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異世界感染 ~憑依チートでパンデミックになった俺~  作者: 結城 からく


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第33話 いざダンジョンへ

 俺はエレナにダンジョンの概要を教えてもらう。


 ダンジョンとはこの世界に点在する特殊な空間を指し、そこでは多種多様な魔物や宝物が生成されるそうだ。

 魔物が生まれるという関係上、ダンジョンは危険視されている部分もあるが、国単位では貴重な資源として見られている場合がほとんどらしい。


 ダンジョンに関することはほとんど分かっておらず、その仕組みや起源などは一切不明。

 神々の戯れだと唱える者がいれば、世界の歪みが顕著したものだという説もある。

 とにかく謎に包まれた場所なのは確かで、大多数の人々には自然現象の一種として認知されているみたいだった。

 学者たちの間では常に研究の対象となっており、冒険者にとっては体のいい修練や稼ぎのスポット、或いは一攫千金を狙える夢の場所だという認識だという。


 エレナの説明を聞いた俺は彼女に尋ねる。


「そこへ、いきたいのか?」


「はい! 街から近いところに初心者向けのダンジョンがあるんです。そこなら戦いの練習になり、倒した魔物の素材を売ってお金にできますよ。依頼を受けなくとも、結構な利益になるはずです」


 俺はエレナの説明に納得する。

 確かに効率がいい。

 街で生活するには当然だがそれなりの稼ぎが必要だ。

 話を聞くに、ダンジョン探索は冒険者のメジャーな収入の一つみたいなので、今のうちに一連の流れを体験して損はないだろう。


 既にウキウキとした様子を見せつつあるエレナに、俺は頷いてみせた。


「よし。それなら、いこう」


「ありがとうございますー! 今までソロだったせいで、ダンジョンに行ったことがなかったんですよ! いつか挑戦したいと思っていました」


「ソロでは、なにか、問題が?」


 俺が訊くと、エレナは少し表情に陰りを覗かせた。


「私の実力ではソロだとダンジョンでは通用しませんから。ソロで潜れば半日もしないうちに魔物に殺されてしまいますよ。だから、これまでは危険の少ない依頼ばかりを選んでこなしてきました。たまにピンチになることもありましけどね」


 そう言ってエレナは頬を掻いて苦笑する。

 ダンジョンという場所は、それなりに危険の伴う場所らしい。

 まあ、一獲千金を狙えるくらいなのだから、リスクも相応にあるのだろう。


 エレナの口にしたピンチは、おそらくこの前ゴブリンと遭遇した時も含まれているものと思われる。

 俺がエレナと初めて出会った場面だ。

 確か薬草採取の途中に襲われたと言っていたな。

 ダンジョンを避けたとしても、やはりどこにでも危険はあるということだね。


 当時の俺は狼だった。

 たった数日前なのに懐かしい。

 あの頃からは随分と状況が変わった。

 このまま気ままに暮らしていきたいものである。


 とにかく、俺はエレナとダンジョンとやらに挑戦することになった。

 説明を聞いた段階で行きたいと思ったね。

 異世界特有のファンタジーな施設だ。

 この目で見ておきたいと考えるのは当然の心理だろう。

 手頃な依頼もないとのことなのでちょうどよかった。


 ギルドを出た俺たちは、通りの露店を回る。

 ダンジョン挑戦に際して細々とした買い物をするためだ。

 その辺りの勝手は俺には分からないので、すべてエレナに任せてしまう。


 とりあえず、途中で購入した薬草の一束を手に取り、ウイルスを感染させておいた。



>症状を発現【解毒Ⅰ】



 俺はどのようなダメージを食らっても割となんとかなるが、同行するエレナはそうは行かない。

 アイテム以外にもきちんと備えを作っておくべきだろう。

 彼女は俺と違って一つの命しか持たないのだ。

 せめて共に行動する間くらいは守ってあげたいと思う。


 買い物の途中、二人分と思われる額の硬貨をエレナに渡した。

 細かい値段は分からないので割と適当だ。

 少なすぎることはないと思う。

 彼女には色々と世話になっているから、余分に渡してもいいだろう。


 昨晩、不埒な男たちから奪ったから財布は潤っている。

 ちょっとくらい使っても大丈夫だ。


 もちろん稼がないといけないのは変わらないんだけどね。

 油断していたらすぐに資金が尽きそうだ。


 まったく、異世界でも仕事をしないといけないとは。

 なんだか物悲しくなってしまう。

 いや、考えれば当たり前のことなんだけどね。

 たとえファンタジーな世界観でも、根本的な社会の在り方やら原則に変わりはないのだ。

 森で魔物として暮らせばそういった悩みも抱かずに済むのだろうが、やはり文明的な生活を送りたい。


「えっ!? こ、こんなに貰えないですよ!」


 硬貨を受け取ったエレナはなぜか狼狽えていた。

 俺に金を返そうとしている。

 どうやら渡した分が思ったよりも多かったらしい。


 俺は慌てる彼女に告げる。


「別に、いい。たくさん、教えてもらった礼、だ。受け取って、くれ」


「そういうことでしたら……ありがとうございます!」


 エレナは笑顔で頭を下げてくる。

 固辞し続けてもこちらの意向に反すると思ったのだろう。

 察しのいい子である。


 金は生活する上で必須だが、別に執着心があるわけでもない。

 また稼げばいいだけだ。

 幸いにもウイルス能力を駆使すれば難しいことでもない。


 森のゴブリンたちに命令すれば、魔物くらい狩ってきてくれそうな気がするし。

 薬草採取だって人海戦術でサクッと済ませられる。


(……もう用はないと思っていたけど、あのゴブリンの群れは使えるかもしれないね)


 この肉体がある間はたまに顔を出しておこうかな。

 なんだかんだで忠誠を誓ってくれていたし、状況次第ではとても頼りになりそうだ。


 準備ができたところで、俺とエレナは街の外れへと向かう。

 ダンジョンまではここから乗合馬車で移動するらしい。

 往来する人と馬車を眺めつつ、俺はエレナの後についていく。


(ダンジョンか。いよいよ冒険者らしくなってきたな)


 ゲームで何度も味わってきたあの感覚を現実で体験できる日が来るとは。

 やはり異世界転生は最高だ。

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