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異世界感染 ~憑依チートでパンデミックになった俺~  作者: 結城 からく


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第9話 ウイルス流の狩猟術

 翌日、俺は朝から十体のゴブリンを連れて森を歩いていた。

 街へと繰り出す前に、森に生息するモンスターたちにウイルスを感染させておくことにしたのだ。


 感染させれば、何らかの能力を得られる。

 それを症状という形でこの肉体に生じさせれば強くなれる。


 ホブゴブリンの肉体で町に赴く以上、トラブルに巻き込まれる可能性も少なくない。

 最低限、自衛できる程度の力は欲しかった。

 いくら命のストックがあると言っても、無為に死にたくはないからね。

 冒険者に取り囲まれて弁明もできずに殺されるような展開はご免だ。


 それに、エレナの助けになるためにも力は必要だろう。

 再会した時に弱いままだったら目も当てられない。

 彼女をサポートできる、頼りがいのある存在になっておきたいね。


 あと、今のうちに人間の言葉を流暢に話せるようにもなっておきたい。

 昨日の宴でも決心したが、街へ入るにあたって必須の課題である。

 ここをクリアできれば人間と関わる際のリスクがグッと減る。

 実質的にはこれが最優先でこなすべき目標だろう。


 どのみち喋れるようになるには時間が必要なので、ついでに強くなっておこうという算段であった。


 出発前、配下のゴブリンにこの森について色々と尋ねたところ、付近のモンスターの知識などを得られた。

 能力獲得のついでに戦闘訓練も済ませておこうかな。

 些か無計画気味な気もするが、死のリスクは存在しないのだ。

 最悪、返り討ちに遭っても別の肉体へと乗り換えるだけである。


 街に行けそうな肉体を探すのが手間なので、なるべく避けたいことだが。

 オークとの戦いも上手くこなせたから大丈夫だとは思うけどね。


 後ろをついてくるゴブリンたちは、なかなか張り切っていた。

 俺という群れのボスが同行しているからだろうか。

 彼らもきちんとウイルスで強化しているので、並のゴブリンとはわけが違う。

 戦いになっても頼りになるはずだ。


「お、れ……は、にんげ、ん……ダ……ぐごっ」


 歩きながらも会話の練習は欠かさない。

 油断すると変な鳴き声が出るので気を付けないと。


 道中、やけにカラフルな植物があったのでウイルスを吹き付けておく。

 植物感染が可能なことは既に知っていた。



>症状を発現【麻痺Ⅰ】

>症状を発現【頭痛Ⅰ】

>症状を発現【吐き気Ⅰ】

>症状を発現【貧血Ⅰ】

>症状を発現【光合成Ⅰ】



 色が怪しいと思ったら、結構な毒草だったらしい。

 やたらとマイナス効果の症状ばかりが手に入ってしまった。


 これはいいぞ。

 自分の強化には使えないが、相手に発症させればかなり有効である。

 昨日のオーク戦で披露できたら、それはもうすごいことになっていただろう。

 もっと簡単に勝てたと思う。


 不可視のウイルスが空気感染で体内に入り込み、凶悪な症状を連発させる。

 敵からすれば厄介極まりないね、うん。

 対処方法はかなり限られてくるだろうし、初見殺しにもほどがある。

 まあ、使う側からすれば非常に便利な能力でありがたい。


「す、きな……たべも、のは……にく……でス……グゴッ?」


 新しい症状をどこかで試したいなぁと思っていると、前方の茂みから現れたオークと鉢合わせになる。

 オークは一体だけで、かなり疲弊している様子だった。

 衣服もボロボロである。

 こちらと鉢合わせたことに驚いて固まっていた。


 群れからはぐれた個体だろうか。

 噂をすれば出てきてくれるとは、なんて気の利いた奴なのだろう。

 俺は問答無用でウイルスを感染させる。



>症状を発現【飢餓Ⅰ】

>症状を発現【衰弱Ⅰ】



 スキルが手に入るほど弱っているみたいだが、生憎と俺には関係ない。

 慈悲などかけずにやらせてもらおう。


「プギ……プギィッ!」


 ハッと我に返ったオークは、動揺しながらも槍を持って仕掛けてきた。

 明らかにふらついているが瞳の宿る気迫は戦士のそれである。


 俺は【身軽Ⅰ】と【回避Ⅰ】で刺突を躱して、反撃として手に入ったばかりの症状を一気にプレゼントしてあげた。


「プギィァッ!?」


 その瞬間、オークが悲鳴を上げて転んだ。

 小さく痙攣しながら呻く。

 身体を動かそうにも力が入らないらしい。

 まったくの無防備な状態である。


(さすがウイルスの力だな……)


 これだけ酷い症状が即効性とか、鬼畜にもほどがあるぞ。

 あまり苦しませるのもどうかと思ったので、持っていた剣でオークの心臓を刺して殺す。


 これで夕食にまたオーク肉が食べられる。

 それなりの重量があるものの、血抜きと解体をさせて配下のゴブリンに運ばせれば事足りる。

 命令しようと思った俺は、背後を振り返った。


「ゲゲェ……」


「グゲゲ、グゲ……」


「……ググゲェ」


 なぜか配下のゴブリンたちはドン引きしていた。

 俺がオークを何かしらの手段で無力化したことに気付き、その得体の知れなさに気味悪がっているようだ。

 そのリアクションは地味に傷付くのだが。

 別にわざわざ説明しないが、オークがこうなった原因のウイルスは、こいつらの中にもしっかり潜伏しているのにね。


(楽に倒せたのだからいいと思うんだけどなぁ……)


 今後、ウイルスの扱いには余計に注意せねばならない、と俺は思った。

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