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20話 エルフの里

 1年と少し前の事。


 この国『ハーベルク』の東に位置する『迷いの森』の奥地あるエルフの里に異変があった。

 エルフの里は、元々外部との国交をほとんどしておらず、ひっそりと暮らしていた。


 迷いの森にエルフの里があるのではと、噂は前々からたっていたが、迷いの森にはハイエルフの結界が張られており長い間、真実の情報はもたらせられなかった。


 しかし、結界を張ったハイエルフは数年前に亡くなり、少しずつ結界の効果が弱まっていた。


 ハイエルフは、エルフの中でも数十年に1人程度しか生まれず、迷いの森のエルフの里には、16年前に生まれたハイエルフのユリの誕生に歓喜したばかりだ。


 ハイエルフも直ぐに結界が張れる訳ではなく、精霊と契約し、数年かけて結界を習得する。

 1年前のユリは、まだ結界を張ることが出来なかった。


 そんな中、迷いの森に迷い込んだ冒険者を、1人のエルフが助けたのが切っ掛けで、エルフの里の存在が明らかになったのだ。


 勿論助けられた冒険者は、口止めをされていたのだが、お酒を飲んで気が大きくなった時にポロっと冒険者仲間に話してしまった。


 エルフの女性は、その容姿と活動期の長さから性奴隷としての需要が高く、弓術の腕前から男女問わず傭兵としての需要も高い。


 また、エルフが作る霊薬は珍しい効果のものが多く、商業的価値も高い事から昔から人間から狙われ続けられていた。


 それらの過去があり、大陸に数ヶ所あると言われるエルフの里のほとんどは、外部との接触を控えてきたのだ。


 ともあれ、存在が知られたエルフの里は、欲に駈られたとある貴族の部隊によって攻められ、弱っていた結界が崩壊。


 迷いの森のエルフの里は壊滅した。


 その里のエルフのほとんどは、違法奴隷として売られ、その利益は数十億リルとも言われている。


 しかし、巧妙に実態を隠した貴族が咎められた形跡はなく、噂の域を出なかった。


「私が、結界さえ張ることが出来ていれば…。」


 深碧の瞳に涙をためながら、気丈に声を絞り出す。


 すると、今度はサモンが話し出した。


「実は10年程前に、私もユリ様の一族に助けられたのです。」


 サモンは当時20代で奴隷商人としての実績をあげようと躍起になっていた。

 エルフの里を見つけ、エルフの霊薬が扱えれば、自分の奴隷商人としての価値が高まると邪な考えをし、借金をして護衛の冒険者を雇い、迷いの森に侵入した。


 しかし、最終的には護衛とはハグレ、1人さ迷っている所を1人のエルフに助けられた。

 その時から、少しだけエルフの里と交易を行い、少しずつ利益を増やし、信頼を回復していたらしい。


 そんな中の里への襲撃である。


 サモンは街でその噂を聴くと、直ぐにエルフの里へ急いだ。


 族長に襲撃の事を伝えた所、直ぐに行動を開始してくれた。

 翌朝には、森に攻めてきた貴族の部隊が森を焼き払い始めると、族長は太刀打ちする事が困難である事を悟った。


 直ぐに里のエルフを少しでも逃がすべく、講和の使者として貴族の元に向かった後、帰らぬ人となった。


 族長の息子と里の男達は、果敢に戦ったが、所詮は多勢に無勢。

 ほとんどは討ち取られ、逃げ遅れた約半数の女達は捕まり奴隷となった。


 サモンは、ユリの兄にユリを頼まれ、ユリと5人の女エルフを連れて逃げた。


 しかし、道中貴族の兵士の1人に見つかってしまう。

 5人の女エルフを見逃してもらうため、ユリは兵士に賄賂として自身の奴隷落ちを提案した。


 兵士は喜ぶが、ユリを連れていくと貴族に奪われる事を危惧し、サモンが奴隷商人と言うこともあり、その場で奴隷契約をする事にした。


 ただし、サモンの奴隷として、サモンは奴隷代として3000万リルを兵士に渡すというものだ。


 サモンも店を立ち上げたばかりで金がなく、3000万リルなんて、とてもではないが払えない。

 なんとか奴隷として売れてからの支払いとする契約を結び、今に至る。

 この1年でなんとかお金を貯めてきたが、1000万リルしかなく、買い戻す為にはどうしても後2000万リルが足りない状況だった。


 サモンとしては、ユリを自分で買い戻す事を考えていた為、これまでユリの購入を客に打診しなかった事を今になって後悔していた。


 クリスに買われるくらいなら、まだマシなお方がいらっしゃったはずと…。


 そこで、若いが貴族に縛り少ない冒険者風で、アイテムポーチを持てる程の財力と腰の低い態度、何より時間がない事から、俺に一縷の望みを託して、ユリを紹介したのだと言う。


 思いの外、精霊を感じる事が出来るという程の才気があり、ユリの評価も高く、この状況では、最高の結果だったとの事。


何とか、20話まで到達しました!

ブックマークや評価ありがとうございます。

これからも、よろしくお願いします!

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