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Come Out And Play Act.1

丸:ゲームを行うので今週の日曜朝7:00に大学駐車場にに集合

  銃は不要だが装備は一式持ってくること、田所くんはお車で来ること

  ガソリン代などはわたしが支払うのでよろしくね


 部長からのチャットは大抵深夜から早朝にかけて来る。不思議と暇な時にしか来ない。

 サバイバルゲームを行うのに銃は不要という部分が気になったので「丸部長オチ部」で議題に上がった。

 「丸部長オチ部」とはシイちゃんの提案で部長を除く他四人でこっそりとSNSでグループを作った。

 作った理由というのはあまりにも部長が謎すぎるからだ。そもそも前回の授業(・・)の前までずっと学部生だと思っていたのだが少なくとも講師資格を持っているらしい、それとヨウちゃん曰くカスタムパーツの製造元の代表であるとのことだ、写真は無いものの名前が出てる雑誌を皆で読んだりもしたし何よりパーツを作ってるところを実際に見たのだがからそれは事実であろう。

 ただ特に気になるのはそういった経歴よりも家族だ、あんな人を産んだ父親と母親が想像できないしあの人の兄弟もいたとするならどんな人なのか見当もつかない、と僕とシイちゃんとヨウちゃんの間では意見が一致している。


偕成シイ(私物垢):銃不要ってどういうことなの?

You:レンタルガンでも借りるんじゃない? 何借りるか知りたいけど教えてくれなさそう

吾妻:朝7時って結構早いですね

You:フィールド自体が遠い事とかも多いから割りと普通の時間よ


 他にもSNSで色々な話をして明日の用意をしてから眠った。

 7時という事は朝の弱い僕は5時ちょっとに起きなければならないのだ。

 布団に入ってる間にここしばらくの事を回想していった。

 サバゲー部に入れなくて、部長の仕事を手伝って、そこでシイちゃん、タマちゃん、ヨウちゃんに出会った。

 一瞬、ほんの一瞬だけ邪な考えが過ぎって、ハーレムなんじゃないかと思ったけどそんな都合のいい事が僕に起こるわけがないと考え直した。

 余計に眠れなくなったので、最近日課にしている筋トレをしはじめた。

 プランクと逆プランクという筋トレ方法で肘を直角にして身体を真っ直ぐにしてにして手首から肘までとつま先だけの4点だけで身体を支えて60秒その状態を維持してから30秒休むを2セットと、その後に 仰向けになり肘を直角にして身体を真っ直ぐにして手首から肘までと踵の身体を支えて60秒その状態を維持してから30秒休むを2セットをやる。理想は1日20セット、最低1日10セット。

 サバイバルゲームを行うにあたって当面のトレーニングだ、鍛えない事には強くはなれないのだ。

 何故強くなりたいかって? そりゃ強いほうがカッコイイからだ。

 他にもタクティカルマスターを使ってのイメージトレーニングもやっているがこれはなるべく家に人、具体的に別宅を使ってる姉ちゃんと爺ちゃんがいない時にやりたい。姉ちゃんに見つかって死ぬほど笑われて恥ずかしかったからだ。

 そうしてからまた眠りについた。


――――――――――――――――――――――――


 朝、食事を摂って風呂に入って支度をしてから玄関で靴を履いていた。

 時刻にして6時半より少し前、この時間に出れば大学には7時前に到着できる。


「こんな時間に何処行くんだ?」


 少しドキッとしてから後ろを振り返った。そこには寝間着姿の爺ちゃんがいた。


「遊びに行くんだ」


 とりあえず嘘が無く無難な答えを返した。


「おう、ちょいと待っとれ。どうせお前さんの事だから時間に余裕があるだろ?」


 爺ちゃんは部屋に戻って何かを探してるらしい、2分位してから玄関に戻ってきた。


「持ってけ」


 爺ちゃんは手に古いがそこそこ綺麗なお守りを握っていた。


「何、これ?」


 僕は爺ちゃんに聞く。


「武運長久のお守りだ。入学祝いにくれてやるつもりだったが渡しそびれててな」


「ありがとう」


「武運の他にも恋愛運、勝負事とかにも効くぞ」


 一瞬、ほんの一瞬だけその解説にドキッとしてしまった。

 慌ててお守りを受け取って首にかけてしまった。


「いってきます」


「行ってこい」


 外に出て朝の澄んだ空気を呑みこんだ。空は高く遠くそれは部長と会ったあの日みたいだったがあの日と違って拒絶が無く希望と興奮に満ちている。ただ、それだけの違いだ。


――――――――――――――――――――――――


 大学の駐車場でヨウちゃんのベンツが停まっていたので窓をノックしようとしたら窓が開いた、既に助手席にはシイちゃん、後部座席にはタマちゃんと何故か店長ちゃんも乗っていた。

 何故かみんないそげ、いそげとジェスチャーしているように見えた。

 回り込んで乗り込もうとしたら後ろに車の気配がして振り返るとそこに白い大型のワゴン車が滑り込むように入ってきた、運転席には部長が座っていて乗っていない僕を見ると嬉しそうにしていた。


「やあ少年、こっち乗りなさいよ。楽しいぞー」


 何が楽しいのかわからないがとりあえずワゴン車の助手席に乗る事にした。

 ワゴン車の後部は全て荷室らしく、窓ガラスの代わりにパネルが貼られているタイプの商用車仕様で、今時珍しい一列目に3人座れるタイプのシートだ。

 乗った瞬間にSNSに通信が入ったみたいだ。


偕成シイ(私物垢):R.I.P.


