Welcome to The Jungle Act.2
話がサクサク進むことに関しては悪くは感じないただ同時に話が都合よく進みすぎている気もする。
昨日わたしとタマちゃんがサバゲー部を辞めて、今日たまたま車に乗ってきていて授業に穴のある日だったという事、考えすぎかもしれないが誰かの掌の上で踊らされている様な感じだ。
運命という物は信じない、あるのは偶然と結果そこから生まれる必然だ。
ただこれに関してはどうしても運命を感じてしまう。
そうだ、似たような事は前に一度だけあった。
サバイバルゲームを知った時だ。
あの時は本当に自分がどうにかなってしまいそうだった、結局どうにかなってしまったのでサバゲーマーとしてのわたし田所ヨウがいるし、先輩をはじめとして多くの出会いがあった。
それでいいのだ。
偶然の産物が運命であれば誰かの掌の上で転がされるも運命、終わりよければすべてよし。
わたしは愛車のゲレンデヴァーゲンのハンドルを握りながら思考を巡らせていた。
「ベンツカッコいいね」
「ヨウちゃんカッコイイのー」
何だかんだで後ろの2人は喜んでもらえた、逆にタマちゃんとシイちゃんに挟まれている吾妻くんはずっと下を向いたままであった。乗り物酔いかなと思ったのだが丸さんが「アレ、女の子に耐性ないタイプ」と耳打ちしてくれた。
「そこ右、次は踏切超えて歩道橋見えたら左」
「そこ入って」
「ここ……ですか?」
「そう、ここ」
わたしは丸さんに言われたとおりにそこにゲレンデヴァーゲンを入れる。ホームセンターの駐車場だ。
「先ずはここで必要なのざっくり揃えよう」
丸さんは助手席から飛び降りる様に降りた、後ろの3人とわたしも降りて続く。
必要な物といわれてもここにはアメリカと違って銃は置いてない。
丸さんは店内に入り工具売り場や資材売り場には目もくれず突き進みある場所でとまった。
作業服売り場。
軍手ぐらいははあるとは予想はいたがブーツからグラブからと随分と種類が多いし、日用で使えそうな物や辛うじてサバゲーで使えそうな迷彩服もあった。
「少年少女達、とりあえず気に入った靴、手袋、上下の服を選んできてね。ここはわたしが持とう、1人1万位までね」
「吾妻くんはこっち来るのー」
シイちゃんが吾妻くんを肩を抱えて連れて行ってしまった。
たしかに服の種類は多いがサバゲー向きかと言われれば微妙なところだ。
「不満そうな田所くんに言っておくんだけどわたしは基本的に初心者には初期装備しか渡さないクチでね、キミの思ってるようなタクティカルギアみたいなのは、やっぱり欲しいと思った時に自分の力で手に入れるべきだと思うんだ」
「何故わかったんです?」
心の中を読まれたと思い一瞬ドキッとした。
「サバゲーって結局は流儀とかこだわりの世界じゃないか。だから装備も自分の流儀やこだわりに従って集めるのが長く続けるコツだし、車を見てる限りキミはこだわりが強いみたいたいだしね。それに実のことを言うとわたしはこう見えても過去の人間だから今の流行りとかよく判らないしね。その代わり安く、楽にあげる方法なら幾らでも知ってる。まぁその時が来たらキミに任せようと思う。だから今回はわたしに任せてもらいたい、いいね」
そもそもわたしが選ぶものではないしわたしがお金を出すわけではないので文句をつけようとは思っていなかったしそれにかなり話の判る人みたいだ。サバゲー部のバカどもに丸さんの爪の垢を飲ませてやりたいぐらいだ。
「さてと……田所くんに聞くんだが初心者が最低限抑えるべきメンテナンス工具は?」
ドライバー 基本的にメカニック系ホビーには必須
六角レンチ エアガンのパーツを組んだりセッティングを施したりするのにミリ・インチ共に必須
バレルロッド バレル(銃身)のクリーニングに必要
シリコンスプレー メカボックス等の機械部品の潤滑剤として必要
ダグトテープ 部品の欠落とかの仮止めに使える
「ドライバー、六角レンチ、バレルロッド、シリコンスプレー、あとダクトテープ」
「次には。サバイバルゲームに必要な安全装備と言えば?」
ゴーグル 目の保護のために必要
ヘッドギア 頭部の保護のために必要
マスク 口部の保護のために必要
エルボーパッド 転倒対策と射撃の時に使える
ニーパッド 転倒対策と射撃の時に使える
