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二度はないよ!

 あやめちゃんの手を振り解いて、その両手を後ろ手にリボンできつく結んだ。

 この人は、GLなのか?


 はぁはぁと肩で息をしながら、あやめちゃんの悪戯しちゃったという顔に向かって睨みを効かす。


 こっちも少し息を整えてから話さないとあげ足を取られかねないな。

 僕が『激おこ』ということを分からせないといけないし、これからもさせないようにする必要がある。


「あやめさん。そんな趣味があった訳ですね?

 僕にはあいにく、そんな趣味はありませんので、二度はありませんよ」

「いや、ヒロトさん。これは、どちらかといえば女子としてはよくあるスキンシップと思いますけど…?

 それでも、私のことをお嫌いになられるのですか?」


 俯くこともなく、毅然と抗議をする顔からは、悪いことなどしていないという主張が前面に押し出されている。女子としては当たり前ということを言いたいのだろうが、僕の知り得る情報の中では、これが当たり前とは思えない。

 というか、このことを認めてしまうと今後の展開に支障を来たす。僕がしたいことから外れてしまう。僕の将来を左右する重要ポイントとして、あやめちゃんのイニシアチブをキープしておくことが前提となる。

 ここは多少キツめに言って、発言権すら与えないようにすべきだろが、果たしてそこまで譲歩するだろうか?


「ねえ、ヒロトさん? どうして黙っているのですか? もしや、私のことを疑っているのでしょうか?」

「そうだよ。僕はあやめさんの言葉を違うと思っている。それに、僕に嘘をつく人とは距離を置きたいとも思っていたところだよ」


 一瞬、ギョッとした表情が見えたと思うのだけど、ほんのちょっとだけだったので確信が持てない。けど、僕の言葉に対して動揺はしているみたいだ。

 ここらで、早めに決着をつけるべきだろう。


「あやめちゃん。もう二度としないなら、今回だけは許してあげるけど?」

「ええ、そうしていただけたら嬉しいです」


 声のトーンからは、あまり反省しているとは思えないが、このままでは僕にとっても良い状況とは言えない。しばらくは、あやめちゃんのお誘いを断ること、香澄達とも距離を置くこと、その二つだけで様子見をして見よう。

 そのあとに、僕の立ち位置を決めればいい。


 さっさとあやめちゃんの拘束を解くと、「じゃあね」と一言だけ伝えて家を出た。

  僕一人だけ二階の部屋から降りてきたのを見ていた母はリビングで目を丸くしている、

 何が起きたのか、頭の中で考えているのだろう。


「お母さん、あやめちゃんはもう少ししたら帰ると思うよ。それまでそっとしておいて」

「え、ええ。わかったわ」


 母は何がわかったのか、親指を立てて返事をした。

 後から、機嫌の悪いあやめちゃんと出会うのだろうが、その前に消えておこう。


「じゃあ、僕は少し用があるから今日は帰らないと思うよ。友達の家に呼ばれてるから、心配しないでね」

「あっ、そう。でも、あやめちゃんはいの?仮にも婚約者でしょう。お母さんは、心配ですけど?」


 まあ、確かにそうだろうな。

 でも、あやめちゃんとは少し距離を置く方がいい。

 それを母に説明するような暇はない。

 なら、心配をしないようにすべきだ。


「あやめちゃんとのことは少し考えたいし、今は急に色々なことが進み過ぎていると思う。それが良い方向に向かうように僕も考えているんだ。だから心配しないで」

「そう。まあ、二人のことをあれこれ言ってダメになるなんて嫌だから、あなたに任せるわ」


 以前とは信頼度が違うなぁ。

 女子になってからは僕の言葉を聞いてくれる。

 それだけ考えていることが複雑化していることを理解してもらっているのだろうか?

 母も僕の年齢の頃は色々と考えたのだろうな。

 結構、女子高生は大変だし、気をつかう。


 玄関にはあやめちゃんの家の車が停まっているから、裏口から外に出た。向かうは駅と決まっている。

 目的の人物からはお泊りOKとの返事も得ているからあとは行くだけだ。晩御飯の準備して待ってます、という返事に、急にお腹が減っていることを自覚した。

 お腹が空いては戦はできない。まずは腹ごしらえだ大切だ。ご飯のお代わりをしようと心に決めた瞬間だった。


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