彼女の大切なもの!
かの変態さんは、我が家に丁重に扱われている。
しかし僕から見たら、やはり変態さんだ。
あやめちゃんに、ここまで常識が無かったとは思わなかった。今はまだボロを出していないが、そのうち本性を見せるだろう。とはいえ、礼儀作法は堂に行っているし、何処から取り出したのか分からないが、手土産も持参していた。
だが、変態なのだろう。
部屋に入った途端に僕の下着とかを見つけるはずだ。
そうしたいと、彼女の目が訴えている!
一応、母に挨拶してから僕の部屋に入った。
もちろん片付けてある。
少しリビングにあやめちゃんを待たせて、僕と母で片付けたのだ。ゴミや不要なものは、隣の兄の部屋に放り込まれた。ゴミ袋の中にいる物も要らない物も全て押し込んだ。約四袋を兄の部屋に放り込んで、俗に言うコロコロローラーで部屋の絨毯を掃除する。
ここで重要なことは、掃除機はバレるので使わないということだ。『どうせ見栄を張るなら完璧に!』という母の好きな格言と同じように振る舞う事になるとは夢にも思わなかった。
あの格言を作った人物がまた曲者だ。
母の母、つまり僕のお婆ちゃんだった訳だ。
この格言の為に、母とさくらさんの出会いがあった訳だが、無駄に役に立つ。しかも腹が立つ。
ほぼ大丈夫と思い、部屋の中をぐるりと見渡すが、完璧だった。
ホッと一息したいところだが、あまり客人を待たせるのは失礼だ。母と二人でリビングに戻り、僕の部屋に行くことになった。
さて、ここから失敗しないように気をつけよう。
「あの、質問していいですか?」
「ええ、まあ。どうぞ」
突然のあやめからの申し出に戸惑いながらも聞き耳と立てる。僕を、困らせるような事はないよな。
部屋の中の、丸テーブルに向かい合わせで座り、どこからでも来いという心構えに切り替える。
さて、どう出てくるか?
「ねえ、琴美さんは、いつもこのお部屋で何をされているのかしら?」
かなり一般的な質問だったが、本当のことは答えたくない。なら、事前に考えていた嘘を並べるようにしよう。
「えーっと、それは学校から帰ってから、僕からここで何をして過ごしているのか?という意味ですか?
「そうです!」
さてさて、正直に答えてもいいけど引かれたくはないかな。なら、別の話をするだけだ。
「その勉強机の上のPCで動画とか音楽を聴いてることが多いかな?」
「どんな曲何ですか?」
んーっと、こらぐらいは正直にかいとかを返しておこう。
「結構、洋楽が好き。特にビリージョエル!
他は、アニソンとかかな?」
「わあ、琴美さんの生の趣味が聴けるなんて今日は最高の日ですわ!」
……どこまで僕のことが好きなんだよ?
少し大袈裟じゃないか?
「あやめちゃんこそ、家の中ではどうしてるの?」
単なる簡単な質問に、あやめはポッと頬を朱に染めて悶えはじめた。僕は変なことを言ったつもりはないのだけど?!
「えーっと、えーっとね。引かないで聞いてくれる?」
「引くもなにも、そんなことは今までもなかったでしょう」
軽く怒った顔をするが、あやめから正直な事を聞き出すためだから仕方ないし、これぐらいでは、終われない。
「実は、ヒロトさんとの思い出の物や、ヒロトさんのビデオをよく見てるんだ」
…………正直、引くなと言われたが、やっぱ引いたよ。
「へっ、へ〜っ! そうなんだ」
「勝手に撮ったものだから、ごめんなさい」
しおらしくなった、あやめちゃんの顔は何故か赤くなっていた。そうか、昔からの許婚だった僕だけは笑ったり、本当は引いたりしてはいけない立場にあるんだな。
ずっと片思いを強いられて来た訳だ。それはそれで可哀想な話だ。そう思えば、彼女を無下には扱えない。
さて、ハキハキしていたあやめちゃんは、今やふにゃふにゃになっている。
どうやって、この場を乗り切ろうか、そう思っていた矢先に一通のメールが届いた。
そのメールのせいで、もっと大変になってしまった事を理解した。
あーあ、やはり失敗だったということか!
心の中でブツブツ言いながらも、恥ずかしがりながらも熱っぽく話すあやめちゃんの気持ちに心が傾いていくのを自覚した。
何故かブクマが……短期間で凄い。
どうもありがとうございます。




