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異世界感染 ~憑依チートでパンデミックになった俺~  作者: 結城 からく


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第19話 商人の優男

 ロイとの邂逅を果たした俺は、護衛と一緒に馬車のそばを歩く。

 彼らもちょうど街へ行くところだったのだ。

 目的地が一致したということで、一時的に雇ってもらうことになったのである。


 大した距離ではないが、きちんと報酬も出るらしい。

 特に断る理由もなかったので、俺も承諾して現在に至る。


 ただ、どうにもおかしいことがあった。

 他ならぬロイについてである。

 今の彼は馬車の中にいて見えないが、この場の人間で彼だけが妙にウイルスの効きが悪いのだ。


 試していないが、意識を乗っ取れない気がした。

 それでも双角の熊のように侵入させたウイルスが殺されているわけではない。

 純粋に心身の抵抗力が強いのだろうか。



>症状を発現【演技Ⅰ】

>症状を発現【精神耐性Ⅰ】

>症状を発現【薬物耐性Ⅰ】

>症状を発現【平常心Ⅰ】

>症状を発現【交渉Ⅰ】

>症状を発現【説得Ⅰ】

>症状を発現【懐柔Ⅰ】



 めげずにウイルスを送り込んでいると、追加でさらなる症状を取得できた。

 やはり上手く浸透していなかったのか。

 ただし、この状態でも意識を奪える自信があまりない。


 取得した中に【精神耐性Ⅰ】とあるので、俺の能力とは相性が良くないのかもしれない。

 まあ、別にロイの肉体が欲しいわけでもないのでいいか。

 なんだか怪しいラインナップなのも触れないでおこう。


 商人だもんな。

 話術に関連する技能を持っていても不思議じゃない。

 さりげなく【薬物耐性Ⅰ】も混ざっているが、俺には関係のない話である。


 その後は何事もなく草原を抜けて町に到着した。

 外壁に囲われた立派な外観で、そこそこ都会な印象を受ける。

 魔物からの襲撃を想定しているのか。


 街へ入る際、少しだけ門番に不審がられるも、ロイの口添えで事なきを得た。

 彼の所属するヴァルリー商会とやらは、相当に影響力が強いらしい。

 人助けをしておいて良かった。

 馬車についていく形で、俺は晴れて街の中へと入る。


 門付近のちょっとしたスペースで馬車が停まり、ロイが降りてきた。


「大変お世話になりました。誠にありがとうございます。こちらが此度のお礼と報酬となります」


 ロイからぱんぱんに詰まった革袋を受け取る。

 ずっしりとかなり重たい。

 結構な額じゃないか、これ。

 護衛たちが羨ましそうに見ているので間違いない。


 さすがに目の前で確認するわけにもいかないので、気になるのをぐっと堪えた。


「きに、する……ナ。こまったと、きは、おた……がい、さま、だろウ」


「お優しいですねぇ……あっ、そうそう。報酬とは少し違いますが、こちらも一緒にお渡ししましょう」


 続けてロイは、金属製のカードを差し出してきた。


 俺は受け取ったそれを裏返したりして確認する。

 何やら複雑な模様が刻まれていた。

 表面には独特の光沢がある。


 ロイは丁寧な口調で説明する。


「こちらのカードを商会で提示してください。私の紹介だと伝えれば、便宜を図らせていただきますので。気軽に買い物の値引きに使ってもらっても構いませんし、何か私に用がある場合でも大丈夫です。あぁ、第三者への譲渡や転売だけはご遠慮くださいね」


「なる……ほ、ド。た、すか……ル」


 便利カードをゲットした。

 こんなにサービスしてもらっていいのだろうか。

 羽振りが良すぎて何か裏があるのではと疑ってしまう。


 まあ、そういった諸々を判断できるだけの材料は持ち合わせていない。

 素直に善意として受け取っておこう。


 ロイの差し出した手を、俺はしっかりと握り返す。



>特性を発現【潜伏Ⅰ】


>症状を発現【狡猾Ⅰ】

>症状を発現【欺騙Ⅰ】

>症状を発現【隠匿Ⅰ】

>症状を発現【魔力制御Ⅰ】

>症状を発現【消音Ⅰ】

>症状を発現【隠形Ⅰ】

>症状を発現【気配感知Ⅰ】

>症状を発現【暗殺Ⅰ】

>症状を発現【影魔術適性Ⅰ】

>症状を発現【隠密Ⅱ】

>症状を発現【気配遮断Ⅱ】



 えっ、なんだこれは。

 明らかに異常だ。

 ウイルスは完璧にコントロールしており、周りに感染が広がった形跡はない。

 つまり、新規の症状はロイから得られたものである。


(おいおい、どう見ても商人の能力じゃないぞ……)


 こちらの動揺を知ってか知らずか、ロイは嬉しそうに笑みを深める。

 僅かに開いた糸目。

 エメラルドグリーンの瞳は、静かに俺を見据えていた。


「――何卒、今後ともご贔屓に」


 それだけ言い残すと、ロイはひょいと馬車に戻って行ってしまう。

 返事をする暇さえなかった。


 俺は苦い表情で唇を噛む。


(厄介な奴に目を付けられたらしいな……)


 さすがに正体がウイルスだとはバレていないだろうが、人外であることくらいは看破されたかもしれない。

 ただ、間違いなく悪意は感じられなかった。

 そこは演技ではなかったはずだ、と思いたい。

 仮に悪意があったとすれば、ここまで厚意を見せる意味が分からないもんな。


 俺の異常性には気付きながらも、敵対したわけではないのか。


 とにかく謎な男である。


(幸先が不安だけど、ここからどうなることやら……)


 何とも言えない気持ちを抱きながら、俺は街の雑踏を進み始める。

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