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On Your Mark Act.2

 僕はサバイバルゲーム研究部会の部室前に立っていた。清掃は行き届いているものの雰囲気の暗さは相変わらずだ、建物含め全体的に古く白熱蛍光灯の陰鬱な白い光が廊下を照らし、地下の踊り場の裏には紙パックの自販機とお菓子がある落下型の自販機、固そうな茶色い合皮のベンチなどが置いてあり壁の掲示板には今年のスタンプが押してある掲示物がある事から僕がタイムワープをしていない事が辛うじてわかる。

 僕はそれを横目にして部室のドアを開ける。


「「あ」」


 そこには上半身が裸で下がボクサーパンツだけの先輩がポカリスエット片手にスケッチブックで何かを書いていた。

 しかもドアの方にプロジェクタースクリーンがあるらしくおっぱいがモロ見えの構図であった。

 先輩は慌てて胸をスケッチブックで隠す。


「すまんな……少年よ、2分ほど待ってくれやしないか?」


「そうします……」


 僕は部室の外で待っていた。

 意外と大きかったんだなとか着痩せするタイプだったんだなとか身体つきが丸っこいな等と色々考えてる内に白衣を着た先輩がドアを開けてくれた。

 ドアの内側には全体的に生活感が溢れているが共有部分と違い陰鬱さを感じない部屋になっていた。

 改めて部屋の内部を見る。手前には柔道畳が4枚敷いてあり、壁際にはオーディオ・ビデオとスクリーン、その手前にはこたつがあり、柔道畳と並ぶように部長が半裸で寝そべっていたソファーがありプロジェクターは天井から丁度いい高さに吊るされていた。柔道畳の向こう側には冷蔵庫とDVDと雑誌がみっちり詰まった本棚が綺麗に整列されて詰まっている、先輩って綺麗好きなのかもしれない。

 そしてよく見ると単管パイプで中2階を作っているらしく棚の裏側には階段がある。

 ソファーの後ろには島型に配置されている作業台とその裏側にも何かスペースがあるらしく壁で区切られている。右側には前回の機械が置かれていて「高圧」とか「危険」等と書かれている警告ボードが貼られている。


「いやぁ見苦しいものを見せてしまって申し訳ない」


 「いえ、そんな事は」と言いかけてから口を閉じスクリーンを見る。

 そこにはスタローンがハンドル片手にヤティマティックというサブマシンガンを連射しているシーンが写っていた。

 僕はそれが「コブラ」の一シーンであるとわかった。

 コブラという映画はシルベスター・スタローン主演のアクション刑事映画で謎のカルト集団に狙われたヒロインを守るというあらすじの映画だ、スタローン主演の中ではランボーやロッキーやエクスペンダブルズ、大脱出と比べるとシリーズ化されてないしデス・レース2000やジャッジ・ドレッドみたいなカルト性やコップ・ランドみたいな共演に恵まれているわけでもないマイナー作品だ。


「コブラ見てたんですか」


「よくわかったね」

「ところで、セガールといえば?」


「沈黙の陰謀か沈黙の断崖」


「ヴァンダム」


「サドンデス」


「トラボルタ」


「ソードフィッシュ」


「デ・ニーロ」


「マラヴィータ」


「カート・ラッセル」


「スネーク・プリスキンシリーズ」


「ステイサム」


「ブリッツ」


「イーストウッド」


「グラン・トリノかサンダーボルト」


「キミ、話せるねぇ」


「ありがとうございます」


「ところで何書いてたんですか?」


 先輩は「これ?」聞いてスケッチブックを裏返した。


「次はこれ作ろうと思って、企画図を書いてた所だ」


「金属インサート」

「ボールベアリング」

「ここは手抜き!」


 ところどころにそういった注釈が書かれているスケッチブックには非常に上手に書かれているヤティマティックのラフスケッチがあった。


「ああ、そうか。埋め合わせだったね」


 先輩は奥にあるカーテンで仕切られた区画に僕を案内してくれた。その中は2レンジ×10メートル位のシューティングレンジであり、奥には両手にアサルトライフルを持ったデフォルメされた先輩風の人型の的、天面には的を動かすためであろうレール、手前には様々なスイッチがある。


