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真実

えいっ!(次作投稿の気持ち(笑))

 なぎさ先輩からぽつりぽつりと言葉が出てくるのだが、いかんせん、何が言いたいのか不明だ。

 直球ではなく、例えが多すぎるので、聴いているとだんだんとイライラしてきた。


「あのー。なぎさ先輩、サクッと言ってください。もし僕が男に戻れたらどうしたいとか、このまま女子ならどんな将来を考えているのか、なんてことを聞いても面白くないんですけど!僕は香澄達みたいに頭は良くないし、先輩の話から推測なんて無理です。僕が動揺することだとは思うんですけど、直球で話してください」

「あっ、ごめん。そうね、もうあなたが推測はできないとは思うし、その覚悟があるなら直球がいいでしょうね」


 もう氷が溶けてしまったお冷やを一息に飲み、一息吐いて、なぎさ先輩は真顔で正面から僕の目を見つめる。端正な顔立ちに大きな瞳、耳の上からハラリといく筋かのサラサラな髪の毛が頬につたう。


 ああっ、僕が好きだったなぎさ先輩だ。

 こんなに親密になるなんて思ってもいなかった。

 それに、こんなに近くて、そして遠い存在になるなんて、夢にも思っていなかった。

 片想いの相手に告白するチャンスもないまま、諦めざるを得なかった不運は今も後悔している。

 せめて駄目でも告白だけはしておきたかった。

 だけど、今はもうそれすらも叶わない。


 一瞬で、頭の中を昔から抑えていた想いが駆け巡る。


 今から何を言われても、この時間が僕の心の支えになるのならいいよな。結果はどうあれ、これもいつかは思い出になるだろう。


「はい、先輩。どうぞ」


 なかなか話し出さない、なぎさ先輩に話をするように促した。


「え、ええ。あのね、琴美さん。驚かないで聞いてください」

「大丈夫です。もう心の準備はできてます」

「そう、では。あなたは、これから、男子と女子のどちらかを選べるということです。もう知っているとばかり思っていましたが、違いましたね」

「…………………………、えっ?」


 どういうこと?

 マジか、いや、なぎさ先輩が僕を揶揄っているだけだろう。それに、急に言われても今更、どう生きればいいのだろうか?それに薬の効果は続いているから、女子のままなんだし、仮にヒロトに戻るとしても何をしたい?だが、これって本当のことだろうか?


「せ、先輩? 嘘はよくないと思います」

「まぁ、そうなるわね。だけど、そのくらいの動揺なら良かったわ。とても心配だったからね。さて、琴美さん。私は嘘は言わないわ。それほあなたも知っているわね?」

「はあ、まあ、そうなんですけど。あまりの話だったから、……なら、これからどうしよう」


 目の前が急に回り出した。

 椅子に座っているのに軽い目眩がする。

 心臓の音が早くなり、掌からは汗が滲む。

 ゔゎっ、なんか、なんだか、吐きそう。


「.はい、まずは落ち着こう」


 目の前に差し出されたのは、お冷やだった。

 震える手でそれを握ると、ガラスコップの中の水が溢れそうだった。息を整えながら、コップに意識を集中すると手の震えは多少は小さくなり、無事に飲むことができた。


「なぎさ先輩、そういうことなら僕はまたヒロトになる道もあるということてますよね?」

「そう、ヒロトさんに琴美さん。どちらも選べる訳だけど、それは早く決めなければいけないよ。詳しくはわからないけど期限がもう無い筈です」


「それはどういう根拠があるんですか?僕は一度に多量の薬を飲んだから、もう女子になってしまったものと考えています。それは違うのですか?」

「いえ、それは違わないと思います。だけど、私達にはあなたが、その作用のイレギュラーだと考えているんです」


 んっ、僕がイレギュラーということは、何故わかるのだろうか?全然イレギュラーだとは思わないけど。


「えっとね。イレギュラーだと思っている根拠は簡単なんだ。元々、あなたは女子として生まれたと聞いているわ。なら、TSの薬を飲んだら、もっと男の子が続く訳ですよね。しかし、あなたは女子に戻った。

 そこから推測するなら、また女子から男子にも戻れると考えた訳ね」


 ……なるほど、そう言われると確かに、と思う。

 だけど、元々は女子だった僕を男子に変えた方法がわからない限り、これが正しいと思うことはできない。


「あとね、あの薬の効果について説明書をよく読みましたか?」

「えっ、いや、読んでないですけど……」


 えええっ、と言いたげな顔のなぎさ先輩に多少の納得があったみたいだ。


「あのね、あの薬の説明書の中には『思春期の男女は、その性別が落ち着くまでは、固定できない』という一文があってね、あなたはその期間に該当するの」

「というと、僕はお薬により、女子にはなっているけど、それは固定的なものではない。ということですか?」


「ええ、正にその通りです」

「なら、僕は今からでも、あの薬を飲めばヒロトに戻れるということですよね」

「まあ、私達の見方が間違っていなければ、そうなると思います。それも、かなりの確率で戻れます』


 ……なんだか、嘘のような話だな。しかし、これまでのなぎさ先輩からの情報には嘘はなかった。それに僕にそんな話をして、得することもない。

 強いて言えば、香澄との交際をヒロトとして申し込まれるだけのこと。だが、それも無いな。なぎさ先輩に振られるまでは、ヒロトには考える余地もない。

 それに琴美として、生きることに決めた矢先に方針転換するのも、少し違うだろう。

 僕が、これからを、どう生きるのか、それを決めないと答えは出ない。


「なぎさ先輩、だいたいわかりました。だけど、あと少し真剣に検討する必要があるみたいです。僕だけの気持ちで決めるものでは無くなっているから、関係者の方々を交えて、僕の考えを伝えます。今日は教えていただき、ありがとうございました」


 頭を下げて、席を立つ。

 先輩に対して心ばかりのお礼として、立ち去る前に会計は済ました。

 あと少し、僕なりに調べてから結論を出そう。

 そう思ったから、自然と僕の気持ち、はまあちゃんの家に向かっていた。

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