできるか?」
カイトの質問にモスは魔素循環をして答える。
(カイト)
「よしよし。次は脚にだけ魔素を纏い、スピードを上げる訓練だ。」
カイトは自ら脚に魔素を纏い速く動いて見せた。モスはコレをすぐに習得。
次に両手の鎌に魔素を纏い、次に羽根に纏うと、次々に身体強化を教えていく。
(カイト)
「すげぇなぁ!モス!お前は天才だ。この先にいるクワガタを狩って来い!今ならあのハサミにも負けねぇよ!」
モスは喜んでクワガタに挑む。
脚は何回か斬られたが、真っ向勝負でクワガタのハサミを真っ二つにして勝つ事ができた。モスはクワガタの頭から食べ始め、その能力を体内に取り込む。
瀕死から生き残ると耐性がつくという話だったが、モスは食する事で耐性がつくようだった。
それからのモスは自信に溢れ、出会う魔物を狩っては食べ、負ければ何度も挑みと確実に成長していった。
出会った頃は手のひらサイズだったのが、今ではリンと同じくらいの大きさまで成長し、カー子はサイズを変えたり、姿を消す方法を伝授した。
森を抜ける頃にはカイトの肩に乗り、人語はカタコトだが言えるようになった。
リンは途中で出会ったクイーンブラックアントを強制的に隷属化した。
ブラックアントは影や地中に生息し、影や闇の中を自由に動く事ができる。繁殖力はアント種の中では低い。ポーンアント、ナイトアント、ビショップアントなどに進化できるため、バランスよく組織を構成することができる。クイーンアントのみ生まれた時からクイーンアントになるため、クイーンアントが多ければその数だけ増えていく。
しかも、クイーンアントから産まれたアントは自動的に隷属の鎖で縛られているため、今回のように他から隷属化されない限り一生そのクイーンの奴隷となる。
(カー子)
「キングじゃなくて良かったのか?」
(リン)
「アントの軍団を持つにはクイーンが鍵だった。キングは育てればキングにできるけど、クイーンはクイーンとして産まれて来ないとクイーンにはなれない。そのクイーンから産まれたら自動的に隷属化される。つまり、この子からコレから産まれる子達は一生この子のいう事を聞く軍団になる。」
(カイト)
「アントってすげぇなぁ。俺もアント隷属化しようかな?」
(サーシャ)
「隷属の指輪は一回しか使えないんでしょ⁉︎それに、人にはそれぞれ役割があると思うの。だから、リンが今回ブラックアントと出会えたのには何かしらの意味があって、何かしらの役割があるんだよ。モスにも出会えたし、これ以上わがまま言ったら天罰が下るよ!」
カイト達はやっとそれぞれに従獣達ができ、リンは情報収集部隊を手に入れた。
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