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異世界感染 ~憑依チートでパンデミックになった俺~  作者: 結城 からく


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第39話 暗殺ウイルスの電気治療

 仲間割れを起こして争うトロールたち。

 怒りで理性が飛んでいる。

 こちらに向かってくる個体はいない。

 どいつも目の前の仲間を殴ることで忙しいようだ。


 ちょっと卑怯だったかもしれないが、遠慮なくやらせてもらおうか。

 俺は手始めに【隠密Ⅱ】【気配遮断Ⅱ】【隠形Ⅰ】を発症する。


 ステルスモードになり、いざ仕掛けようとしたところで武器がないことに気付いた。

 剣は先ほど折れてしまったのだ。

 街に戻ったら新しいものを買うか。

 いや、お金がもったいないし、魔物の武器を拝借しよう。

 トロールの棍棒はちょっとサイズ的に無理があるが、歩いていれば別の魔物と出会えるはずだ。


 仕方ないので各主症状で膂力を限界まで上げて、さらに【感電Ⅰ】【硬皮Ⅰ】【魔力発電Ⅰ】【暗殺Ⅰ】【奇襲Ⅰ】を発動する。

 お馬鹿なトロールたちには電気治療を施してやろう。

 これくらいの攻撃なら派手じゃないので傍目にも問題ないはずだ。

 後でエレナや冒険者たちに何か言われても魔術ということで押し通せばいい。


 俺はひっそりと息を潜めてトロールたちに接近していく。

 現在進行形で激しく殴り合っているので危ない。

 ぼーっとしてたら巻き添えを食らいそうだ。


 とりあえず俺は、一番近くで倒れている個体をターゲットに絞った。

 トロールはまだこちらに気付いていない。

 気配察知能力には優れていないようだ。


(さーて、おねんねの時間だよ)


 俺は起き上がろうとするトロールを押さえ付け、その眼球に拳を突き込んだ。

 刹那、青白い電流が迸る。

 トロールの眼球が破裂し、湯気が立ち昇りだした。


 巨躯がガタガタと痙攣しながら焦げ付いていく。

 トロールの大きく開いた口から勢いよく血が噴き出した。


「ブッ、ブボ……」


 弱々しい声を発したトロールは白煙を吐きながら絶命する。


 俺はトロールの眼球から腕を引き抜いた。

 電気ショックと同時に、眼窩を砕いてその奥の脳を破壊したのである。


 なかなか壮絶な死に様だ。

 さすがに少し吐き気がする。

 ただ、ここで躊躇している暇はない。


 トロールたちは相変わらず仲間割れで忙しそうにしていた。

 よほど頭に血が昇っているのか、一体が感電死していてもお構いなしだ。

 ただ、無駄に耐久性が高いこともあって、殴り殺される個体はいない。

 打たれ強さも半端ないな。

 直感的に急所を狙って殺せたが、普通にやったらまずかったね。


(よしよし、大人しくなってもらおうかね)


 パチパチと電流を走らせる指を動かしながら、俺はトロールたちの隙を窺う。


 そこから先は特筆して語ることはない。

 ただひたすら、仕留められそうなトロールから順に暗殺していった。


 手こずるかと思いきや、全ての個体を一撃必殺で沈められたことに我ながら驚く。

 ないよりマシくらいの感覚だった【奇襲Ⅰ】と【暗殺Ⅰ】が想像以上に作用してくれたようだ。


 今の戦法を練習したら、立派な暗殺者になれそうだな。

 ウイルスとしての憑依能力に加えて不滅仕様もある。

 俺が本気になれば、どんな警備だって抜けてターゲットを始末できそうだ。


 ……いや、しないけどね。


 そんな物騒な存在になりたいとは思わないよ。

 狙いたい人がいるわけでもないし。

 俺が目指すのは謙虚で穏やかなウイルス。

 当分は冒険者稼業でほどほどに頑張っていくつもりである。


 六つのトロールの死体を築き上げた俺は、血と脳漿塗れになった腕を振った。

 武器がなかったせいで随分と汚くなってしまった。

 これからは予備の武器くらいは用意しておこうかな。

 用途に応じて数種類揃えておくのも便利そうだ。


(どこかで腕を洗える場所とかないかなぁ……)


 ダンジョンの中に休憩所的なエリアはないのだろうか。

 水道なんかが設置されていたら尚嬉しい。

 まあ、ここまでの道のりを考えると難しいね。

 そんな親切設計ではないと思う。


 俺は余計なことを考えながらエレナたちのもとへ戻った。


「トロールは、全滅させた。もう、安全だ」


 そう告げるも、負傷した冒険者たちの反応は薄い。

 いや、彼らはこちらを見て唖然としていた。


「ト、トロールを素手で殺して……!?」


「雷魔術を格闘に合わせて行使したのか。なんて制御能力だ」


「さっきトロールに殴られたのに平然としてやがる……化け物か?」


 そんな中、エレナだけがキラキラとした眼差しを向けてくる。


「パラジットさん、すごかったです! あんな風にトロールを倒すなんて、普通じゃできませんよ! さすがですっ!」


「……ありが、とう」


 眩しい、眩しいよ。

 この娘はどんな状況でもべた褒めしてくれる。

 向けられる絶大な信頼感に照れて、俺はふいと目を逸らした。

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