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Saturday Night Act.2

 昼前に僕たちは武者小路さんの運転でガンショップ巡りをする事となった。

 武者小路さんの時間があまりないとの事で吟味した結果として新日本兵器廠とバルクリユースとおなじみのデッカーズいうコースになった。この3つは距離は離れているものの同じ街道沿いである。

 新日本兵器廠とデッカーズを見終えた僕たちはバルクリユースへ向かった、ここは正確にはガンショップではなくあくまで中古商品全般なのだが玩具系の中古が多くそれでいてエアガンが揃っていて商品の回転が早い穴場と竹内さんが教えてくれた。

 武者小路さんはコンビニに行くというので先に2人で上がった。


「こんちわ」


 竹内さんが知り合いであろう若い女性の店員さんに挨拶した。名札には「ヨシダ」と書かれている。


「後ろの子は?」


「ダチ」


「吾妻です」


「ヨロシクね、タケちゃんは今日も仕入れ?」


「前回仕入れたの仕上げねえといけんし。面白いブツがあれば程度に、それよか何か面白い話とかは?」


 ヨシダさんが耳を貸せとジェスチャーしてきた。


「リミットレスってガンショップあるじゃん? あそこ少し前のロゴが替わった頃ぐらから製造部門と営業部門が分裂したんだけど、製造部門抜けた影響から銃の質がガタ落ちしてるっぽいのよね。まぁウチは二束三文で買い取ってボッタで売るし旧版持ってる奴は大体知ってるだろうから手放さないだろうから買わないほうがいいよ」


「つってもあそこ部品屋(・・・)だし、俺ぁああいうの専門外だからなー。まぁあんがとさん」


「それと4月の頭ぐらいからエアガン関係の事件(・・)多発してるの知ってる?」


「銃刀法の一斉摘発?」


「いんや、純粋にエアガン使った銃撃事件よ」

「しかも今までの事件と違って、聞いた感じちょいとヤバいのよね」


「勿体ぶってないで言えって」


 ヨシダさんは耳を貸せと僕たちにジェスチャーをする。


「今までのエアガン関係の事件って違法改造にしろ整備の不備(・・・・・)にしろ基本銃刀法違反って扱いだったでしょ、何件かエアガン使っての傷害ってのもあったけどさそれはあくまでエアガンを使っただけ(・・・・・)の傷害事件ってだけでさ」

「ただ最近はエアガン使った襲撃事件や強盗とかが増えてるらしくて」


「それってとどのつまりエアガンを使っただけ(・・・・・)の事件じゃねぇの?」


「そんなに事件あったらニュースになりませんかね?」


 僕はヨシダさんに聞いた。ヨシダさんは細い目を更に細めた上で真顔で話す。


「それがさ、何処かでストップかかってるらしくて話が全然表に出てこないのよ」


「んな陰謀論じゃねぇんだから……」


「それでもって撃たれた奴らは相当な怪我を負ってるらしいのよね」


 僕は少し考えてからヨシダさんに質問をした。


「その怪我が問題?」


「そうそ、普通エアガンに撃たれたら急所は除いても悪くて擦過傷程度でしょ?」


 急所というのは具体的には目だ、だからゴーグルが必要なのだ。


「それに撃たれた人は骨折とか内蔵ダメージを負っているらしいんだな」


「なんでそんなに詳しいんだよ?」


「んー秘密♪」

「ま、話が表に出てないだけで業界内ではそこそこ有名な話みたいよ。門外漢の末端バイト戦士であるわたしも知ってるぐらいだからね」

「ちなみに今はPSG-1のメカボ付きのロアレシーバーが入ってるよ、ほぼ新品っていうか部品取りの余ったみそっかすみたいな奴」


 ヨシダさんはエアガンコーナーを指差して言った。


「おっ、サンキュー」


 2人でエアガンコーナーに向かった、既に先客が何名かいた。

 特に目を引いたのは金髪のグラデーションに髪の毛を染めたの女の子がパーツコーナーでショーウィンドウにほほを付けて中を見ているのだ。


「8万円なのかー」


 一瞬、ドン引きしそうにはなったが、特に咎めるほどの悪事でも非難するほどの非常識な行いでもないのでそっとしておく事にした。彼女がそこそこ美少女だったから考えを改めたのは内緒だ。

