前世の記憶
私達はあの事故で死んだ。
あれは……前世。
夏休みに入る三日前の事だ。
私達は学校の帰り寄り道をして、ハンバーガーショップで夏休みの計画を立てていた。
「夏祭りはやっぱり浴衣やろ」
「せやな。花火大会も浴衣でええんちゃうん?」
「髪型どないするん?」
「茜ちゃんはショウトカットやさかい細めの青いリボンでええんちゃうん。浴衣の水色に合わせたらええやん」
「せやな。薫ちゃんは髪長いさかいねじりポニーで三つ編みして片方に流すんがええやん。ピンクの撫子柄でピンクかオレンジの花飾りやな」
「沙耶はどうするん?」
「私は輪結びのお団子にする。ふふふふ。トンボ柄の可愛い浴衣なんだ♡」
「プールはお盆前かな~」
「うちまた田舎に帰って手伝いや。お母んの実家が寺なんて勘弁してほしい」
「茜ちゃんのとこお寺さんなん?雑用多いとかなわんわ~。家んとこ親戚のガキんちょ連れて川で泳ぐんだよ~田舎はジジババばかりで、出会いがないよ~」
「ふふふふならば私は図書館で男を見つけよう」
沙耶は無い胸をはった。
「ラノベコーナーで出会い?もやしには興味ないわ」
「異世界転移でゴリマッチョになるかもよ~」
「あ~ハイハイ。今流行りの乙女ゲームで悪役令嬢転生がいいとこちゃうん?」
「もしこの三人で異世界転生したら合言葉を用意せねばならんな」
「合言葉ね~芸者・富士山・天ぷら・乙女ゲーム」
と私が答える。
「くそビッチ・逆ハー・ざまぁ~」
と茜ちゃんが答える。
「本当あんたら高校生お笑い選手権出なはれや~」
「今年のお笑い選手権はもう締切すぎてんねん」
さすが茜ちゃんチェク済みだ。
「来年のお笑い選手権は薫ちゃんもいっしょに出よ~」
「遠慮させて頂きます」
私達は笑いながら店を出た。
ぎぎぃぃぃぃ!!
店の前の交差点でトラクが急ブレーキをかけた。
ぶつん!!
鈍い音を立てて鉄筋を固定していたロープが切れる。
積んでいた鉄骨が私達の方に崩れ落ちた!!
何が起きたのか分からなかった。
目の前が真っ赤になって気が付けばアスファルトの上に倒れてた。
薫ちゃんは私の横に倒れていて……
首があらぬ方向に曲がっていた。
苦しまずに逝けたことに少しだけホッとする。
「沙耶……かお……る……」
「あ……か……」
大丈夫。大丈夫。私は大丈夫だよ。
と声をかけようとするけど。声が出ない。
ああ……また茜ちゃんに心配させちゃった。
茜ちゃんの怒った声が微かに聞こえる。
「なんで……なんで……こんな目に……2人があわなくっちゃ……いけないんだ?」
いつもそうだね。
茜ちゃんは少し怒りんぼさんだね。
野球部のボールが私に当たった時も野球部員の胸ぐら掴んで私のために怒ってくれた。
そして私をお姫様抱っこして保健室に連れていってくれた。
茜ちゃんのファンクラブに羨ましがられたよ。
茜ちゃんは宝塚歌劇団に入れるくらいハンサムさんだからな~
いい子だね。
中身残念なお笑い芸人だけど。
私達はあの日 死んだ。
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「シェイラ……」
「あ……茜ちゃん?今ね~事故で死んだ時の夢を見てた」
私を心配そうにのぞき込んでいる頬を右手で撫でる。
目が赤いよ。
「大丈夫だよ。魔法って凄いね~。切断された手足もちゃんと引っ付いてリハビリすればちゃんと動くって」
「犯人はまだ捕まってない」
「そっか~」
「薫……アマンダは?」
「パニックになったから、今薬で眠らしている。擦り傷だけだよ」
「そっか。良かった」
「回復魔法をかけても流した血は元には戻らない。怠いだろう。ゆっくりお休み」
「うん。おやすみなさい」
しばらく頭を撫でてくれていたが私が眠ると静かに出ていった。
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2118/4/28 『小説家になろう』 どんC
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最後までお読みいただきありがとうございます。
不定期更新なので気長にお待ちください。