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相場師を抱いた女  作者: 成瀬あおい
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終焉とはじまり

「10月3日、株価操縦の疑いで自称個人投資家の山内孝雄氏が逮捕されました。山内氏は過去にも株価操縦で逮捕されて有罪判決を受けており、今回は二度目の逮捕です。金融庁によると──」

 

 女子アナウンサーが無機質な声色で読み上げるそのニュースを、ぼんやりと眺めながらぬるくなった缶チューハイを飲み干した。やっと終わった。これで、ひとくぎり。彼の呪縛から解放される。長く心を縛っていた男と金への欲望が、風呂の栓を抜いたようにするすると消えていくのがわかった。私は自由だ。


 私が彼に会ったのは今から3年前の夏だった。35歳で独身で、仕事は片田舎の工場の生産ライン。学歴はあるけど職歴がなくて、将来に漠然とした、どころではない不安しか感じていなかったときだ。

 

 大学を卒業してから新卒で入った商社をたった半年で退職。辞めた理由はいろいろあったけど、とにかく面倒だったから。先輩への気遣い、脳みそを一切使わない誰でもできる仕事、無駄に笑顔でいなければならない男性社会。全部が私の理想の社会人生活からかけ離れていた。

 

 退職してからは、定職につかずにアルバイトをしたり派遣社員をしたり、気が赴くままにふらふら働いたり働かなかったり。そんな生活がいつまでも続くと思っていたわけではない。でもそのうち結婚でもして普通の人生を歩むものだと思っていた。

 

 でも、当時の私は誰とも結婚せずに一人で工場の片隅で、単純作業をし続けていた。自業自得で自己責任。ちゃんとした仕事、行き方を選ばなかった私のせい。だから誰も責めずに、ただだらだらと生きているだけだった。


「どうにかしなきゃ」


 そう思いながらも、仕事が終わってからスキルアップに励むわけでも婚活に勤しむわけでもなく家で缶チューハイを飲みながら、漫画を読んだりゲームをしたり。そうやってだらだらとTwitterをなんとなく眺めているときに、「彼」がいた。

 

彼は、私のだらだらぼんやりした人生と同じようにのほほんとしたTwitterのタイムラインで異彩を放っていた。

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