 何なのかわからなかったのでとりあえず放置した、しかしそれが何を意味するのか僕は30秒後に理解する。


――――――――――――――――――――――――


 吾妻くんは犠牲になったのだ……

 道交法と効率を両立した運転……その犠牲にな……

 わたし達は目の前をすごい変態的な動きで走り回るワゴン車を辛うじて追跡できていた。

 特にすごいのはアレだけ変態的な動きなのに見てる限りでは何一つ道交法をやぶっておらず形骸化してる様なものまできちっと守ってる上に安全だ、去年の夏に免許を取得したからわかる。

 あとタマちゃんが持ってきてくれて出発前に分けてくれた謎チョイスのお菓子が地味に有能なのとすごい気遣い出来る子なんだと再認識した。おいしい。

 1人分ずつ袋に小分けしてあり、甘いの甘くないのが混在していてかといって見てくれはともかく食べてみればハズレと言える様な物は一つもない。

 特にぶどうのゼリーと茶色い小さい飴が美味しい。わたしはヨウちゃんに断ってからヨウちゃんの分のお菓子の封を破いてヨウちゃんのお口に入れてあげる。


「はい」


「ん」


「ふたりともお茶いります?」


「一口」


「おねがいなの」


 ヨウちゃんが飲みたがってたのでタマちゃんは水筒からお茶を紙コップに入れて渡した。わたしは片方をドリンクホルダーに入れた。


「そういえば店長ちゃんは今日何処で誰と遊ぶか知ってる?」


 ヨウちゃんがドリンクホルダーのお茶を飲みながら店長ちゃんに聞く。


「ある程度までは特定できるけどそのある程度もけっこうな数だよ」

「先生は公になってるフィールドはともかく個人でやってるところも結構知ってるし、わたしが知らないところも知ってるかもしれないし、もしかしたら県外かもしれないよ」


 クルマが揺れてわたしの背中にに店長ちゃんがぶつかり「あ痛っ」と可愛らしい声で叫んで頭を抱える。タマちゃんが店長ちゃんの頭を撫でる。


「そういえば店長ちゃんは、部長とどういう関係なの?」


 わたしは店長ちゃんに聞いた。


「えーと、えーと……話すと長くなるけど……とりあえずは師弟関係かな?」


「師弟関係かー」


 ヨウちゃんがそれに答える。


「確かにあの人なんとなく仙人っぽいトコあるよね、サバゲー仙人的な?」


「あ、わかる」

「ところでタマちゃんはなんでサバゲーはじめたの?」


「……ジャイゴ……いえ、田舎で家の手伝いで害獣駆除をやっててその時にエアガンを持ってまして、それで興味を持って。それと従弟(・・)がこっちでやってるのでそれの付き合い程度に……」


「あ、ついたみたい。吾妻くんグロッキー状態」


 ヨウちゃんがタマちゃんの話を遮ってクルマを止める。

 場所は地元民は旧区画と呼んでいる場所だ、今年この街に来たばかりだから事情はわからないし興味も大してないが再開発するには何かしらの問題があるらしく市内の中心部でありながら再開発が進んでいない地区だ。ぶっちゃけここならマンションから大学に行くよりもずっと近かった。

 ワゴンから円くんがフラフラと自販機の方へ向かい小銭を落としながらジュースを買っていた。

 目の前にあるのはどん詰まりにあるやや錆びかけた2メーターはある鉄門と工事現場みたいな鉄製の囲いが覆ってある謎の施設だ、不気味さを感じるが同時に得体の知れないワクワク感も覚える。

 部長はワゴン車を手前にある空き地に停めたので、ヨウちゃんもそれに倣ってベンツを横に停めた。

 ワゴン車を降りた部長は空き地にあるプレハブの鍵を回して開ける。多分休憩室かなにかだと思う。


「シイちゃん、ちょっと吾妻くん見てきてよ。わたし達は装備下ろすから。店長ちゃん、タマちゃんはプレハブへの搬入手伝って」


 わたしは車を降りてグロッキー状態に円くんのところへ向かった。

 顔が青くグロッキー状態なのだが辛うじて戻してない辺りに円くんの根性と意地を感じた。


『ようこそ挑戦者諸君。面通しと行きたいがちょっとしたお遊びを用意しておいた』


 老朽化したであろうスピーカーからガリガリ音と音声が流れる。声の主は何か女の子っぽい。


『フラッグ戦の亜種としてキミ達には奥にある作戦室まで来てもらう、最も我が精鋭が道中で待ち受けているがね、ちゃんと作戦室には看板を掲げておいてあるから安心してくれたまえ」