「機材集めるからそれ付けて待っててね」


 僕は先輩に無色のゴーグルを渡された。とりあえずゴーグルを付けしばらく待っているとゴーグルをかけた先輩がカゴと箱を二つ持ってきた、カゴには缶と口先に注射器みたいな器具がついているペットボトルに入っているBB弾が入っていた、箱は二種類あり黒いジュラルミン製の頑丈そうなアタッシュケースと黒い紙箱であった、紙箱の方にはベレッタM92が写っていて右下には「TACTICAL MASTER」と書かれていて、アタッシュケースには「KSC M9エリートA1」「トヨダ私物」と書かれたテプラが貼ってある。

 先輩が紙箱を開けるとカスタムされているであろうベレッタが一挺とマガジンが一個あった。

 先輩はマガジンをさかさまにしてボンベを後ろに差し込んだ。

 そうしてから注射器を使ってBB弾をマガジンに込めていく。


「さあ、どうぞ」


 先輩はバレル部分を握って銃を僕に差し出す。グリップを掴み動作の確認をする。なるほど実銃とほぼ同じか。

 そうしてからマガジンも渡してもらいマガジンを装填してからコッキングして弾を装填する。

 上のレールが動きデフォルメされた銃を持った先輩らしきキャラが書かれている紙が横から現れ、レンジの半分およそ5m位の辺りで止まった。

 握ってみると改めて思うのだが本当にズッシリと来た。思っていたよりもずっと重い。

 僕は深呼吸をしてから1発目を撃った。

 弾は上の方に飛んでいった。


「右手は力を抜いて左手で右手をガッチリ支えて……うむ、そう。それで手首ではなくて肩を使って腕全体で照準を合わせるようにして、銃と腕が一体化するように構えて……うむ、よろしい」


 先輩が優しく指導してくれる。

 甘い匂いの吐息を肌で感じ、鳥肌が立ち、下半身が熱くなるのを感じ、脳は思考を緩め、何故かさっきの先輩のおっぱいを思い出す。


「射撃中は心臓や呼吸の動きでブレないように息を止めて」

「そうしてから両方の目でリアサイトを見てフロントサイトと合わせ、丁寧に狙う」

「引き金を引くときは人差し指の先の中央、爪の付け根の裏側を意識して引いて、引くときは肉じゃなくて骨で丁寧に押し込む」


 2発目を撃った。

 2発目は的の先輩の眉間に当たった。


「うむ、基本とはいえ非常にスジがよろしい」


 僕はもう2発連発して撃ち込んだ、どれも驚くほど真っ直ぐに飛ぶ。


「次は片手で撃ってみなさい、先程の体勢から左手を抜くだけでいい」


 僕は片手撃ちを行った

 ややブレるが10発を超えた辺りでコツを掴んだのかそこそこちゃんと当たるようになった。


「じゃあ、次のやり方を教授しよう。まぁ座学程度なんだけどね」


 先輩がそう言った次の瞬間に発砲音が響き渡った、

 先輩の手にはコンデターピストルがいつの間にか握られていた。白衣の下にコンデターピストル用のホルスターが隠されていた。前回のモックアップ銃で未塗装の白いプラと銀色のパーツの銃器だ。

 先輩が何をしたかすぐに理解できた、クイック・ドロー、所謂早撃ちだ。

 映画とかではよく見るが実際に生で見るのは初めてだった。


「うーん、ものの見事に腕が鈍ってるな」


 先輩は笑いながらそう言った、アレで腕が鈍ってるのなら全盛期どれ位か想像がつかない。


「クイック・ドローのコツとしては常に銃を抜けるポジションを構えておく事と、撃つ対象と順番は決めてから抜く事だ」

「たとえば敵が3人いてキミと対峙したとする、2人はキミほどではないが凄腕で1人はヘボだ、2人の内の1人は銃を抜きづらい体勢をとってる、さあどうする?」


 僕は少し考えてから「凄腕、抜きづらい体勢をとっている凄腕、3人目」と答えた。

 理由は銃を抜く速さが早い順だ、3人目や抜きづらい体勢から撃ったら、凄腕に撃たれてしまう。


「A評価をあげよう」


 先輩は拍手しながら説明を続けた。


「クイック・ドローというのは練習と経験を積まないと中々巧く出来ないものだよ。ま、まぁ座学でここまでわかってるなら地味でつまらん話はここまでにしておいて次はと……」


