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いいところ。

 メールの差出人は、言わずと知れたおバカな人だった。そう、あの母でした。


「今日は泊まるようにお誘いなさい♡」


 ……近頃、スマホデビューしたくせに、ハートなんて使うなよ。これでも側から見れば、女の子が二人でいるだけでしょう。


 もう、なんか気分悪いよ。

 目を輝かせて僕の本のコレクションを見たり、ベッドの上のぬいぐるみを抱っこしたり、ソワソワしているあやめちゃんを見るのはかなり新鮮な感じだ。

 あんな姿を学内で見ることなんて絶対無いと断言できる。


 凛々しさが、あやめちゃんの特徴というか、代名詞にまなっている。その本人が、ここまで崩れるとは夢にも思った事はない。

 それだけレアな状況だった。


 少しずつ、落ち着きを取り戻したあやめちゃんに例の質問をしてみることにした。今は自分を取り繕っている最中であるから、秘密の話もぽろっと離してしまうかも知れない。


「ねえ、あやめちゃん。

 あのね。仮の話だけど、ホントに仮だよ!

 もし僕らの子供が産まれたら、どちらの性別がいいと思う?」


「…………ええええっー、そ、それは、仮にとはいえ

 私とヒロトさんとの事ですよね。

 それも、あんなことをしなければ出来ない訳で、でもヒロトさんが私のことを求めて下さるのなら、それはとても嬉しいことです!!」


 顔を真っ赤にして、そんな事を言う。

 だから、仮にと二回言ったんだけど、この人は聞いちゃいない。

 結構面白かった。僕としては残念な人と認定し、そのじゃんに分類することにしよう。


「ほら、正気に戻ってください」

「えっ、私はいつでも本気ですわ」


「いや、ちげーよ! 正気になりなさいと言っている訳で、本気は要らない!」

「そうですか、私は正気ですし、その上で本気な訳です。つまり心の準備は万全な訳なのです」


 そう宣言すると、僕に向かってにじり寄る。

 その分、僕は後ずさる。

 ここで捕まったら、何されるかわからない!

 しかも女の子どうしじゃないか。

 それは違うと思う。そもそも僕はTSだけどGLではない。……いや、あまりの事で思考が脱線した。


「まって、あやめちゃん。ねえ、まってよ!」

「どうして? 私達は婚約しているから、おかしな事は無いはずよ」


 後ずさる場所がもうない。僕に迫るあやめちゃんの両肩を後ろに戻して抵抗するが、力の差は歴然としていた。彼女の運動神経は並みじゃない。


「いやっ! こんなんじゃ絶対にイヤっ!」

「大丈夫、心配しないで」


 慣れた手つきで、僕の上着を脱がしながら首筋に舌を這わせているようだ。生暖かい感触が一層不安を駆り立てる。それと共に、快楽の渦に飲み込まれそうになってきた。


 ……っと、だめ。やめて、いや。


 もう声には出ない。

 抱き抱えられながら、ベッドに運ばれ、仰向けにされる。スルリと下着に手が入りそうだ。


 くっ、もうダメ。


 あっ、もう………らめーっ!


 頭の中がとろけそうだ。

 ああ、なんだかもういいよ。


 しばらく色々な事をされている最中、突然、ある音が鳴った。


「ピローン」


 ……メールの音だ。

 少しだけ正気を取り戻し、あやめちゃんの手を振り解くと、スマホを手に取った。


 誰からのメールだろうか?

 誰でもいいから助かった。


 えっと、差出人は……お母さん?!

「頑張りなさい!」だと!


 …………何を頑張れというなか?

 というか、助けてくれたんだろうか?


 そっと近づくあやめちゃんから逃れ、ブラウスのボタンをとめ、スカートのチャックも上げた。


 やはりこの人は手が早い!

 何人と遊んでいるのだろうか?

 そう考えると、複雑な怒りがふつふつと込み上げてきた。

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