ゲームマーカー チーム分けの際に必要、基本的に赤と黄色
冷えた飲み物 熱中症対策と水分補給によるパフォーマンス向上に有用
飴 熱中症対策と糖分補給によるパフォーマンス向上に有用
弁当 栄養補給によるパフォーマンス向上に有用
「ゴーグル、ヘッドギア、マスク、エルボーパッド、ニーパッド、ゲームマーカー、冷えた飲み物、飴、昼食」
「そうそう、そういう生理系も大切だよね」
「そういうわけで一緒に見て回ろうよ、色々お話しとか聞きたいしね」
「はい」
「ところでどんな銃持ってるのかな」
少し考えてから回答を返す。
「メインで使ってるのはM4のカスタムですかね」
「見せてもらっても?」
わたしは丸さんにスマホの写真を見せた。
純正のM4にメタルレシーバーと大容量バッテリーの出し入れが楽なアンクルドグリップと一体型のカスタムハンドガード、ショートバレル化、416Cタイプのストックを装着しホロサイトがついているガンである。
丸さんはしばらく写真を眺めてからわたしをまじまじと見る。
「結構バランスとか考えてるね」
「先輩に銃の性能はバランスだと教えてもらいましたし」
「たしかにそのとおりだ、昔はバランスなんて全く考えてなかったからね、ストック側が重い分には問題はないがフロントが重いと銃や本人に変なクセがつくしね、他には?」
「それ以外だとL96A1を狙撃用に室内用にタボール、ハンドガンはPX4とかあとはコレクションです」
わたしはクローゼットの写真を丸さんに見せた、ママとパパには呆れられるが丸さんは熱心に見ている。
「丸さんはどんな銃とか持ってるんですか?」
わたしは丸さんに質問を返した。
「持ってる……と、いうか。作った銃とかなら色々」
「例えば?」
「それはその内にでもプレゼンしよう。キミもわたしの顧客になるやもしれないしね?」
他にも色々な話をしながらホームセンターを回った。
丸さんは聞き上手なのだがあまり自分の話をしなかった、逆に口下手なわたしが珍しく多弁になっているぐらいだ。
あとは工具コーナーで2人でチェーンソーについての話に花を咲かせたりしていた。
時間が経ちウエアを選んでいた面々と合流した。
まあホームセンターなので似たり寄ったりの格好だと思っていたが意外と個性が出ていた、シイちゃんはODのポンチョと編み上げ靴、タマちゃんはくるぶしを完全に覆うスニーカーとクラブ、それに若干袖あまり、裾あまりのつなぎを選んでいた。シイちゃんとタマちゃんはやり遂げた様なドヤ顔をしていた。
「に、しては最後の1人が見当たらないようだが?」
「ふっふっふっ、見て驚くの! 吾妻くーん」
商品棚の奥から吾妻くんが現れた。
吾妻くんは不安そうな顔をしていた。
吾妻くんの格好は一言でいうと凄くキマっていた、赤と黒のツートンジャケットに、暗めの色合いのジーンズ、ブーツとグラブとエルボー、ニーはジャケットの黒の部分に合わせた色味で、それだけで映画やゲームの中の主役といっても過言ではない決まりっぷりだった。
「偕成さんと加藤さんは何か解説とかあるかな?」
「シイちゃん達の格好については特には、だってこれドラクエでいう所の「ぬののふく」なの、一番使い勝手のいいのを選んだの」
「わたしは使いやすさやしっくりを起点に選びました、大丈夫ですか?」
シイちゃんとタマちゃんは丸さんの意を汲めていたみたいだ。
「それで吾妻くんの服装は吾妻くんが赤が好きだから赤と黒を基調として上から下まで、顔の露出は最低限にするために襟の大きいジャケットを選んだの!」
「それでいて靴と手袋と膝当て、肘当てはつけ心地としっくりを重点に選びました」
「いやーこの店でここまでやれるとは思ってなかったよ、拍手」
皆でレジに向かい、3人のウエアとキムワイプという箱型のなにかを皆で車に運んだ。
「次はガンショップだね、とりあえず田所くんの行きつけの店回ってみよう」
いつもの行きつけの店PRIMARYに私たちは来ていた。白を基調とした広い店に、ガン、ウェア、ギア、パーツ、ツール等が置かれている店で集会所やガンレンジ、2階には狭めのインドアフィールドや休憩室等もある。わたしのお気に入りの店だ。
かなり広い店で品揃えも非常に多岐に渡っていて在庫も豊富で国内のメーカーのガンなら絶版でなければ大抵はあるし海外製も豊富だ。
「結構色々ありますね」
「すごいの」