 先輩はもう一挺ベレッタをアタッシュケースから出す。

 先輩はマガジンに弾を装填しニヤけながら喋り続ける。


「お楽しみの二丁拳銃の時間だよぉ」


「はぁ……」


 先輩は「TACTICAL MASTER」のマガジンにも弾を装填する。


「うわキツ的な顔しないでもうちょっとテンション上げようよー。中二臭くても結構使えるんだからさー。例えば面制圧する必要がある時には……」


 先輩は2挺のベレッタを構えて撃った、計4発の銃声が響く。


「こういう風に手数で抑え込む」

「コツとしては左右同時ではなくて反対の手、利き手と交互に撃つ事だ、やってみなさい」


 先輩は2挺のベレッタを渡してくれた、右と左では同じベレッタではあるのだが違うメーカーのエアーガンみたいだ。握った感じが違う気がする。

 左、右、左、右、2巡したあたりから連射を早める。


基本(・・)を意識しなさいよ」


 両方の銃が弾切れになったのを確認してから、先輩は「やってみなさいと」マガジンへの弾込めを僕に教えた。弾込めは難なく出来たのだがガスが失敗して「プシュー」と上へ抜けてしまった。


「コツはボンベとマグの穴の中のピンを一直線にする、ボンベの気体を意識する」


 先輩に教えてもらったとおりにガスを装填する。


「そうしてから温める。そこのドライヤーを使ってもいいけど実戦派のやり方を教えよう」


「マグを握って手の甲を下にしなさい」


 僕は言われたとおりにマグを握る。


「そうしてからわたしが握る」


 先輩の指が僕の手を包み掌でぎゅっと握られる。


「こうすればすぐ温められる」

「まぁ、単純に両手で握ればいいだけだけどこれの本質は他人の手を堂々と触る名目にあるんだ、意中のあの子に使ってみるのもテだな」


 そこはハートの問題な気がする、ノミの心臓の僕には難しい。

 先輩は他人にモノを教えるのが好きなのと、意外と他人との距離をグイグイ押し込みながら近づいてくるタイプなんだなと思った。

 なんとなく高校の時の長岡という後輩を思い出す。ただ彼女よりも遠慮と図々しさは感じない。


「さてとここで講義を行おう、二丁拳銃の利点というのは単純な真実を突くのであれば火力が2倍になるんだ。だが欠点も多い、常に両手が塞がってる状況に追い込まれる、つまり……」


「……つまり」


「マガジンの交換が非常にしづらい。こればかりは練習ではどうしようもないのだよ、残念ながらね。どうしても片方の銃を置かないといけないし時間的にも倍以上かかるのだよ。しかも、厄介な事に二丁拳銃は……」


「……二丁拳銃は」


 先輩が顔を近づける、眼鏡の奥の瞳が悪戯っぽく輝いている。


「そう、二丁拳銃は楽しいのだよ、とてもね。どうしてもバカスカ撃ちたくなるんだ!」


 実の事を言うとあんまりそういう欲求はなかった。


「対策としてはこれ全体的に言えるけど撃つ時と撃たない時のメリハリをつけるかな?」


「はぁ……」


「キミ、映画好きなくせに意外と二丁拳銃とかに対して偏見持ってるでしょ? 自分のスタイルを貫くのは悪いことではないけど、食わず嫌いは良くないよ」


 そもそも二丁拳銃というのは西部開拓時代のガンマンの間で流行った技で当時の銃はリボルバーでなおかつ今みたいにラッチ一つで排莢出来るのではなく、1発、1発排莢して再装填していく時代だったので6発以上撃つのに銃を複数持つ必要がありそれが2丁拳銃に発展した。なので制圧する際の脅しの二丁拳銃は好きでも攻撃の為の二丁拳銃はそんなに好きではない、それする位であれば小型のSMGでも持ち込めばいいし二丁拳銃でバラ撒く位であればそれこそ必中を心掛けるべきだ。

 僕は先輩の指導のもとに二丁拳銃での射撃を3マガジン分行った、ただ先輩の言うとおりに確かに楽しい。


「次は実戦の時間だ」


「実践?」


「そ、実戦(・・)


――――――――――――――――――――――――


 僕と先輩は部室や作業室のある側と反対側の部屋に入る。

 電気を着けると倉庫みたいに棚が複数並んでいて中にはアタッシュケースや様々な形のプラスティック製の折りたたみ式の箱が入っていてそれ以外にはキャビネットがあったり奥の方に作業机があり様々な工具などがある。