『作戦開始時間はキリが良いから8時にしよう、それまでに準備をしておいてくれ』


「準備しよう」


 吾妻くんの表情が替わった、それに一瞬だがキュンとしてしまった。

 吾妻くんは目鼻立ちはそこそこどころかかなり整っている、そういうのがいいという人もいると思うだろうが身長が小さいのがそれを台無しにしてるレベルで整っている。

 わたし達はそれぞれ用意してきたウェアを着込む、ヨウちゃんは灰色のデジタルカモBDU(ヨウちゃんに聞いた)、タマちゃんはいつの間にか身体に合わせて裾上げしたつなぎ、店長ちゃんは緑色の戦闘服、円くんはスペシャルレッド(命名わたし)、わたしはトレーナーとジーパンとポンチョ、部長はいつもどおりの白衣といつもの木のサンダルではなく安全靴であった。


「ところでフラッグ戦について今一度確認しておきたいんだけど、その辺り田所くんが皆に説明してもらえるかな?」


 部長がヨウちゃんを指名した。


「いわゆるフラッグ戦は敵陣にある旗を抜いたほうが勝ちというゲームね。基本戦術としてはガンガン攻めるのが戦術として安定するわ」

「それと対になるのが殲滅戦、これは相手全員ヒット取って敗退させたら勝ちという感じ。こっちは守りを固めると勝ちやすくなるわね」

「上の2つのメジャールールにメディック戦、ゾンビ戦、複数フラッグ戦、バトルロワイヤル、アイテム回収等が加わる感じね、ここら辺はマイナールールといった感じね」

「それに加えて禁止事項や制限事項や許可事項、ハンドガン戦、セミオート戦、モスカート禁止、電動ガン禁止、10歳以上限定、シールドあり、ナイフタッチ……いわゆる白兵攻撃ね、まぁそういうレギュレーションがあるわね」


「A+をあげよう」


「ありがとうございます」


「じゃあ全員理解しただろうから装備配るよー」


 部長はワゴン車の荷台にあるダンボールを開けた。質素なダンボールを開封するとSMGが一つと長めのマガジン2つが現れた。


「ヤティ・マティックですね」


 円くんは即座に銃の名前を言い当てた。


「今回はこれのテストも兼ねてるんだ、君たち(・・・)のチームはこれね」


「これガス、電動?」


 ヨウちゃんが部長に聞いた。


「ガスも電動も昔あったからエアコキにしてみた」


 中にある説明書を手にとって読むとフォアグリップが折りたたみ式でそれでコッキングできるらしい、説明書自体は手書き原本の印刷らしく部長が書いたらしいSDキャラの女の子が解説をしてくれている、かわいい。

 持ってみると思ってたよりも重いが結構しっかりとしていてすごい頼りがいのある銃だ。

 下にある展開式のフォアグリップを展開してそれをコッキングして使うらしい。

 プレハブで装備を整えてから最後の仕上げにはいる、降ろした髪の毛を左右に結ってから頬を叩く。そうしないと偕成シイはぼっちで無口で根暗な女の子のままである。少なくともヒロインじゃない。

 服の支度は整ったので次は銃の支度に入った、部長とヨウちゃんと店長ちゃんがBB弾込め用の機材を持っていたので皆で使わせて貰った、マガジン二本に込めるのは慣れてないと辛い作業だった。

 他の皆も準備が整ったみたいだが部長は支度をしていなかった。


「部長は支度しないの?」


「わたしはいいんだ。みんなで愉しんでおいで、あと5分切ったぞ。支度が終わった少年少女達は全員で円形になってゴーグルを確認」


わたしは吾妻くんのゴーグルを確認した、マスクはバッチリキマっていた。


「おっけーなの」


「時間だ、一言言っておくが死んでもいいが怪我と油断(・・)のない様に」


「はいなの」


「じゃあ、いってらっしゃい」


 あの時わたし達は何故6人目(・・・)いないのかまだ気づいていなかった。

今週のエアガン



MARUヤティマティック(試作)

メーカー:MARU


 実銃のヤティマティックはフィンランド製のSMGで折りたたみ式のフォアグリップがコッキングハンドルを兼ねていて銃身とボルトに角度がついている野心的な設計の銃であるが野心的故に公的機関に採用されなかった銃である。

 エアガンではWAが電動でガスバルブを叩く方式を、サードパーティがKSCのガスブローバックM11を組み込んだキットを過去に発売していた。

 MARUヤティマティックはフォアグリップを前後することによりデザイン性を全く崩さず速射性を高める事に成功した。

 今回出てきたのはテスト用の試作品であり製品版には改良を追加する予定である。

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