「すごいです」
吾妻くん達は目を輝かせている。
「喜んでるところ申し訳ないけど今日は銃は買わないよ、買うのはマーカーだけね」
「えっ?」
全体を見ていたシイちゃんが振り返る。
「今日はあくまで装備を買いに来ただけだし、もう買っちゃったからここは見学だけだよ」
「それともここにいる全員の財布を合わせてあそこにあるPSG-1を5つ買おうか? 楽しいぞー狙撃チームは」
PSG-1を5つはマズい……
「ただ自分の財布から出すというのであれば吝かではない」
「すいません、あそこにある奴見せて下さいなのー」
丸さんの説明から間髪入れずににシイちゃんは店員さんに商品を見せてもらうように頼んでいたシイちゃんは行動が早いなぁ……
とりあえずPSG-1は回避できたので良しとしよう。
「うん。ああいう風に直感で買っていくのが正しいあり方だね、田所くんもそう思うだろう?」
「直感で買っていくって衝動買いなんじゃ……」
シイちゃんの買っているのはショップオリジナルのカスタムという名目の総改修を施した海外製のXM-8だ、海外製特有のガワはいいがモーターからバレルまでの内部がダメダメなのを国産のパーツで総改修を施したカスタムだ。ちなみに中古のリビルド品らしい。
更には初期付属のダットサイトをホロサイトに変えてとエクステンドマウントで嵩上げして丁度いい高さにしてある、お値段29.800円也、そこにバッテリーやハードガンケース、追加のマガジンを入れている。
何故かその隣のレジでタマちゃんがKTWのイサカM37のソードオフを買っていた。
吾妻くんは銃にはめをくれず装備のコーナーをうろついていた。
「ちょっと2人の荷物運ぶの手伝うから鍵借りるよ、吾妻くんと適当に回っててほしいな」
丸さんはシイちゃんの荷物の小さい方を抱えてタマちゃんと3人で出ていった。
わたしは吾妻くんを探した、ホルスターの売り場にいた。吾妻くんは安いナイロンのホルスターと高い革製のショルダーホルスターを比べて悩んでいた。
ホルスターの種類は大体4パターン、四種類で分類できる。
ショルダー 脇に装着するタイプ 基本的に値段は高い
レッグ 太ももの横に装着するタイプ 値段は千差万別、ギアと共存しやすいのでゲームでは主流
ヒップ 腰回りに装着するタイプ 基本的に値段は安い
アンクルド 足首に装着するタイプ ショップでもゲームでもあまり見ない
ナイロン(安価) ナイロンホルスターの安価な物、フニャフニャで使いづらいがガンの保護用としては一応有用。値段は1500円位
ナイロン ナイロンホルスターの一般的な物、幅広い種類と汎用性をほこる。値段は3500~5000円位
レザー 革ホルスター、ゲームやってない人が基本的に想像するタイプのホルスター。基本的に茶色か黒のみであり基本的に汎用性は低い。価格はホルスター使われている革の大きさに左右される。値段は5000~15000円位
ガイデックス(プラスティック) ゲームでは主流派、汎用性は皆無だが安定した保持力と抜きやすさがいい、値段は2000~20000円
「やっぱりガイデックスのがいいよね、銃何使ってるの?」
「タクティカルマスターです」
「ベレッタかー」
「これか、これで悩んでるんですけど……」
吾妻くんはナイロンの安価なヒップホルスター(1400円)とレザーのマガジンポーチがついているタイプのショルダーホルスター(12000円)で悩んでいるみたいだった。
「ただ問題があって」
「どっちも買う余裕が無いんです」
「あー」
確かに急だったし、クレジットカードとか持ってるようには見えない。
「まぁ、今回は様子見って事でね。せっかくだからガンも見ていこうよ」
吾妻くんは物惜しそうにホルスターを置きショーウィンドウのトランペットを見る少年の様な目つきでガンを見て回っていた。
「仮に買えるとしたら何か欲しいのある?」
「多すぎて分からないです……体格的にはSMGかカービン、ブルパップ辺りがいいと思ってます」
持ち合わせが無いのだから無理に選ぶ必要もない。
欲しい時に好きな物を買えばいいのだ。
「そろそろ帰ろう」
いつの間にか丸さんが後ろに立っていた。
「次、どこ行くんです?」
「一旦今日は解散って事で学校に、わたしのオススメの店は後日連れて行こう」
「何、君たちもあの子の事は気にいるさ」
