異世界はバカばかりだそうです
最近某蝸牛に迷った少女や自己批判精神の怪異が好きな作者です
…ロリコンジャナイヨ
気がつくと俺は真っ白な部屋の中に居た。
は?
いやいやいや、何で俺こんな所にいんの?
え~と確か久々の登校途中で思いっきり刺されて、それから……
あぁそうか。俺は死んだのか。
なるほどならこの真っ白な部屋はあの世か何かだろうか?
正直俺の部屋より広いのでそこは嬉しい。
というか死んだら一人一部屋くれるの?
だとしたら凄いありがたい。
「違いますよ~」
背後から間延びした声で呼びかけられる。
そこに居たのは十人中十人が振り向くであろう美人が居た。
透き通るような白い肌に銀糸の髪、そして黄金の瞳。
とてもじゃないがこの世のものとは思えない。
(だ、誰?あれ?声が出ない…)
「声は出ませんよ~声帯も無いのにどうやって声を出すんですか~?」
(声帯が無い?何言ってんだこいつ。)
しかしさっきから全く声が出せない。
そこで手を喉に伸ばすが手は全く動かなかった。
それどころか手自体がなかった。
(はぁ!?俺の手は!?)
「ありませんよ~」
(は?いや、え?)
「え?じゃないですよ~あなたは死んだんですよ~?魂だけのあなたに身体があるわけがないじゃないですか~」
は?魂だけ?
そんな馬鹿なと思い自分の身体を見下ろすと確かに俺の身体は手もなく、足もなく辛うじて人間の形を取ったおぼろげな輪郭だけがそこにはあった。
(な、なんじゃこりゃぁぁぁぁ!?)
「おぉ~ほんとに今気づいたんですね~もうちょっと自分に興味持ちましょ~?」
(……そっかぁーまじで俺死んだのかー……というかあんた誰?)
「うわぁ~自分に対する興味は薄いくせして状況への適応力は高いんですか~引くな~」
(引いてんじゃねぇ!それで?あんたは?)
「神です」
…は?
(……今なんと?)
「ですから神です」
(…今までは御無礼な真似を…)
「遅いです~」
(ですよね~)
いや~これはやらかしたかな?
これは魂を消滅とかそういう流れかな?
(そういえば神様。菅原はどうなりました?)
神だと言うので素直に気になったあの後の事を聞いてみたのだが帰ってきたのは呆れと感心を含んだため息だった。
「ほんとに適応力高いですね~…菅原 雪菜は無事ですよ。あの後ずっ~と泣いてたみたいですけどねぇ~」
(…そっか、生きてたか…なら良かったよ)
とりあえず良かった。
あいつが無事なら俺の犠牲も報われる。
(それで?俺にどうして欲しいんですか?)
「う~ん、もうちょっと何かなかったんですか~?死んじゃって悲しい~とか、もっと生きたい~とか」
(いや、正直もう満足しました。ありがとうございます)
「は~達観してるんですね~」
(まぁ高校生にもなって小学生みたいないじめを受けてたらもうなんかどうでも良くなっちゃいまして)
「なるほど~それで四ノ宮さん?一体いつになったらこっちを向いてくれるんですか?」
そう、俺は神様に背を向けて会話している。
不敬だ、とか言われて殺されるかと(もう死んでいる)思って居たが存外優しい神様らしい。
(すみません。でも神様なら事情は分かってますよね?)
「えぇまぁ、随分と子供っぽいですよね~」
(えぇ分かります。あいつらは…)
「いいえ?あなたもですよ~?」
俺も?
一体俺のどこが子供っぽいというのだろうか?
「ふむ、分かって無いようなので教えてあげますね~」
ビッっとこちらを指さした。
「あなたはその子供のような嫌がらせを受けてまともに人の顔を見て会話が出来なくなっているんですよね~?自分には興味を持たなくなった、いえ、自分を含めて特定の人以外には全く興味を持てなくなり、さらには会話もろくに出来ず、あなたも充分子供っぽいと思いますよ~」
(…厳しいことで)
「まぁあなたの気持ちが全く分からないって訳じゃないんですよ~?親友だと思っていたのに裏切られた。まぁ人間不信になるのも多少はしょうがないかな~とは思います~」
そう思うならはっきりと言わないで欲しかった。
少し自覚はあったのだが…
「まぁそんなことはいいです~それよりもあなたがここに居るのは私があなたにやって欲しいことがありまして~それでここに呼んだ次第です~」
(やって欲しいこと?それはあれですか、異世界転生とかいうやつですか)
「お~正解です~」
きたぁぁぁぁ!!!
