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異世界感染 ~憑依チートでパンデミックになった俺~  作者: 結城 からく


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第53話 束の間の別れ

 その後、エルフの美女とはほどなくして別れた。

 名前を訊かれたが誤魔化して、逆に彼女の名前も訊かないでおいた。

 知り合いになったら後で余計なトラブルに巻き込まれる予感がしたのだ。


 これ以上の厄介事はご免だった。

 今日だってダンジョンの視察に訪れたくらいだったのに、こんな事態に陥ってしまった。

 交通事故で転生してから、やたらと不運を呼び寄せる体質になった気がする。

 生前は割と普通の人生だったと思うのだが。

 異世界でも平穏な日々を送りたいものだ。


 名乗りたくないという希望を怪しまれるかと思ったが、エルフの美女が存外にあっさりと引き下がってくれた。

 あちらも無理に知りたくはなかったらしい。

 冒険者という職業は、だいたい脛に傷を持っているそうだ。

 故に詮索するような真似はしないのがマナーだという。


 さすがギルド職員。

 その辺りの慣習は守ってくれるみたいだ。

 こちらとしても穏便に済んで何よりである。

 辺境の田舎者という設定で押し切れないこともないが、どこでボロが出るかわからないからね。

 余計なことはなるべく話さないようにした方がいいだろう。


 それにしても、エルフの美女と敵対しなくて本当によかった。

 鰐を瞬殺した様を見るに、俺ではとても太刀打ちできないだろう。

 やはり俺の勘は間違っていなかったね。


 そして、一番の報酬は別れ際に握手できたことだろうか。

 そこでさりげなくウイルスを感染させることができた。

 信用してもらった相手にすべき行為ではないが、これは許してほしい。

 ウイルスとしての本能というか何というか、生きていくために必要なんです。



>特性を発現【命令Ⅰ】

>特性を発現【耐魔力Ⅰ】


>症状を発現【精霊魔術適性Ⅰ】

>症状を発現【魔術拡大Ⅰ】

>症状を発現【精霊視Ⅰ】

>症状を発現【長寿Ⅰ】

>症状を発現【不老Ⅰ】

>症状を発現【魔術耐性Ⅰ】

>症状を発現【支配耐性Ⅰ】

>症状を発現【干渉耐性Ⅰ】

>症状を発現【身体強化Ⅱ】

>症状を発現【魔力増強Ⅱ】

>症状を発現【魔力操作Ⅱ】

>症状を発現【魔力感知Ⅱ】



 なんというか、とんでもない結果になった。

 色々とゲットできると思っていたが、これほどまでとは予想外である。


 全体的な傾向を見るにエルフの美女はやはり魔術師なのだろう。

 これだけ充実してくると、魔術を使いたくなってくるな。

 さっきの鰐を倒した感じのことができるのなら、是非とも習得しておきたい。

 いざという時の切り札にもなりそうだ。

 やはり他者に堂々と披露できる特殊能力は必要だよね。

 今の俺は糸を出したり、毛むくじゃらになったり、爪を出したりと人外っぽいものばかりだった。

 まあ、症状の取得元が魔物だから仕方ないんだけども。

 街に戻ったら真面目に調べてみよう。


 さて、エルフの美女から得た特性と症状はどれも凄まじい効力みたいだが、その中でも特筆すべきは【命令Ⅰ】だろう。

 これはどうやらウイルスの感染対象に言うことを聞かせることができるようになる能力らしい。

 もちろん欠点もあり、実力差があったり相手の精神力が万全だと効きが悪くなるようだ。

 そもそも言葉を解さない類の存在も同様に効きにくいようだった。


 どうしてこんな能力が手に入ったのかと考えたところ、エルフの美女が行使した謎パワーに考えが至る。

 俺や鰐の魔物を拘束したあの力は、彼女が言葉として発した内容を実現するものであった。

 その劣化版として【命令Ⅰ】を取得できたものと思われる。


 感染させると同時に乗り移ろうとしてみたが、エルフの美女には効かなかった。

 取得した症状から考えるに、こちらの【支配Ⅰ】に抵抗する能力を複数持っているようだ。

 ちょっと残念だけど、こればかりは仕方あるまい。

 感染を察知されなかっただけでも良しとしよう。


 別れ際、エルフの美女に「また会おう」などと言われたけど、できれば遠慮したい。

 やましいことがなかったらお茶でもご一緒したいんだけどね。

 魔物の肉体を操るウイルスの身にはハードルが高い。


 そして現在。

 再び一人になった俺は、来た道を戻っていた。

 エルフの美女の指摘に従って、崩落箇所を起点としてエレナを捜索するつもりだ。

 魔物にでも襲われない限りはその場から離れていないはず。


 俺は遭遇する魔物を次々と薙ぎ倒しながら突き進む。

 さらに装備がぶっ壊されたが、もう誤差の範囲だろう。

 毛むくじゃらの化け物であることに変わりない。

 エレナらしき気配を掴んだら解除すればいい。


 そうして数分をかけて戻った俺は、眼前の光景に呆れてしまう。


(まったく、どこまでファンタジーなんだ……)


 崩落したはずの通路は、何事もなかったかのように修復されて塞がっていた。

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