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WILD CHARENGER Act.1

 幅広のホワイトボードには計画(プロジェクト)の進行度合い及び障害になるであろう事案が書かれていた。


「良い知らせと悪い知らせがある」


 部屋の中にいる十余名の中でまとめ役の鏡子サンが口を開く。

 鏡子サンというのは一言で言い表せば美人のやり手で仕事はいわゆるなんでも屋(フィクサー)というヤツだ。

 この場にいる十余名のプロフェッショナルの雇用主であり、わたしもその十余名の末端に入る。

 そしてこれが重要なのだがわたしの保護者(・・・)でもある。

 

「良い知らせは、先の各部門の報告からまだ計画(プロジェクト)の脅威は多いものの進行は順調であると断定できる事、これに関して言えば各人の努力の賜物であるとわたしは思う」

「悪い知らせは、計画(プロジェクト)が順調すぎる事を理由に依頼主(クライアント)が経費の大幅削減を決定した。つまり我々の取り分が少なくなるという事だな」


 鏡子サンは新たに依頼主の名前をボードに書いた。


「さて、ここで我々が取るべき戦術を諸君らに問いたい」


 わたしは周りを見回した、後ろから挙手があった。

 後ろで壁に寄りかかっているモジャモジャことマツケンが手を挙げた。

 マツケンの仕事は調達係だ、基本的には機材専門なのだがどんなコネがあるのかわからないが本当に何でも調達してくる、わたしの推薦入学枠を調達してきた時は目がでるほどに驚いた。

 仕事はちゃんとやってくれるし私生活の仕事と関係のない相談にも乗ってくれる。少なくとも悪党ではあるかもしれないが悪い人間ではない。

 ただあんな無気力そうななナリをしてかなりのスケベだ、美人のお客さんなんか口説いたり、女性はピンナップ撮影のサービスをしてる、しかもそれが問題になるどころか何故か結構人気なのだ。

 それでわたしの表向きの仕事場「デッカーズ」のボス。


「簡単さ、僕たちの有用性を再認識させればいい」


「ふむ」


「僕が考えるに一番効果的だと思うのは依頼主(クライアント)が無視できない程度のスキャンダルを俺達が解決する。スキャンダルもこっちで上げる、ようはマッチポンプだな。そこら辺の裏工作はアンタの十八番だろ?」

「って訳でノルマは達成したし裏方専門の僕に出来る事はなさそうだから、そろそろ表に戻ろ……」


 皆の視線がマツケンに集中する。


「あー……その、皆さんの視線が冷たいくて真面目に仕事してる僕が全然仕事してないみたいで悲しいのでもう一つばかり提言を、皆さん今ある脅威ばかりに気を取られてるみたいだけど新たに現れる脅威等にも注目してはと皆さんに提案したい。最近はエアガンの銃撃事件(・・・・)も多発しているみたいだしね」


 マツケンはそう言うと部屋を後にした。

 そこからは計画(プロジェクト)の行動方針等の共有が行われた。


――――――――――――――――――――――――


 最近は足繁くデッカーズに通っている、PRIMARYよりも雰囲気が僕に合っている気がするし何より重要なのが家から歩いて行けるという事だ、サカヤ商店も家から歩いていけるが商店街は大学の反対側で少し億劫な距離だしPRIMARYは家からはクルマか自転車の距離だ。

 店員さんは例の松岡さんの他に大柄なスキンヘッドの黒人の店員さんと筋肉質でロン毛の白人の店員さんともう1人女性がいるらしいが会った事がない。

 デッカーズはお店の他に撮影ブース、無料開放している作業室兼休憩所、休憩所から見えるガンレンジがある。そしてそれ以外の細々としたものの1つに掲示板がある。


 ハンドガンコンペティション


 そのチラシを見たのはそこだった。

 チラシを読むと個人戦と団体戦の2種目での総合点を競う交流会みたいなものらしい。

 気になった部分はハンドガンオンリー、開催場所がここという事、エントリー料が保険料込み1500円+税とお手頃なのも第一回なのも気に入った。


「すいません」


 僕は顔見知りになった松岡さんを呼ぶ。


「これ参加したいんですけど」


「少々お待ちを」


 松岡さんはレジからクリップボードを持ってきた。


「ここ、ここそれとここに必要事項書いて」

「あと保険の規約の都合上免許か学生証のコピーを取らせてもらいます」


 松岡さんに学生証を預けてからクリップボードを受け取り必要事項を書いた、氏名住所、連絡先等だ、あとこのテの書類にしては珍しくニックネーム(自由)、所属校・所属団体(自由)と所属チーム等(自由)があったのでそこも何となく書いておく。