 その美少女がクルッと振り返って僕の方を向いた。


「こんにちはなのだ!」


「あ、ハイ。コンニチハ」

「おう……こんちわ」


「お兄さん達もガンを買いに来たのか?」


「あ、ハイ」


「PSG-1の残骸とこのXレーダーはハジメちゃんが買うのだ! ハジメちゃん的にはオススメなのは二つあるタイプUとKSCのG18cなのだ、タイプUは2丁で1万切る位お買い得だしグロッグはスライド禿げてるけどカスタムだけでお釣りが来るのだ!」


 ハジメちゃんと名乗った彼女はハンドガンコーナーのとある場所を指差した。ハンドガンコーナーにはリボルバー、オート、SMG等が並んでいて見たことのないエアガンやカスタムガンもそこそこあった。

ハジメちゃんはその中の一番下を指差したそこには二つ並んだマイクロウージーがあった。否、ストックが無いからウージーピストルであろう。中段の真ん中辺りにグロッグのフルオート仕様の18がありフレームやコンペンセイターを見る限りではほぼ17のフルオート仕様の18cじゃなくてコンペンセイターが目立つ18でしかもアンダーレイルのある3rdではなくエアガンでは珍しい2ndフレーム仕様だ。「カスタム品!」と書かれているPOPを見る限りではカスタムガンなのだろう、中々に渋いが値段が3万もする。

 その奥のライフルコーナーにはヨシダさんの話していたPSG-1のジャンクがあった、ストックとアウターバレルとスコープが無くレシーバーのみであった。


「ハジメちゃんはおじさんの所にお金取りに行くから絶対盗っちゃダメなのだ!」


 そう言うと彼女はそそくさと店を出てしまった。


「そう言えばなんでPSG-1ってダメなんですか?」


 前に部長が冗談でPSG-1を買おうと言ったらヨウちゃんが明らかに嫌な顔をしたのを思い出したので竹内さんに聞いた。


「デカい、重い、使えねぇの三重苦を背負った銃だからよ」


「使えないって?」


「使えねぇ理由の1つとしてはセミオートオンリーなんだな」


 確かに実銃もセミオートのみだ。


「とはいえ射程とか命中精度はあるんじゃないんですか?」


「こんだけバレル長くても精度的に言えばフルサイズのストック付きMP5よりも悪いぐらいでな、剛性ないわ、バレルが長いせいか普通にやるとパワーありすぎるせいで意図的にパワーが抜ける仕様だわで俺なら普通のG3かM14辺りにスコープ乗せるわ」

「これ売った奴はPSG-1とG-3のミキシングでも作ったんじゃねーの。どうしてもPSG-1使いたいなら俺ならそうする」


「やあ、お待たせしましたな」


 武者小路さんは用事を済ませて合流した。


「じゃあ、テキトーに見んべ」


 そう言うと竹内さんと僕はハンドガンコーナーへ。

 武者小路さんはさっきの女の子がいたスコープコーナーへ向かった。


「このグロッグスライド自体は禿げてるけど、メタルスライドだしフレームも変えてるしガワだけでも総額8万はくだらんぞ……俺、これ買うわ」

「あと、さっきからサネの口数が少なくなってる」


 竹内さんに言われて僕はようやく気がついた、行きのクルマに乗ってた頃はいつもの武者小路さんだったのだが新日本兵器廠の中を見た辺から急に口数が少なくなっていた。

 それでいて何かを計算するように電卓を叩いていたりかと思えばメモ帳に何かを書き込んだりしている。少なくとも金額ではなかった。

 ただその光景は僕は何度か見ている。はじめは小学校の同級生の可児さん、そこから何人か挟んで最近だと部活の後輩の長岡と最近では部長がそれであった、部長や長岡はリラックスしていて武者小路さんを見るまで可児さんと部長を結びつけるのを忘れていたが。


