4話 初めてスキル「調味料」
昨夜は、ボロボロのホーンラビットの毛皮をかけて眠ったんだが、意外と快適だった。
ちょっと臭かったけど、そこは諦めが肝心。
起きると、小太郎が毛皮の上で寝ており、非常に癒される。
早速、モフモフすると、耳をペタンと垂らして気持ち良さそうな顔をする小太郎。
転生が1人じゃなくて本当に良かった。
リグルドは、既に起きていて馬車から出てきた。
「ユーキさん、おはようございます。昨夜は良くお眠りになれましたか?」
「リグルドさん、おはようございます。お陰様でグッスリ眠れました。」
実際、昨日は1日緊張していたためか、直ぐに寝入ってしまった。
昨日スキルを見ていて思ったんだが、まだスキルを使ってないんだよね。
折角だから、取り敢えず使ってみようと頭のなかである事を考えてみる。
「塩、塩、塩」
すると、アイテムボックスの一覧に塩が3本と表示されるがわかった。
アイテムボックスから出してみると、小さなキレイな青いビンに入った塩が現れた。
100g位だろうか。
入れ物があるのは助かるなぁとか考えながら、本当に料理するには丁度良いサイズで、料理人になれってことかなとか考えていると、リグルドが朝ごはんの準備を始めていた。
「リグルドさん、良ければホーンラビットの肉を使って下さい。それと、アイテムボックスに塩が入っていたので、これも使って下さい。」
「えぇ!塩を持っていたんですか?凄いですね。うわっ、これは純度の高い精製塩ですね、かなり高級品ですよ?良いのですか?」
まぁ、ただだからとか言えないので
「昨日からお世話になっていますし、是非使って下さい。」
「ありがとうございます。それでは、少しだけスープに入れさせて貰いますね。」
取り敢えず、好きに使ってもらえる様に腕肉1本と塩を1瓶渡しておいた。
「はーい、皆さん。朝ごはんが準備出来ましたよー。お三方、昨夜は見張りありがとうございました。」
「私からも、お礼を言わせて下さい。ありがとうございました。」
リグルドに合わせてそう言うと、朝ごはんのホーンラビットの肉と野菜の具だくさんスープを頂いた。
ホーンラビットの肉の旨味と塩味がよく効いたスープは美味で、全員オカワリするほどだった。
「こいつわうめぇな。久しぶりの塩味は最高だぜ!」
ガロンに続いて3人も頷いている。
あっ、ちなみに小太郎には、昨日は肉と、野菜スープの野菜、今日は肉野菜スープの具をあげている。
それから、ホーンラビットの骨を与えると夢中で長いことガジガジやっていた。
野営で塩を使った料理が出るのは、ある程度余裕のある依頼くらいだとガロンが言っていた。
お昼は野営せずに、干し肉やパンを齧りながら歩くそうだ。
それを聞いて、
「良ければ、今晩のご飯は、私に作らせてもらえませんか?少しだけお野菜を分けていただければですが。」
すると、リグルドが
「宜しいのですか?実は私、あまり料理が得意ではないので、助かります。」
と言って、早速野菜の在庫を見せてもらった。
ジャガイモみたいなジャガや玉ねぎみたいなターマ、トマトみたいなトーマを少しわけてもらった。
早速野営を片付けて歩き出す一向、今晩のご飯に何を作るか考えながら歩き出した。
ガロンが御者席に座り、馬を操作し、残り2人がリグルドと馬車に乗り込み中から左右を警戒するようだ。
俺は、ガロンと御者席に乗せてもらった。
ガロンに近場の村の話を聞いてみると、『フール』と言う名前らしい。
10年程前に岩塩の鉱山が見つかって出来た比較的新しい村で、岩塩を掘る作業者と販売する人やそれらの人向けの宿やお店で50人程の村だそうだ。
今回リグルドは、フールの岩塩を買い付けに行く途中で、商人に成り立てのリグルドは、近場の特産品を街に売る事で少しずつ稼いで店舗を持つための資金を貯めている所との事。
そこで、馬車の中に移動してリグルドに話を聞いてみた。
フールの岩塩は、フールで購入すると10000リル/kg程度で、街に持っていけば、20000リル/kg程度で売れるらしい。
この馬車に乗せられる上限は300kg程度だが、あまり欲張ると馬車の速度が落ちるため、現実的な所は200kg程度となる。単純な利益は200万リル/200kgだが、ガロン達への報酬や馬の餌代や水等の食料等を差し引くと利益は150万リル/200kg程度との事。
運べれば運ぶほど利益が増えるため、アイテムボックスが商人に欲しがられる理由だろう。
まぁ、供給が増えすぎると岩塩の値段が下がるから、一概には言えないだろうが。
そこまで話した所で、
「ユーキさん、フールに着いた後はどうするんですか?」
リグルドの考えが少し解った所で、
「まだ、何をするかは決まってないんですが、簡単な装備もほしいので、少しお金を稼ぎたいんです。それから大きな街に移動したいですね。」
漠然と、料理人になるのが最も良いとは思っているものの、それにはある程度大きな街でやる必要がある事と、折角の異世界なので、冒険したい気持ちが入り乱れている所だった。
冒険者をして、ある程度お金を貯めてから料理人をするか、料理人をしてある程度お金を貯めて装備を整えてから冒険者か思案していた。