「レギュレーションとして法定基準の0.989J以下のパワーと連発機能が使える6ミリのハンドガンとゴーグルを用意してね、ブローバック、フィクスド、電動、銀玉、リボルバー、オート不問、外部ソースとストック禁止、サプレッサーやドットサイト、スコープ、ロングマガジン、スピードローダー等は自由、ホルスターは使わないよ。あと弾はこっち持ちだけどパワーソースは用意してね」


 松岡さんはにこやかに説明を行ってくれた。


「ああ、それと大会用に一枚写真を撮っても?」


「いいですよ」


 松岡さんは一眼レフを持ち撮影ブースで僕の写真を撮ろうとする。


「これ、もしかしてカッコいいほうがいい感じですか?」


「あー、うん。そうだね」


「すぐ戻ってきます」


 自転車で家へ向かい赤いジャケットとタクティカルマスターを片手にデッカーズへ戻り写真を取る。


――――――――――――――――――――――――


 定例会議が終わりわたしは店のエプロンを履いて仕事に就こうとしていた、作戦会議をしていた部屋の真下が仕事場だ。そもそもこの店は計画(プロジェクト)の為の拠点でもあるのだ。外階段を降りて店の正面から入っていく。赤いジャケットでキメたお客さんと入れ替わりに店に入る。

 計画(プロジェクト)というのは末端のさらに末端のわたしが知らされている内容だとサバゲーによる地域振興及び関連企業への利益誘導だそうだ、それ以外にもなにかあるらしいが詳しくは聞かされていないし興味も持たないようにしている。

 計画(プロジェクト)隷下でのわたしの役目は情報収集兼雑用といったところだ。

 独白は終わりにして仕事に入る。


「希ーいるかー?」


 店長(マツケン)がわたしを探してた。


「まーたセクハラか何かやらかしてお客さん怒らせたんっスか?」


「これ知り合いか?」


 店長が一枚のコピーを見せてくれた。

 それはウチの大学の学生証のコピーだ。数学科一年 吾妻円。間抜け面したその顔写真はちょっとだけ好みの顔つきなのとウチの大学の数学科といえば秀才三学科の一つに数えられる。ちなみにわたしは教育学部でしかも裏口入学という低辺中の低辺だ。

 吾妻という名前に記憶はないがもしかしたら知り合いかもしれないので私物(という名前の支給品)スマホのアドレス帳を調べる。あ行にはいなかった。

 ツイッターやインスタも調べたがそれっぽいヤツはいなかった。


「サバゲやってるからって全員知り合いって訳でもないんスよね。なんか特徴は?」


「うーん、言っていいのかな?」


「さっさと言う」


「じゃあ言うわ、悲しいほど背が小さい。んで俺はやらねーけどDQNとかに目ェつけられるタイプだな」


 「悲しいほど背が小さい」というフレーズで何処かで見た記憶が蘇りそうだったか、知り合いに背が小さいのはそこそこいるけど悲しいほどという頭言葉が付くレベルの人間は多分いない。


「へー、マツケンってイジメやらんのね」


「んな生産性のないことやらんでよろしい」


「んで結局コイツ何なのさ」


「来週やるハンドガンコンペに参加してきた」


「へー」


「それともう一つ、そのコンペにオマエも出ろ」


「えー、奇数(・・)になっちゃったんスか?」


「残念ながらそういう事だ」


「リサーバーなんてセルゲイかナイジェルにでも任せればいいじゃんかよー」


「セルゲイとナイジェルは厳ついからリサーバーとして入れたら客が怖がる、特に今回は初回だし小学生(・・・)いるしな。俺は採点しなきゃならん、つまり空いてるのはおまえだけだ」


「新しいバイト入れましょうよー、店とフィールド両方の管理をたった4人って無理っスよー」


「人員の配分は俺の領分だ」

「ちなみにやらなきゃ制服明日からバニーガールだから、丁度いいサイズの在庫もあるしな」


「是非ともやらせていただきます!」


 あの際どいハイレグ接客と比べたら1日タダで遊べる方がよっぽどマシだ。


「オマエ含めて丁度10名になったわ」


「結構多いっスね」


「そうだな、ちなみに半数以上がオマエのガッコだ」

「じゃあ仕事行ってこい」


「ういー、なんか優先してやる事ってあります?」


「バックヤードに仕上げたガン(M4)が二つあるからポストイット付けてる奴をサンプル用に出しておいてあとは店番、結束タイで固定を忘れるなよ。俺はその間客注の塗装とセッティング仕上げるから用があったら呼べよ」