「さっきのXレーダーって何だろ?」


「アレだよいわゆるデジタルスコープ、液晶ディスプレイで見るタイプで無倍率から12倍までズーム可能で、暗視、サーモ、デジタルドットサイト、銃口の向きの判定、オブジェクト判定、弾道測定なんか出来る光学機器だ。アメリカのベンチャー製でちょいと前に話題になったハイテク装備なんだが海兵隊の納入が予算の都合でキャンセルされて今じゃ先行量産品が並行輸入や個人輸入でそこそこ日本に入ってきてるらしいぞ、こんな所でお目にかかれるとは思ってなかったがな」


「へぇ」


「まぁぶっちゃけ言うとサバゲに持ち込むのは子供の喧嘩に親が出る様な物だな、M14なんかに乗せたらそれこそ即席で夕飯はドン勝レベルだ。強いて言えばPSG-1を有効に使うというならアレポン付けするのが一番だろうな。両方の欠点が見事に中和される、まぁ俺がもしやるならそれに加えてバレル短くするけどな」


「なんで?」


「え、そりゃ軽量、短縮化は当然としてアレの真価ってのは不意打ちが不可能ってトコなんだ、まぁつまりは遠距離だけで使うのは勿体無いから近距離で使えるように短縮化するって話だな」


「ふむ……なるほどですな」


 後ろを振り返ると武者小路さんが眼鏡に中指を添えてる決めポーズで立っていた。


「もう終わったんか?」


「撃つまでのセッティングは終ったも当然ですな!」


「どういう感じにすんの?」


「オープンサイトで撃ってみてから考える!」


 2人でズッコケてしまった。


「オープンサイトはバカには出来ませんぞ!」


「はいはい、俺銃買うから待ってろ」


――――――――――――――――――――――――


 午前中の結果は黄色が全敗の結果に終わった、20対20の戦いとは言え相手の半分はかなり統率の取れた軍隊に対しこっちはほぼ全員が初対面のグループ同士だ。

 昼食のカレーを皆でとる。ただ一人が用事があったのかフィールドを後にするのを見た。


「アレ、どうにかしたいですわよね……」


 杏ちゃんが福神漬けをかじりながらしゃべる。

 議題はもちろん相手の軍隊(・・)だ。午前中から1勝も出来ないのは相手の連携がよく取れているという所にある、正面突破はともかく挟撃や回り込み、前線を無視してフラッグキャッチなどもやられた。


「でも……4人だけじゃ、相手に勝てっこないですよね?」


 まりちゃんがそれに答える。


「人数集めればいいんだろ? 簡単じゃん」


 カレーで口元を汚してためありちゃんが言った、一瞬嫌な予感がしたがすでにめありちゃんは行動に移していた。長椅子に靴を脱いで立ち上がり高らかにこう宣言をした。


「イエローチーム、集合! 作戦会議しようぜ!」


 意外とマトモなアイデアで良かった、周りも最初は「何だ?」と疑問を呈したが意図を理解したのかあるいは女子ばかりの卓からお呼びがかかったのか即座に集結した。


「何か作戦でもありまして?」


「え、無いよ? これからみんなでアイデア出し合って決めるんじゃん」


 杏ちゃんと真壁さんは呆れたような顔をしていた。


――――――――――――――――――――――――


 話し合いの結果としてレッドの軍隊の戦力はドイツ系の装備で固められている例の姫「レイカちゃん軍団」の他に「三馬鹿マシンガン」という有名人もいるらしい。確かにPK機銃とかを持ってた人は何度か見た。

 こっちの装備は雑多で真壁さんやめありちゃんみたいにハンドガンのみの人からエアーライフルのスナイパーが2名、後はスコーピオン以上M14未満の各種電動ガンで杏ちゃんのBARが一番大きい銃だ。

 皆で悩んでいると誰かが挙手をした、それは真壁さんだった。


「あの……」


 真壁さんが手を挙げる。


「その……一丸となって防戦と狙撃に徹して相手の頭数を減らしたら突撃とか駄目でしょうか?」


「それだ」


 皆の意見が一致した。


「それでなんですけど……脅威度の算定というかそのお時間を何回かもらいたいので……3回、わたしを最後まで生き残らせつつ今まで通りの戦術で戦ってください。そうすれば相手の皆さんの脅威度の算定と攻略法を発見できるかと思われます」


