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異世界感染 ~憑依チートでパンデミックになった俺~  作者: 結城 からく


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第24話 少女からの誘い

 ギルドからやや離れた大衆食堂。

 俺はエレナと同じテーブルにいた。


 不埒な男たちをぶちのめした後、エレナに礼をしたいと言われて半ば強引に連れて来られたのである。

 店内は混み合っており、俺たちの会話に注目するような気配はない。

 ここでなら周りを気にせずに話せそうだ。

 色々と突発的な出来事が続いたけれど、結果的に彼女と話をするきっかけを得られたのだから良しとしよう。


「…………っ」


 エレナは緊張した様子で縮こまっている。

 ぎこちなく視線を彷徨わせていた。

 背筋をぴんと伸ばして座っており、表情も随分と硬い。

 俺をここへ連れてきたのも、かなりテンパった結果なのかもしれない。


 まあ、仕方ないよね。

 俺が出てきてからの流れは色々と予想外だったろうし。

 たぶん、庇いに来た俺が男たちにリンチされると思っていたに違いない。


 周りも似たような心境だったように見えた。

 そこからウイルス感染による返り討ちである。

 当事者のエレナにとっては、驚きの連続だったはずだ。


 ギルドからすぐに場所を移したのも納得できる。

 気まずくて話どころではないからね。


(かなり動揺していた感じだったもんなぁ……)


 俺はギルド内の様子を思い出して苦笑いする。


 男たちが一瞬で倒されたことは相当に衝撃的だったらしい。

 二つ名らしきものも持っているようだったからね。


 確かに素の身体能力だけで挑めば、まず間違いなくこちらがやられていた。

 故に少し卑怯な手を打たせてもらったわけだが。

 馬鹿正直に戦う必要なんてないのである。


「あ、あの! 先ほどは助けてくださりありがとうございましたっ」


 ぼんやりと思考に耽っていると、エレナが頭を下げてきた。

 ずっと切り出すタイミングを窺っていたらしい。

 これは悪いことしたな。


 俺は静かに首を振る。


「きに、しなくて……いイ。お、れが、かってに……やったこ、とダ。めいわ、くだった、ら……す、まなイ」


「そんな! いつも困っていたので、嬉しかったです……」


「そ、うカ……」


 聞けば冒険者登録をした頃からずっと付きまとわれているらしい。

 やんわりと拒否しても幾度となく迫られたのだとか。

 利用する宿屋を特定されるようなこともあったそうだ。


 現代日本なら捕まりそうな案件だな。

 まあ、俺もそこまで他人のことを糾弾できる立場じゃないけど。


「私、エレナっていいます! まだ六等級の新人です」


「うぉーく・ぱらじ、っと……ダ。つい、さっき、ぼうけ、んしゃ……と、うろく、をしタ」


「え!? 本当ですか!?」


 えらく驚かれたので頷いておく。


 エレナが言いたいことはよく分かる。

 男たちを返り討ちにした件から、とても新米冒険者とは思えないのだろう。


 俺は冒険者登録の際にも使った嘘の出自をエレナに話す。

 とりあえず辺境の山奥で育って世間知らずだと言っておけば解決する気がした。

 ちょっと楽観的すぎるかな。

 でもその設定で冒険者として登録した以上、ウォーク・パラジットの出自はある種の事実となったのだ。


「なるほど……すごいです! 魔術も行使されていましたし、パラジットさんは器用なんですね!」


 俺の設定を信じたエレナは、キラキラとした目で褒めてくれる。

 冒険者になるのが夢と言っていたので、強さへの憧れがあるのかもしれない。

 純粋な視線すぎて直視できないよ。


 それにしても魔術か。

 十中八九、男たちを行動不能にした時のことを指しているのだろう。


 やはりこの世界には、そういった特殊能力があるらしい。

 たぶん、漫画やゲームで見かける代物とかとだいたい同じ認識でいいと思う。

 ウイルスの説明をするわけにもいかないから、今後もそういうことにしておこう。

 エレナの言葉から魔術の存在を確認できたので、これである程度は自由に症状を使えそうだ。

 何かあれば魔術だと言い訳ができる。


「私は魔力量が少ない上に適性がないので羨ましいです! 何でもいいので魔術が使えるようになれば、魔物とも有利に戦えるんですけどね……」


「た、しか、に……ま、じゅつ、はべんり、ダ」


 俺は分かった風な口ぶりで同意する。


 魔術を使うには、魔力と適性が必要らしい。

 エレナの話を聞くに、それは体質的なものかな。


 あまり聞き出そうとすると怪しまれる可能性があるので、深くは触れないでおく。

 魔術については純粋に気になるから、詳しいことはどこかで調べよう。


 考察に区切りを付けたところで、エレナが一転して真剣な表情を見せる。


「ところで、パラジットさん……」


「な、んダ?」


 胸に手を当てて呼吸を整えるエレナ。

 一体、何を言うつもりなのか。

 数秒の逡巡を経て、彼女は俺をじっと見つめながら問う。


「突然のお願いになるのですが、よかったら私と一緒にギルドの依頼を受けてくださいませんか?」

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