「あい」


 わたしは仕事に入った、不満が無いと言えば嘘にはなるが同時に今の生活に安心している自分もいた。

 叶わぬ夢とわかっているが、どうかこの穏やかな日常がずっと続いてくれますように。


――――――――――――――――――――――――


 日曜、朝早くに出る。集合は九時なのだが最近は早朝に起きる癖がついてしまった。

 ちゃんと首に爺ちゃんのお守りと荷物の中身があるのを確認してそして夜勤明けで起きてるであろう姉貴に見つからないように朝食も食べずにこっそりと家を出る。

 何処かでご飯を食べるとして結構暇がある。

 道中にある街道沿いにあるラーメン屋が24時間営業だった記憶なのでそこに入る。

 この時間にしては珍しく、長距離トラックや機材を満載したワゴンはなく早そうなバイクが1台だけ止まってた。色はつや消しブラック、所々カスタマイズされていてまるでバイク版のワイルド・スピードか或いは刑事ドラマに出てくるおしゃれな方のトラック泥棒みたいな雰囲気を醸し出していた。

 バイクに見とれながら店の中に入ろうとしたら一瞬、弾力がありつつも柔らかく人肌に近しいなにかが顔に埋もれた。

 丁度目の部分に革製の何かが当たっている、意外と柔らかい。

 ほぼ間違いなく誰かとぶつかった、それでころんでしまった。


「大丈夫?」


 次に目にしたのは短髪の赤毛の女性の眼鏡越しの陰鬱そうな顔だ。

 彼女はしゃがんで僕の対応をする。


「どこか痛いところは?」


「特に無いです」


「怪我してる……」


 転んだ時についた掌を擦りむいて微妙に血が滲んでた。

 彼女は慌ててリュックサックから水とカットバンを出した。


「ちょっと染みるけど、H2Oによる浸透圧によるものだから安心して……」


「あ、はい」


 とりあえずしみるけどそれ以外は無害である事は理解できた。

 それよりも彼女の冷たい雰囲気と冷たい手で僕の治療を行っているという事に何かを感じたのか凄くゾクゾクとする、なによりも彼女が美人で作業がテキパキとしていたのとレザースーツを着ていてボディラインがハッキリしていた事がそれを後押しする。


「終わった……ごめんね」


 彼女は僕に謝ると残っていた黒いバイクに跨って道に出た。

 僕は店に入って少し悩んでから券売機に千円札を入れて味噌ラーメンフルセットのスイッチを押した。

そしてその券をカウンターの上に置く。

 ふと入り口の方を見てぶつかった時の事を思い出す、僕はバイクに見とれていてぶつかってしまった、どことぶつかった?

 彼女と真正面同士でぶつかった。

 そこでようやく僕が何をやらかしたのかを理解した、おっぱいとぶつかって跳ね返されたのだ。

 その事に関して若干興奮している自分に呆れ恥じる。

 嫌悪していても仕方ないので味噌ラーメンを食べる。ただただ心が痛かった。

 傷心のままデッカーズに到着した。


「「あ」」


 見覚えのあるバイクと見覚えのある彼女がそこにいた。

 他にも2台のバイクが並んでいて2人のライダーが彼女と談笑していた。

 背が高く襟付きのレザージャケット越しからでも筋肉質な身体がハッキリわかる男性と、茶色いブルゾンを着込んだジャッキー・チェンに似た眼鏡の男性がいて襟付きレザージャケットの男性の側には黒くゴツくボディに赤い目の黒い犬が描かれている大型バイク、ジャッキー・チェンの側には銀色の「KATANA」と書かれたバイクが置いてあった。