「真壁さんってそういう事お得意でして?」


「はい……その……所属してるチームではオペレーターみたいな事をやってましたので」


 集合がかかり各自準備を済ませフィールドに入る。


「おい、あの色男(・・)どうした?」


「あ、いねぇ!」


「逃げたか?」


 会議から出た一人がまだ戻っていなかったのだ、仕方なく19人でゲームを行う。ルールとしては真壁さんをなるべく生存させる事、真壁さんはグロッグの代わりにデジカメの一眼レフを手に持っている。

 ゲームが始まる、先行組と防衛組と偵察組に分かれる、わたしと杏ちゃんは真壁さんの直衛として警戒しながら動く、真壁さんは撮影が巧いらしくかなり遠くの戦闘をパシャパシャと撮影を続けていく。

 当然ながらわたし達も狙われてヒットで退場させられたが、真壁さんの手際が良かったのか2回で終わらせられた、次のゲームではタブレット端末で編集作業をはじめ、その次には脅威度の算定が終わっていた。本当は全員説明したいのだが時間がないとのことで特に注意すべき人物たちの対策に留まった。ただ映像付きのレポート形式で1人30秒から1分で済ませられるように編集されていた。


「先ずはマシンガンズの1人目、大木さん。彼のPKの有効射程は30メーター強でマガジンは自動巻き上げ式です、ただ装備が重装だからか動きがゆっくりで視界の開けた場所に陣取って腰だめ撃ちなので対策は複数箇所からの集中狙撃で行きます」

「次は同マシンガンズの2人目、鈴木さん。RPKを持っていますがマガジンはバネ式らしく再装填を狙うといいかと思います、これも集弾狙撃」

「マシンガンズ3人目の直木さんは少し厄介です、彼は前2人の援護をメインとしているらしく前衛2名、後衛1名という配分から正面からの撃ち合いになると途端に不利になります、それでほぼ全員やられています、立ち回りが巧く遮蔽物を有効的に活用してきます。銃はRPDで射撃があまりないので不明ですが多分自動巻き上げ式のマガジンかと思われます。これに関しては狙撃合戦になると途端に不利になるので側面からの急襲ないし十字砲火で削っていきます」

「次には例の紫女学館のヒストリカル研究会、これは個人個人では我々と同格程度ですが、特に問題なのはチームワーク(・・・・・・)よりも適切な配備(・・・・・)の方です、確実に勝てる戦力を最小限送って撃破したら留まったり進行したりせず撤収し本隊に戻る、そうする事で確実に戦力を削いでマシンガンズが活躍できる土壌を作ってます、そういう意味ではマシンガンズよりもこっちの方がずっと厄介かもしれません」

「先ず我々には本隊と直接対決するだけの人員も火力もありません、最悪なのはマシンガンズとヒストリカル同好会が共同戦線を張った際ですが幸いそれをしなくても勝ててしまってますのでその可能性は低いかと」

「とはいえ、残念ながら現状では勝てる見込みは薄いですね」


 真壁さんがそう結論づけてから眼鏡を外して目の筋肉をほぐす、そろそろゲームの再開という時に「神林再着しましたー」との声が聞こえ振り返ると。いなくなったイケメンが蓋付きのオリコンとズタ袋みたいなものを抱えながら戻ってきていた。


「あれ皆さんお揃いで何やってるの?」


「そっちは何やってたの?」


 わたしが彼に聞いた。


「ああ、()まで装備取りに行ってた」

「ぶっちゃけ負けっぱなしは性に合わないんでね」


 彼は蓋付きのコンテナを机の上に置く、その中に銀色のモスカート、いわゆるサバゲー用のグレネード弾が10個近くと沢山のBB弾や新品のガス缶マガジンローダーが詰まっていた。

 オリコンを置いてからズタ袋を開けると大きな銃、リボルバーっぽく見えるが明らかにサイズが異質な銃が現れる。


「リボルバーグレネード持ってきたのか?」


 リボルバーグレネードと呼ばれたその銃にはフォアグリップとピストルグリップがありその中間にかなり大きいリボルバーのシリンダーみたいなのがある。大きさやインパクトに隠れがちだが、長さは意外と短くXM-8よりも短い、もしかしたらソウドオフ仕様なのかもしれない。