「箱の中身はわたしのコレクションだったりするから使用禁止ね」


「ここで何をするんですか?」


「決まっているじゃないか、サバイバルゲーム(・・・・・・・・)だよ」


 先輩がニヤリと笑いながら言った。

 先輩の「サバイバルゲーム」という言葉にときめきを覚えた。

 そうだ、僕がやりたくて渇望していた事だ。


「キリが無いから1回だけね、ルールはわたしはこの1発だけ……」


 先輩はポケットをまさぐり実銃の弾みたいな何かを僕に見せた。


「これは所謂カートという奴でタクティカルマスターでいう所のマガジンみたいな物さ」


 先輩は先ほど撃ったカートを抜き新しいカートを再装填する。


「はい」


「んで、キミは一マガジンでわたしとの決闘を受けてもらう、先に相手に弾を当てたほうが勝ち、じゃあスタート」


 先輩はそう言うと走って部屋の奥へ行き棚の角に消えた。

 僕は慌てて隣の通路へ出た、出た瞬間に先輩がそれを見越して狙いすましていたので慌てて先輩に向けて二発撃ってから隠れる。

 先輩は不利を察すると即座に身体を屈めて反対側に向かった、慌てて追撃しようと思ったがまた同じ事になると推測した。

 先ずはマガジンを抜いてマガジンの隙間から見える弾数を数える、残りは24発だ。

 そして少し落ち着いてから先輩と僕の戦力差を考えてみた。

 先輩は破天荒な事は嫌いではないが戦術的には堅実な方法を取れると思う。

 それはさっきの隣の通路を狙いすましていた事から推測出来るしクイック・ドロー、二丁拳銃などのテクニックから確実に僕よりも戦闘力は上でなおかつ攻撃方法も多彩だ。

 先輩は前に抜き撃ちを披露してくれたが今回はちゃんと狙っていた、先輩の持ち玉は1発のみで外すのは許されない状況下だ。つまり外れたら負け。


「おーい、少年ー動かないならこっちから行くぞー」


 先輩が動くので僕は棚の対角線、先輩の死角を意識しながら避けていく。

 僕は先輩から逃げながら大体の作戦を練った、先輩は射撃も巧いし動きを見るに反応も思っているよりもずっと早い。後ろを取ったとしてもすぐに反応されてしまうだろう。

 戦闘力において先輩に勝てる部分は何もない、ただ銃の性能は天地の差がある。

 そしてふと横を見る、棚の向こうの斜め前を先輩が荷物の隙間から歩くのが見える。見える?


 これだ!


 息を整えてから先輩に今日教わった全てを思い出してから銃を構える。狙う先は棚の隙間から見える先輩だ。

 棚の方に2発続けて撃つ。

 乾いた銃声が響く。それと同時に行動を起こす。

 ただ、先輩には当たらない。あくまで牽制なのでそれでいい。

 先輩は後ろに目があるのかこちらを向く。

 だがそれが僕の戦術で想定の範囲内だ。

 僕は急いで棚の裏まで向かい、姿勢を正してゆっくりと先輩の背中を狙う。

 僕の戦術は後ろから狙って撃つ、それだけだ。

 クイック・ドローの講義の応用で、先輩が自分よりも凄腕であれば抜きづらい体勢に持ち込んで対等にまで先輩に落ちてもらう。

 右手は力を抜いて左手で右手をガッチリ支え、首ではなくて肩を使って腕全体で照準を合わせるようにし、銃と腕が一体化するように構え、両方の目でリアサイトを見てフロントサイトと合わせ、親指の第一関節の中央で引き金を触り、骨で引き金を引く。