「お、泉美ちゃんの知り合い?」


「知り合いというか……」

「そこで会ったというか……」


「何だよー、相変わらず泉美ちゃんは人見知りが激しいなー」

「俺たちバイクチーム兼サバゲーチームのブラック・レインズ、よろしくな! 俺津々井康隆、こっちの美人が泉美ちゃん、んでそっちのジャッキー・チェンが椎名くん」


「ジャッキーじゃないよ、椎名実(しいなまこと)だよ」


 吹替版ジャッキーの声質に笑ってしまった。

 津々井さんと椎名さんと僕は握手を交わす。

 僕はブラック・レインというワードでピンと来た。

 リドリー・スコット監督制作、マイケル・ダグラスと高倉健ダブル主役出演の映画だ。


「もしかして……松田優作の?」


 ただブラック・レインはその3名よりも有名な人物が2名出演している。

 片方はそう、かの松田優作だ。

 松田優作は悪役の若手ヤクザの佐藤役として出演していて、ブラック・レインズのチーム名も劇中のバイクシーンに肖ったものであろう。

 ブラック・レインやリドリー・スコット、マイケル・ダグラス、高倉健を知らずとも松田優作を知らない人間というのは経験上そのどれよりも少ない。多分心ちゃんも知ってると思う。

 そして松田優作よりもブラック・レインで一般的な認知度がありそうなのはガッツ石松なのだ。端役ではあるがシーンをみれば「あ、ガッツ石松だ」って誰もが納得する。


「ほう……ブラック・レインですか……」


 僕たちは一斉に振り返った、そこにはトレーナーを着た小太りの七三分けの黒縁メガネの男が不敵な笑みを浮かべながら立っていた。

 それはあからさまにオタクであった。いや、僕もオタクだからあまり他人のことは言えないし服装がダサい以外は特に悪い印象はない。


「あ、拙者武者小路(むしゃのこうじ)左音篤(さねあつ)と申します」


「あ、吾妻円です」


「拙者としてはスコット兄弟の作品を一つ挙げるならブラック・レインよりもドミノを推したいですな」


「キーナ・ライトレイの?」


「キーナ嬢のあの荒々しくも女性的な美しさも忘れないアクションは中々の見ものですな、とくに初仕事のストリップシーンには素直に……ああ、失礼こういう場で言うべき表現ではないですな」

「あとはブレードランナー……ブラック・レインの話をするにはあれを抜かしてはいけませんぞ」


「リドリー・スコット言うたらNUMBERSだべ」


 皆で振り返るとそこには金髪のソフトモヒカンでレターマンジャケットを着ている長身の目付きの鋭い男がいた。左耳に連なってるピアスが眩しい。


「何奴」


「そういうオメーはなんだよ?」


「金髪DQNに名乗る名前など持ち合わせてはないですが一応名乗るなら武者小路左音篤ですぞ」


「結局名乗ってんじゃねーか、それに……ゴニョゴニョ」


「?」


「よく聞こえませんなぁ……」


 武者小路さんが悪い顔をする。


「「映画とかアニメとか好きだから」って言ってた」


 泉美さんがボソッと説明した。


「お仲間ですな」


「な、仲間じゃねーし、竹内だし!」


 あ、地味に話噛み合ってないなー。


「あ! 吾妻さん」


 振り返るとそこには鈴羽ちゃんがいた、前回と打って変わりミリタリーキャップとゴツいキャスター付きのトランクを引きずっている以外はボーイッシュだが割と女の子らしい格好、デニムのスカートにふともも辺りまであるスパッツと女の子らしいシャツとアウターに黒いミリタリーキャップを被っている。ミリタリーキャップには「10禁専用」と書かれたパッチが貼られている。


「鈴羽ちゃんもコンペ出場するの?」


「はい、サバゲークラスタとしてはここは譲れないであります!」


 鈴羽ちゃんはにこやかに答える。


「皆さんおまたせしましたー」


 何処かで聞いたけど思い出せない声に呼ばれた。


「開場するのでフィールドの中に入っちゃって下さいー」


 振り返ると僕ぐらいの年齢の女性の店員さんがやって来た。

 エプロンのネームプレートには「後藤ちゃん」と書かれていて、茶髪で短くてどこかいい匂いのしそうな子だ。

 あ、あの子何処かで見たことあるぞ。


「「あ」」

「MP5の!」

「追い出された!」


 思い出した、サバゲー部の新歓で隣りにいたMP5の子だ。


「お知り合いであります?」


「同じ大学」


「サバゲやってて良かったー、新歓の時のアレ酷かったっスからね」


 彼女の笑顔に少し心が休まる。

 彼女に率いられ皆で店に入った。

 前回と違い着替え用スペースとホワイトボードが置かれている。


「とりあえず各自チェックインするので名前呼ばれたら返事の方お願いしまっス」


 各自名前を呼ばれる。大体は本名なのだが「むしゃむしゃ」と「チャン・コーウィン」はニックネームであった。

 ここにいない人物は「神林朝平」と「真壁まりや」の2名だけであった。


「皆様、第一回デッカーズハンドガンコンペにお越しいただき誠にありがとうございます。今回審判役を務めさせていただきます松岡です、今回は対決というよりもあくまで自己への挑戦として頑張ってください。後藤さんパワーチェックお願いね」