「そう、準備に手間取るからそこの彼女から話聞きがてら準備するから行ってきてよ」


「あ、シイちゃんもお手伝いします」


「お、助かるねぇ。流石美少女。じゃあガス缶のビニール開けてローダー2本にBB弾突っ込んでよ」


 他の皆がゲームに出ている間に真壁さんが先程の話をかいつまんで説明した。その間に神林さんはモスカートにBB弾を装填し器具を使いガスを装填する。


「ヒス研のレイカちゃんはマジで戦術に関してはクレバーな所攻めてくるからねー、それに三馬鹿マシンガンだろ? それに対抗するならモスカート位は用意しないと」


 神林さんは6つのモスカートを手際よくりリボルバーグレネードに装填しながら、作戦の提案(・・・・・)をする。


「あくまでこれ(・・)は戦術の一つに過ぎないし、6発しか撃てない都合上露払いは他に必要だから僕は露払いに専念するよ。そうだな……今のゲームで最後まで残った人にでも託そうかな?」


 1人、2人と戻ってきて最後に戻ってきたのは驚くべきことにめありちゃんだった。

 わたしが驚いていると真壁さんは「ほぼ毎回最後まで残ってましたよ」とわたしに言った。


――――――――――――――――――――――――


 めありちゃんは目を輝かせながらリボルバーグレネードを抱えていた。

 トラックの周りには前線維持の本隊がそしてトラックの中にはめありちゃんわたし、杏ちゃん、真壁さん、神林さん、エアーライフルの2人組がいる。

 間延びしたブザーが鳴り響く、本隊が先走りわたし達別働隊はフィールドの隅っこをめありちゃんを先頭にその次にわたしと神林さん、真壁さんと杏ちゃん、エアーライフルの2人組のグループに分かれて隠れながら向かう。ポケットの中身(・・・・・・・)を気をつけて移動を行う。

 めありちゃんが最後まで生き残れた理由には本人曰く「かくれんぼが得意だった」との事だがその理由はめありちゃんの動き方を見てわかった、めありちゃんは身長が小さい上に直線距離や全速力で目標地点に向かうのではなく、息を潜めて相手をやり過ごしたり、相手の最後尾に付き添ってしれっと味方ヅラしてバレる前にまた隠れたりする技術で生き残ってきたのだ。最も綱渡りも同然かつ相手の数が多ければ途端に不利になるので毎回最後の方にはやられるし、瞬間火力は高いかもしれないが持続戦闘力はこの中では低く火力不足のジリ貧になる。

 今回の作戦は本隊が防戦に徹している間に別働隊がマシンガンズをはじめなるべく多くを撃破してヒストリカル研究会を挟撃に持ち込む。それと別働隊もマシンガンズ撃破組とめありちゃんの単独行動にわかれなるべくめありちゃんを大暴れさせる方針となった。

 マシンガンズは例のごとく2人は見晴らしのいい場所に陣取り、もう1人がそれを援護する形で布陣している。わたしは今日一日の恨みを晴らすべく丁寧に重装甲なPKを狙い撃ち、その横のマッチョなRPKも狙っていたら誰かに取られた、線の細い美形のRPDが本隊に合流しようとしたら真壁さんが側面から攻撃をした。

 一方のめありちゃんは水を得た魚のようにリボルバーグレネードで片っ端からヒットを取っていく、ちょっと楽しそう、わたしも一瞬混ざろう(・・・・)かと思ったが理性がそれを思いとどまらせる。

 めありちゃんが片っ端からヒットを取っていたが7発目(・・・)で相手に撃たれて退場させられた、ここまでは想定の範囲内だ。わたしはXM-8をその場に置きポケットに突っ込んだ銃に変えて単独行動を行う。

 めありちゃんの移動を参考にして敵陣の裏に出る、女王様みたいなオタサーの姫が副官に指示を出している。

 わたしは副官にその銃、エマージェンシーランチャーを向ける。スマホみたいな四角いこの銃は神林さんからスタートの時に渡された銃で曰く小さいモスカートなのだそうだ、狙いは外さずに引き金を引く。距離にして5メートル絶対に外さない距離だ。


