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68話 貴族と言う生き物

 

 俺は声がする方を振り返ると、声の主である執事風の初老の男が、改めて声をかけてきた。


「以前、ここで珍しい食べ物を売っていたであろう。失礼にもいつの間にか店を閉めてどこかに消えおって、それを私の主が所望しておる。ついてまいるが良い。」


 え?えっ?


「えっと、失礼ですが、あなた様はどこのどなた様でしょうか?」


 すると、執事風の初老の男は顔をしかめ口を開く。


「これだから商人風情が。セルジュ・シモーニ子爵様の執事であるグラウコである。わかったら早う着いて参れ。」


 見た目通り執事だったか。

 俺がどうしようか悩んでいる間に、サナは食事を食べ終えていた。

 全力で断りたい所だが、断るとめんどくさい事になりそうな予感もあり、ユリに耳打ちして聞いてみても同じような予想だった。


「何をしておるっ!!早く着いて参れ!!」


 俺はイラっとしながらも、渋々着いていく事にした。


 グラウコが馬車に乗り込んだので、俺達も乗ろうとした所、


「無礼者、商人風情が子爵様の馬車に乗ろうとは。走って着いて参れ!」


 流石にイラっとしたので、


「来てほしいって言われたから行こうと思っていましたけど、別に俺達行かなくてもいいんです。俺達は商人でもありますけど、冒険者でもあるんです。基本的は貴族様でも冒険者の拘束は不可でしたよね?俺達を探していたんだとすれば、俺達を見つけたのに、連れてくることが出来なかったんじゃ、貴方に不利益がかかるんじゃないですか?」


 グラウコは苦虫を潰した様な顔をして、


「貴様!子爵様のお誘いを断るつもりかっ!無礼な!二度はないぞ、走って着いて参れ!」


 俺は、くるりと回れ右をして馬車と反対方向へ歩き出した。


「待て!!断れば、この街で生活等できんぞ!」


「行かないとは言っていませんよ?貴方の態度を見ると行きたくないのです。このまま俺達が着いて行かなかったら、俺達を連れてくる事が出来なかった貴方の立場が悪くなるのではないですか?周りに目撃者もたくさんいますよ?」


 そう、この騒ぎを聞きつけて、周りには数十人の野次馬が俺達を見てヒソヒソとしている。


 グラウコは「グゥ」と呟くと、


「わかった。態度を改めよう。馬車に乗りたまえ。屋敷に案内する。」


 凄く嫌な顔をしながらも、馬車へ乗せてくれた。


 俺達3人は、馬車に乗り込もうとした。


「待て!そこの2人は奴隷であろう?さすがに奴隷を馬車に乗せる事は出来ん!」


「では、良いです。行きませんから。」


 改めて、周れ右をすると、馬車から離れて行った。


 しかし、


「ユーキ様。奴隷が貴族様の馬車に乗る事はありえません。グラウコ様の仰る事は間違っておりませんので、お気にしないでください。私達は走って着いて参ります。」


 ユリが俺にそう言うと、


「では、2人が屋敷に行ったとして、子爵様の屋敷に入る事は当然…?」


「無理な話だ。」


 やはりそうか、ユリを見ても頷いている。


 俺は、ユリにサナと一緒に家に戻っているように伝えると、


「万が一の場合がございますので、それではユーキ様をお守りする事が出来ません。どうかお気になさらずに連れていってください。」


 と、耳打ちした。


 嫌な話だが、貴族を無碍にするのは得策ではない。

 2人を危険に晒すのはしたくないのだが、ユリの目は真剣だ。


「わかりました。2人は走って着いてくるようにさせます。」


「では、向かうとする。」


 威張った態度は少しましになったグラウコに着いて、馬車に乗ると早速進みだした。


 馬車の中では、特に話す事もなく10分程で屋敷に到着した。


 かなり立派な屋敷に入ると、ユリとサナは詰所にて待機となった。


 応接室の様な部屋に通されたまま2時間程放置された後、不意に扉が開く。


「ガハハハハ!よく来たな。貴様が珍しい食べ物を屋台なるもので売っていた商人か。折角、儂が食べて進ぜようと思うたのに、いつの間にかいなくなっておったから、そこのグラウコに探させておったんじゃ。苦しゅうないぞ、今すぐ作るが良い。」


 クリスといいこいつといい、貴族って生き物はだいたいこんなキャラなのかな。

 ボンヌ伯爵は珍しいのかもしれないな。

 ボンヌ伯爵との繋がりは大事にしておく必要があるかもしれない。


 特に名乗らなかったので、鑑定してみると


 名前 セルジュ・シモーニ

 年齢 48歳

 身長 165㎝

 体重 88㎏

 種族 人族

 職業 子爵

 スキル 美食家 自己中


 美食家っていいな。

 しかし、自己中とか…、嫌な予感しかしない。


「これは、シモーニ子爵様、この度はお招き頂き恐悦至極でございます。先日私が販売していました、ポテトフライとホットケーキの事でございますか?」


「おおそうじゃ、それじゃそれじゃ。早う作るが良いぞ。この儂が庶民の食べ物を食べてやるのじゃ、光栄な事じゃろう。」


 自分で言うな。

 しかし、大人な俺は大人な対応。


「ハッ!それでは、料理場をお貸頂いてもよろしいでしょうか?」


「あぁ、好きにせい。グラウコ案内をしておけ。」


 グラウコに調理場に案内してもらうと、そこにはシモーニ子爵の料理人達が待ち構えていた。


「あのぅ。申し訳ございませんが調理法はお見せできませんので、少しだけ一人にして頂いてもよろしいでしょうか。」


 料理人の中でも年配の方が、


「申し訳ございませんが、主人より調理法を覚えるように申し付かっておりますので。」


 ぬぅ。


「え~っと、これは、私しか調理法を知らないので教えたくないのですが。」


 流石に料理人には、俺の気持ちがわかるらしいのだが、子爵の命令は絶対だ。


「ユーキさん、申し訳ありません。お気持ちはわかるのですが、我々も子爵の命令ですので…。」


 流石に料理人には、俺の気持ちがわかるらしいのだが、子爵の命令は絶対だ。

 しかし、タダで金の生る木を渡すわけにはいかないので、


「それでは、一旦出て行ってもらってから、子爵様に食べて頂いている間に調理法について交渉してからお話してから教えるという事でいかがでしょうか。」


 料理人達は、諦めた顔をして出て行ってくれた。

 話の筋が通っている事は理解しているようだったが、諦めの表情が少し気にかかる。


 ストックもあるのだが、これを出すとアイテムボックスがばれる可能性があるし、どこから見られているかわからないため、アイテムボックスは使用せずにアイテムポーチから材料を取り出してから、道具は子爵の料理場のものをお借りする。


 30分程で、ポテトフライとホットケーキを3人前ずつ作り上げると、子爵の元に持って行った。


「シモーニ子爵様、お待たせいたしました。ポテトフライとホットケーキでございます。」


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