わたしはハンドルを握ってゲレンデヴァーゲンを大学へ向けて走らせた。丸さんはしきりに携帯電話でメールをしている。
ふとわたしは気になった事を聞いた。
「実はあそこ知ってました?」
「うん」
PRIMARYにも丸さんが作ったパーツは置いてあったし丸さん位の人がPRIMARYレベルのショップを知らないわけがないのだ。
「それについて弁明としてキミがどういう系統のゲーマーなのか知りたかったからなのだよ」
「系統って?」
「説明しづらいんだけど、お店毎に特徴というか独特な雰囲気があるじゃないか? それによって来る客層というのも結構偏ってくるんだ。この辺りで一番特徴的なのは新日本兵器廠だね」
新日本兵器廠というのはヒストリカル系、つまりは一次大戦、二次大戦からベトナム戦争、イラク戦争等の装備や銃器を専門に取り扱っているショップで看板として稼働するケネディジープが置いてあるお店だ、2度ぐらい見に行ったが装備はそこそこ良かったがウェアやガンは値段はそんなに安くなく、オプションパーツやガンケース等が壊滅的だったので以降は用がなければ行かないショップだ。ただ好きな人には本当に好きなショップだ。
「他にもこの当たりだとダックホビー、すみそに屋、中古専門だとバルクリユースとかかな?」
「ダックホビーは年齢層高め、すみそに屋はガンマニア、バルクリユースは店の性質上メンテや修理が得意っていう風に客層というのも結構色々とあるのだよ」
「それで言ったらPRIMARYはどうなるんです?」
「純粋なゲーマーが多いって所かな、ダックホビーよりは年齢層若め、すみそに屋ほどガンに偏重せず、バルクリユース程自前での工作はせず、新日本銃器廠より間口が広い」
たしかにそのとおりだ、あそこの商品や空気は良くも悪くもサバゲーマー向きな感じだ。
「まぁ評判や客層の良くないところじゃなくてよかったよ」
それには1箇所だけ心当たりがある。
「丸さんが行こうとしてる店は?」
「そのどれでもないとだけ言っておこう」
丸さんは携帯電話でメールを送信し続けていた。
今週のエアガン
ショルダーホルスター
メーカー:イーストA、他
ショルダーの名の通り、肩でストラップをかけて腋の下で銃を保持するホルスター。刑事ドラマやギャング映画とかに出てくるアレ。
ただサバイバルゲームにおいては非主流派である、理由はサバゲーにジャケットを着込む必要が無いのとミリタリーウェアと相性が良くないからである。
ちなみに作画の際に間違えがちだが右利き用は左脇下にホルスターがあり反対側にマグポーチなり何なりがある。試しに右手で右腋に触ってみよう!
ヒップホルスター
メーカー:イーストA、他
ヒップの名の通り、腰元のベルトに差して銃を保持するホルスター。基本的に民間や制服警察等の軽装備な武装要員の主流。もちろんミリタリーウェアと合わせてもいい。
銃口が下向きなナチュラルレイク、上下逆さまにしまい抜きやすさとコンシールドキャリーを重点としたバックレイク等がある。
レッグホルスター
メーカー:イーストA、他
レッグの名の通り、太もも部分で銃が保持するホルスター。基本的に軍用であるが意外とコスプレ系装備と相性がいい……気がする。
また意外な利点としてショルダーやヒップと違いサプレッサー装備銃や大型オートや中型ぐらいのSMG等にも対応しているホルスターが多い、予備マグが入る余裕がある等ニッチ部位特有故に広く大きく使える利点もある。
アンクルホルスター
メーカー:イーストA、他
最後の守り神、アンクルの名の通り足首部分に隠す銃である。大型拳銃はともかくとし中型拳銃も収納はほぼ無理でや小型拳銃でも体格によっては不格好になる場合がある致命的な欠点がある。
が、独自規格マイクロモスカート全盛期の現在においては最後の守り神としてそこに突っ込んでおくのもいいだろう。暴発には注意だ!
スリーブガン
メーカー:自作、他
ホルスターが銃を保持する装備であればスリーブガンは銃に保持機能を加えた物である。タクシードライバーのトラヴィスが使っていたアレ。
構造としては小型拳銃を腕の内側から手首まで移動する機構で大体はレールとバネの組み合わせで腕から手首まで移動させる。
また筆者は腕の外側にレッグホルスターをつけて近接攻撃に対応させていた人物も見たことがある。