「ポン」


 クラッカーとも爆発とも取れるその音に驚くが、それは即座にアドレナリンと快感が上回る。


「何奴!」


 姫が腰に差しているワルサーをこっちに向けて撃とうとするが、真壁さんと神林さんが左右から現れて銃を突きつける、フリーズコールという奴だ。

 ブザーが鳴り戦闘終了の音が響く、ここにわたし達がいるという事はイエローチームの勝利であろう。

 それと同時にわたしの鼻に何か衝撃が来る、空を仰ぐとさっきまで青かった空は嫌な黒色に変わっていた。


『雨です! すぐ戻ってください!』


 ブザーはどうやら警報だった様だ、わたし達は慌てて屋根のあるセーフティに戻る。

 戻った頃には雨は強くなっていた、一応傘を持ってきていてよかった。


「シイちゃん! 銃は?」


「あ!」


 わたしは神林さんにレスキューガンを返してから慌ててフィールドに戻る。フィールドはさっきと違って全く見慣れないエリアのように感じ何処に銃を置いたのか忘れてしまった。雨に濡れるの泥で汚れるのを厭わず、銃を探すが見つからない。

 するとわたしの目の前にXM-8がふと現れた、顔を上げるとさっきの姫が軍用のポンチョを着込んでわたしにそれを差し出していた。


――――――――――――――――――――――――


 フィールドに戻ってから杏ちゃんの指導の元バッテリーを外してどの程度やられているかの確認を行っている。周りには敵味方問わず人だかりが出来てその結果を固唾を呑んで待っている。


「んー、端子も濡れてないですし特に内部に水は入っているようには見えませんわね」

「では、行きますわよ……」


 杏ちゃんはバッテリーを繋いで慎重にトリガーを引く。


「シュパッ」


 ちゃんと動いた。フルオートでも動く。


「良かったな!」


「わたしに感謝しなさいよ」


「ありがとう」


 わたしは感極まってXM-8を拾ってきてくれたレイカちゃんに抱きつく。

今週のエアガン



AMTハードボーラーT1風カスタム

メーカー:東京マルイ(カスタム)


 両角杏がフィールドに持ち込んだエアガン、ベースとなった東京マルイのAMTハードボーラーは固定スライドガンシリーズの中でも一番人気とも言える銃でその静音性や集弾率は後発のフィクスドにも負けない位の性能を有する。

 杏はグリップにマットブラックの再塗装を施し、バレル上にスコープマウントを載せその上には円形の大きい懐中電灯を載せ有線式のリモートスイッチをグリップに貼り付けている。



モーゼルM712

メーカー:マルシン


 めありがフィールドに持ち込んだエアガン、モーゼルのフルオート仕様を再現した銃で20連マガジンが初期付属しているがその理由は10連マガジンでマトモな動作が期待できないからである。

 それ以外にもセレクターが硬い個体があったりセミオートで射撃でいつの間にかフルオートになっていたなど色々問題を抱えた銃である、普段マルイやKSCを愛用しているとモヤモヤとするが、WAの愛用者からは許容されている勝手なイメージがある。

 またこの銃はドイツはモーゼル社と正式ライセンスを結んでおり刻印などはリアルであるため、モデルガンやコスプレ用小道具としてなら十分な性能を持つ。



ワルサー P38(ac40)

メーカー:マルゼン


 紫女学館のヒストリカル研究会の桃知レイカの愛銃で部員から送られた愛銃である。桃知レイカが他の一般的なオタサーの姫と呼ばれる人種と違う点は戦術において類まれな才能を有していた事における、これは幼少期から「どういう風に頼んだら相手が気持ちよく動いてくれるか?」と彼女なりに研究や実験を行った結果の賜物と言っても過言ではなく地元の最強チーム論議にはほぼかならず紫のヒス研の名が出てくるぐらいにはヒストリカル研究会は有名となった。

 性能としてはマルシンのモーゼルよりはちゃんと動いてくれる。

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