使役獣ハネオ
ダンテ家に寄ってケインの遺品を彼の妻に手渡し、ケインは立派に務めを果たし今は安らかに眠っていると伝えた。
今度生まれてくる時は、嫌らしい神の強制力から解放されて、今度こそ最期まで愛する者たちと幸せに暮らせるように。
天界の神の力に何処まで対抗出来るか分からないが、私はケインのために祈っている。
寄り道をしたので、最初に予定していたバードの休暇中には王宮には戻れず、使役獣との通信道具でハネオに「どうにかしておけ」と指示を出すトラブルはあったが、数日遅れで私とバードは無事お家に帰り着いた。
「お帰り! リュカ、魔王!」
初対面では鬱陶しく感じた明るい軽さが、なんだか嫌ではなくなっている。
私は帰路で人間界ご飯が好きなハネオ用に買って来たお土産を渡し、留守中の働きを労った。
「うぉっ! リュカの使役獣って待遇最高だな! 俺、リュカが地上にいる限り絶対天界に戻らねぇ!」
結構こき使ったし、無茶振りしたし、羽根も毟ったと思うんだが。
一体今までどういう労働環境で働いていたのだろう。
「ハネオ、天界に帰りたくないの?」
「全力で嫌だ」
「私が今請け負ってるのは、ハネオの監督なんだけど期間は言われてないんだ。いつまでなんだろう」
「じゃあ永遠てことで」
お土産の包みを開きながら、軽い調子でハネオは永遠を口にする。
「気軽に永遠とか言うな。悪徳業者からとんでもない契約させられるよ」
呆れて私が言うと、ハネオはケラケラ笑って肩を竦めた。
「だって俺もうリュカの使役獣だし。ハネオ以外の名前もいらねーし。だから、天界に捨て戻したりしねーで最期まで責任持って飼えよな」
どうやらハネオは完全にウチの子になりたいようだ。
バードを見ると、苦笑して頷いている。
意外とこの二人は仲が良いのかもしれない。
「じゃあ、このペンダントは私が持ったままでいいのかな」
「ああ。リュカ以外に持たせる気は無い。それ、こっち来る時に天界で神に寄越せとか言われたんだが、あんな神に何時でも俺にアクセス出来る手段なんか渡したくねーから無理矢理持って来たんだ」
多分それ、あの神的に反逆罪だよね。本気で天界に戻る気が無いのか。
というか、このペンダント、神が欲しがってた物か。すごく便利だとは思ってたけど、実はこれも天界ビックリ・アイテム?
「それさー、俺の欠片を結晶化した石なんだよな。それを持ってこっちに来たってことは、今、天界には俺は欠片も残ってねーってことで。俺はリュカの許可なく天界には行けねーの」
「石を返せば?」
「行けねーよ。俺、リュカの使役獣のハネオだから」
「石と何の関係が?」
謎かけのようなハネオの言い回しに要領を得ずにいると、バードが分かりやすく解説してくれた。
「ハネオの今の主は天界の神ではなくリュカなんだよ。ハネオは地上に送られる時から、あの神を見捨てる気でいたんだろうね。その石を渡すのは天使にとって命を懸けた忠誠の証。ハネオは命をリュカに預けたいんだ。命を預けた主の許可なく遠くになんて行けないでしょう?」
バードの解説を聞きながら、ハネオはウンウンと頷いている。やっぱりこの二人、仲が良い。
「ま、そうゆーワケだから。俺を前の飼い主の所に返そうなんて思うなよ?」
「あの神には私も思うところがあるし、そんなに嫌なら返さない」
「おー。末永くよろしくなー」
いちいち軽いが、ハネオは情報通だし有能だ。
このままずっと私の使役獣でいてくれたなら、正直かなり助かる。
ハネオをしっかりウチの子にするためにも、気は進まないが、やはり天界の神とは一度話さないとならないようだ。




