怪獣
幾つもの繁華街を繋ぐ地下鉄でそれは起こった。
満員の乗客諸共最終電車が行方不明になったのである。
事故が起きたのかと、到着する筈だった駅と1つ前の駅から救助隊が互いの駅を目指してトンネルに入った。
2つの駅から派遣された救助隊員達は最終電車の姿を見る事なくトンネルの中間で出会い、代わりに大小便を垂れ流し錯乱状態のホームレスを数人みつけ連れ帰った。
ホームレス達は口々に、突然電車の前に巨大な芋虫が出現して電車を丸呑みにすると現れた時と同じく消え去ったと証言する。
小さな水槽を持った2人 の学生が喋りながら廊下を歩いていた。
「教授の理論は面白いよな」
「多重次元の話か?」
「そうそれ、幾つもの世界が互いに認識されないだけで存在しているなんて、話を聞いているだけでも面白いよ」
「でもさ、平行次元ならまだ何となく分かるけど、大きさが全く違う異なる世界が多数存在しているなんてちょっと信じられないな。
小さな世界なんて言ったらこの小さな生物さえ、怪獣に見える世界があるって事だからね」
そう言いながら持っている水槽の中を覗き込み、何かを咀嚼している微小な芋虫を覗き込んだ。