「ほんとにどういう適応力してるんですか~?」
(これは適応力とは言わない気が…まぁいいです、それで何故俺が?自分で言うと悲しくなりますが俺みたいな根暗なコミュ障よりもまだ俺にはやり残したことがあるんだ!
とかそういう人を転生させてあげた方が良くないですか?)
「異世界に転生するのにやり残したこととか意味がわからないですけどね~まぁ説明しますと、今から転生してもらう世界はいわゆる剣と魔法の世界ってやつでしてね~その世界で少し問題が起こったんですよ~」
神が問題と思えるような問題を一人間である俺にどうしろと言うのか。
「魔法とかそういった力を使うにはそれに対応した力を使う必要があるんです~例えば魔法なら魔力、祈祷や陰陽術なら霊力と言った具合です~」
(なるほど、電池みたいなものと思っておきます)
「何故電池で例えたのか分かりませんがその例えが一番しっくり来ますね~単三電池が必要なのに単一電池を渡されてもどうしようもないですからね~」
おぉ、あの分かりずらい例えの意味を即座に読み取ってくれる。
流石は神様。
略してさす神。
「まぁ私はその世界の運営をやってたんですけどね~私はずっと昔から、それこそ魔法とかを世界のシステムに組み込んだ瞬間から、魔法は魔力で、祈祷や陰陽術は霊力で、仙術は仙力で、神々の権能は神力でって決めたんですよ~それなのに一人の人間の科学者がですね~魔力で陰陽術をやろうとしたんですよ~」
うわぁ、
俺でもなんかやばいのは分かるぞ。
「その結果、その実験が行われた大陸は極端に魔力の少ない大陸になってしまいましてね~」
(大陸に影響及ぼす実験って…そいつ絶対バカでしょ…)
「えぇバカでしょうね~そして神託をさずけた教会も目先の利益に囚われて今すぐやめろという神託を180度ねじまげやがりましてね~その結果はさっきも言った通りです~」
(完璧な自業自得じゃないですか…それで?その馬鹿共の話が俺にどう関係するんですか?)
「実はですね?その実験で消えた魔力はどこに行ったと思います~?」
(いやいや、魔力とかを全く知らない俺に言われても…)
そう言うと神様は顎に手を当てて考え始めた。
「それもそうですね~ではヒントを、魔法と言うものは魔力を消費して起こすものなのです~しかしさっきも言った通り行われたのは陰陽術、当然発動しませんでした~そういう風にシステムを作ったので~」
なるほど。
「ここで問題になるのはでは魔力はどうなってしまったのかということでしてね~魔法というのは魔力に属性と形を与えることで初めて意味をなすんです~つまり魔法そのものが魔力によって形成されているものなのですよ~そして魔法は発動に失敗すると魔力が霧散して空気中に溶けます~成功しても効果を成した後に空気中に溶けます~」
あれ?でもさっき大陸から魔力が消滅したって…
(本来霧散するはずだった魔力はどこへ?)
「魔法は魔力というエネルギーを使います~魔力はありとあらゆる自然部が放出していて世界全体が常に魔力に包まれているのです~だから魔力を魔法という型に当て嵌めてようやく使用することができます~だからオリジナルの魔法を創ろうとしたらまず一から型を作らなきゃいけません~しかしさっきも言ったバカな科学者さんは魔力というエネルギーを陰陽術という全く別の型に無理やり嵌めたわけです~さっきの例えを使ってわかりやすく説明すると、単三電池が必要なリモコンに単一電池を使って無理やり使えるようにしようとしたわけです~」
(とにかくバカしか居ないことは分かりました。それで?結局魔力はどうなったんです?)
あまりに引っ張るので軽くイライラしながら問いかけると、
「爆発しました~」
は?
何故に爆発?
「魔力はエネルギーです~それを全く違う方法で、つまり誤った方法で使用すれば当然しっぺ返しが来ます~」
(なるほどその結果が魔力爆発ですか、なんともお粗末な結果ですね)
「えぇ同意です~さて本題に入りましょう。あなたには大量の魔力を持って異世界に転生してもらいます。