「パン、パン、パン」


 映画の中とくらべたらあまりにも抜けた音だし血も硝煙もなかった。

 ただ今僕は主人公になっている。

 ここはハリー・キャラハンがスコルピオを追い詰めた桟橋で。

 ジョン・マクレーンが妻を助けるべく右往左往したナカトミビルで。

 T-800がジョン・コナーを助けるべくショットガンを乱射したショッピングモールの廊下で。

 土井士郎が妹を助けるべく凶銃片手に単身襲撃したヤクザのアジトで。

 リック・オコーネルとジョナサン・カナハンがアメリカ人達と銃を突きつけ合ったハムナプトラの遺跡で。

 ユーリ・オルロフがはじめて銃撃戦を感じたブライトンビーチの高級ロシア料理の店で。

 ジャン・ヴィランを止めるべくエクスペンダブルズが急襲した東欧の小さな空港で。

 そして大学のとある校舎のとある部屋だ。


 しばらくの静寂の後、先輩は膝から倒れた。

 僕は驚いて先輩の元へ向かう。


「大丈夫ですか?」


「キミの勝ちだな」


 先輩はゆっくりと起き上がり、床に座り込む。


「しかし荷物の隙間から攻撃されるとは思っていなかった、中々考えたものだね」


「ありがとうございます」

「ところでなんで先輩は倒れたんですか?」


「だってその方がキミもわたしも愉しいからだよ」


 たしかに倒れた瞬間に達成感を感じた。

 それは先輩を倒したからなのかそれともヒーローとなったからなのかはわからなかった。


「サバゲーマーたるもの、勝ち負けや装備や友情と共に死に方も愉しむべきなのだよ。どうせやっていれば嫌というほど死ぬのだし」

「それとキミも大分サバゲーの毒が回ってきたようだね」


「サバゲーの毒?」


「キミもそのうち理解するさ」


 先輩は立ち上がる、膝下を叩いてから銃をホルスターにしまう。


「さてと、友好の証としてその銃はキミにあげよう」


 僕は少し驚いた。


「えっ、いいんですか?」


「ああ、それでキミがサバゲーを好きになったのなら安いものさ」


「ありがとうございます、その……大切にします。あの……またここに来ても」


「おっぱいはもう見せないぞ」


「見ません!」


 先輩は僕に手を差し伸べた。


「丸だ、名前を覚えるのが面倒なら部長でいい」

「それと先輩というのはやめてくれ、残念ながらわたしはそんな偉い人間じゃないしこれからキミに学ぶ事もあろう」


「吾妻円です、部長」


 僕は先輩の手をにぎる。

 そしてその時世界を巻き込む騒動の渦中に立った事を僕はまだ知りもしなかった。

 ただ今は先輩の熱くしっとりした手の感触を感じるのみであった。

今週のエアガン



東京マルイ TACTICAL MASTER

メーカー:東京マルイ


 東京マルイ製のガスブローバックハンドガン。

 いわゆる古参の部類のエアガンで東京マルイでは珍しいホップアップシステム(固定HOP)である

 エアガン専門店よりもホビー専門店の方が取扱数は多め。

 普通のベレッタM92Fと違う点は、スライド部とハンマーがカスタム仕様にされていてカスタムのラバーグリップが初期からついている。

 ラバーグリップ自体は単品で買うと4.000円位かかるのでM92Fにグリップがついていると考えるとお得感はある。

 また中古で調達するのはあまりオススメできない。

 理由はタクティカルマスター自体が古くからあるモデルで、中古と新品の価格差や調達難度、ハズレ個体を掴まされる可能性を考えると、新品で買ったほうが後腐れがなくていい。

 欠点としてはエアガンとしての設計が古いのと何処にでも置いてあるという事から、東京マルイや他社製等の後発M92やM9等と比べるとどうしても性能や希少性で格落ちになる所。

 ただ希少性がなく価格が安いという事を逆手に取りサバイバルゲームでガンガン使う人もいる。

 ホップアップシステム自体は弄れない欠点と弄らなくていいという利点がある。

 同社からは可変HOPのM9(米軍採用版M92F)が販売されているため両方を購入して比べてみるのも面白い。

 ちなみに丸部長が吾妻に渡したタクティカルマスターにはヒミツがある……らしい。



KSC M92エリートA1

メーカー:KSC


 エリートシリーズはKSCのM9カスタムである。

 外見はタクティカルマスターとほぼ同じであり、相違点はバレル部分がシルバーである事とスライド部分の刻印である。

 タクティカルマスター程ではないが古参の部類の銃であり流通している大半は旧式の非SYSTEM-7である。

 タクティカルマスターと違う点、マルイとKSCの設計思想の相違としてKSCはより実銃に近いエアガンを目指し、実銃同様の分解手順、KSCロゴを目立たない部分に押す等が挙げられる。

 ちなみに現在は流通しておらず入手には中古市場を探すかSYSTEM-7のM9系列や他社製のM9やM92等をそれっぽくカスタムするしかない。

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