やはり!
生徒会室から出た僕を待ち受けていたのは、探していた香澄とゆりはの二人だった。
心中では驚いたけれど、なるべく表情には出さないように気をつけた。この二人が味方であるとは言いがたい。何を今更という感じでもある。
その二人は僕の前に立っているものの、視点が定まらない。どちらが話しかけるかを決めあぐねているように見える。どちらにしても時間を取るだけなら迷惑な話だ。
「ねえ、僕はこれから予定があるから、話がないなら通してくれないかな?」
そう言って、二人の間に強引に割り込んで突っ切ろうと思ったのだが、逆効果だったみたいだ。
二人とも協力して僕をその場に留めた。
「あのっ、琴美ちゃん。話があるのだけれど?」
「そう、僕には無いから、それでいいでしょう」
そうだろうはとは思いながら、素っ気なく回答して更に前に進もうとした。今の時点では本当に話すことなんてない。
「そこをなんとか、お願いします」
「僕は君達に何をされたんだろうね?僕には怒る理由はあっても話を聞く理由はないよ」
ここで二人が両腕に縋り付き『ごめんなさい』というありふれた言葉を使った。もちろんそんな言葉は心まで届かない。自分達の事だけを考えて言い放った謝りの言葉なんて意味がないし、それ以上に僕の気持ちを無視する行為に嫌悪感が浮かんでくる。
「ねえ、僕は君らに何か嫌なことをしましたか?」
「いえ、何もなかったです」
答えたのは香澄だった。俯いたままの声音からは緊張感が伝わってくる。多少は僕への行為を反省しているみたいだ。しかし、僕が感じた寂しさと同じ衝撃は絶対になかっただろう。
「そう、ならどうしてあんなことをしたんですか?
僕は、もうあなた方を信用していません」
「えっ、あーっ、そ、そうだよね。ごめんね。ごめんなさい!」
香澄からは本心から謝っていると思われる気持ちが伝わってくる。やっと僕が言いたいことを感じてくれたらしい。
「今更、謝って済む問題じゃないよね。僕にはもう同学年の友達はいないと思っているし、そう仕向けたのは君達だと思っているよ」
「まって、わたしたの話も聞いてくれないかな?」
ここでやっと、ゆりはから僕に声が掛かった。
いまのタイミングということは、僕らのやり取りを聴きながら僕のことを分析していたということだろう。
迂闊に話にのる必要は無いな。
「ゆりは、……さん。どう分析したのでしょうか?
その結果は意味をなさないでしょうね。だって本当には意味がない話なんだから!」
「……うぐっ。しかし、それでも聞いてもらいたい」
更に僕に食い下がるゆりはの発言は珍しい。
ゆりはが物事に白黒付けるのは、このは先輩より早い。僕が軽く見られているという感じは無いから、やっぱ必死なんだろうな。なら、最後に聞いてから退散した方が禍根なく僕らの関係を清算できる。
「わかった。手短に」
「うん。えーっと、…………」
話は要領良く話された。かなり上手な語りだったと思うが、それだけだ。そう割りきらねば、なにを信じればいいか分からなくなる。
かなり短めに話をしてくれた内容は、ある一人のメールとほぼ同じ内容だった。
ある一人とは、みさき先輩のことだ。
どちらにも偏ることもなく、第三者の目線で語ってくれていたメールには感謝している。
おそらく、香澄のしでかした間違いについて、自分のせいと思っている感が見てとれる。
昔から、そんな人だったのだろうな。だからヒロトの時に片思いをしていた相手として本心から良かったと今更ながら思ってしまう。
しかし、それとこれとは別だよな。
真実を知るにつれ、僕の落ち度が無かったこともあり、やはり二人を簡単に許してあげるなんてできないと思った。
「香澄とゆりは、もう全て分かった。今までの事は許すよ。ただし、条件がある」
「琴美が許してくれるのなら、私達は何でもあなたの言うことに従うよ」
僕の一言で、二人ともホッとした様子が伺える。
「じゃあ、遠慮なく言うよ。
これからは、僕に関わらないでもらいたい。
それだけだ。難しい事ではないでしょう。
僕は一人でやっていくから、友達はいらない。
じゃあ、いままでありがとう。さよなら」
えっ、という顔の二人を退けて足早にその場を離れた。二人とも追ってくる様子もなかったから、早々に学校の門を後にした。
学外に出ると、溜め息が自然に出た。
かなり緊張していたのだろうな。
まあ、予定通りになった訳だし、二人とも明日から知り合いになるだけだ。
それぐらいでもかなり甘いよな。
そう考えながら歩いていると、駅までの道のりは短く感じた。