「準備終わった方から順次チェックしちゃってください。あと使用銃の名前の方もお願いします」


 皆がガンを取り出す、僕はタクティカルマスター、鈴羽ちゃんはSIGPRO、椎名さんは予想通りグロッグの17、ここまでは比較的想定の範囲内だった。

 小川さんはグリップカスタムの施されたマカロフをハードケースから出し、津々井さんが革ホルスターにしまってある長銃身のレッドホークとケースを開け薬莢とスピードローダーを確認し、その隣で竹内さんが梱包材と新聞紙と油紙をほどきステアーSPP出し動作確認を行い、その向かいでは武者小路さんが工具箱とマットとガンケースを出し腕時計を見えるように机に置いて、大型化されたセーフティやラバーグリップでカスタムが施されたレースガン風黒いガバメントガバメントとマガジンのカスタムのセッティングを行っていた。

 準備が終わった人から後藤さんの所に並んでパワーチェックを済ませる。


「むしゃむしゃさんパワーギリギリッスねー、0.909とかあまり見ませんよー」


「コンディションによってマガジンとバレル、ガスを変えてますからな、今日は比較的には良くない気候ですな、気圧が高い割にこの時期にしては気温が低いですからな、バルブやパッキンへの負担を考えると好ましくないですな」


 すごい意識高いなー、高い系じゃなくて純粋に高い。

 それを横目に眺めていると休憩室に入る敷居で誰かが転んだ。足元に落ちて滑った眼鏡を拾う。


「あ、すいません!」


 彼女は僕から眼鏡を受け取る。彼女はズボンに黒いハイネックセーターという格好で髪の色は黒く短く眼鏡も含め格好自体は地味なのだがよく見ると目鼻立ちが整っていて美人だ。


「すいません、真壁です……その……遅刻……しました?」


「まだ大丈夫っスよ、落ち着いてから弾速チェックに入ってください」


 真壁と名乗った彼女は黒い樹脂製のケースからG18を出した、スライドを外すと僕のガスガンとは明らかに違う構造になっていてそこに板状のなにかをはめる、マガジンも異形でスティック型の物を使っている。

 彼女の銃を横目に眺めていると入り口から茶髪の若い男が入ってきた。一言で言えば軽薄そうな感じではあるのだが同時に人好きのするような雰囲気も持っている、服装自体はジャケットとTシャツとジーパンとシンプルなものなのだが体型と顔がいいのでちょっとしたファッション誌の表紙かスーパースターのオフと言ってもいいぐらいに見える。


「サセーン、神林現着しやしたー。ハンドガンコンペの現場ってここですよね?」


 鈍色に光るアタッシュケースを僕の向かい側に置いて、ケースからグロッグを出す。椎名さんや真壁さんと同じグロッグでスライドが長くそれに全体的に手が加えられている。マルイのグロッグ34と思われる。

フレームにはバイドつまりスライドで手を怪我しないようにビーバーテイルが増設されている以外全くのノーマルに近いがマガジンエクステがついたマガジンを使用しているみたいだ。

 そしてようやく役者が全員揃ったらしい。

今週のエアガン



電動ブローバック SIGPRO PS2340

メーカー:東京マルイ


 数少ない10歳以上用でセミオートが撃てるハンドガンシリーズの一つ。

 マガジンは割り箸マガジン(BB弾のみ入れる細いタイプ)だがガスブローバックやエアーコッキングに無いラインナップがあったり、独自にグリップセフティを加えていたりとかゆいところに手が届く仕様となっている。

 ちなみに鈴羽ちゃんが持ってきたのはM4とは違い純正のノーマルである。



ステアーSPP

メーカー:KSC


 ステアーSPPはオーストリアのステアー社が製造していたSMGステアーTMPの兄弟機種でSPPはそのハンドガン仕様である。正式名称はスペシャルパーポスピストル。

 セミオートオンリーのSPPにTMP同様のフルオート機能を加えたKSCステアーSPPはフルオートガスブローバックの得意である事を生かした遊びのある仕様である。

 現在は製造中止のカタログ落ちだがステアーTMPの後継機種MP9とTM9がラインナップにある、ただ流通が不安定であり実店舗で探すとなると苦労する可能性がある。

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