自分の気持ち
スマホで繋がったのは従姉妹のまぁちゃん。
事の次第をかいつまんで話すと、いともあっさり『馬鹿じゃないの』と罵られた。
まぁちゃんの説明は簡潔だ。
ヒロトの頃と心の中での思いは同じだと思う。
けれど、感情面はすっかり違うはずだろうから、昔どおりになれるわけがない、とのことだ。
そりゃあ、前よりは感受性が豊かになったとは思うし、人の目をかなり気にするかな?
他には……こんなに他人というか、人のことを考えていることなんてなかった。そうか、だからか!
やっぱ、ヒロトと同じには振る舞えない訳だ。
急に心が萎えた。
食欲も無いのでお弁当が無駄になった。
でも、これはこれでしょうがない。
昼休みが終わるまで、あと三十分あるけど、ここにいる理由も無くなったから、トボトボと教室の自席に戻った。
隣の席の香澄はいないし、ゆりはの姿も見えない。
これなら落ち着いて座っていられる。
鞄からイヤホンを取り出して、再び音楽を聴きながらスマホのランキング上位の話題を読むが、頭に入らない。
しばらくして机に突っ伏して寝ていたら、不意に肩を叩かれた。振り向くと、見たこともない女の子だった。何の用だろう?
その子は無言で、僕に折り畳んだメモを僕に手渡すと一礼して何ごともたなかったように教室から出て行った。
左手に渡されたメモは白い無地の素っ気ないもので、おおよそなんちゃらレターの類には思えない。
カサコソ小さな紙特有の音を立てながら開くと、一言だけ書いてある。
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「放課後に生徒会室に来て欲しい」
香澄、ゆりは
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……あの二人からか、どうして教室の中で話しかけてこないのか、もう虐めないのか、他のクラスメイトはなんで僕に関わらないようにしているのか?
色々と疑問が浮かんで来る。
まあ、この二人に会えば、なんか分かるということだけど、それまで待つか、それとも他から情報を集めるべきか?
少し思案した後、このは先輩とあやめちゃんにメールで聞くことにした。
本来ならこのは先輩だけで十分だけれど、念には念を入れた方がいい。特にこんなおかしな雰囲気の場合は、しっかりした情報を集めておいた方が間違わない。
その後、保険のためにあと一人だけ聞くことにして、放課後の出来事に備えた。
十六時半過ぎに最後の授業が終わった。
午後の授業でも、香澄とは話すこともなく、お互いに顔を見ることもしなかった。
このは先輩とあやめちゃんからのメールには、僕への彼女達の行き過ぎた悪戯に、クラスメイトや有志が立ち上がって吊るし上げをくらったという内容だった。
なるほど、クラスの劇の主役が後夜祭やクラスの打ち上げにも来ないことをネタに虐められたという訳だ。
だから、教室内に居場所がないということか。
だけど、それだけなら、クラスメイトが僕を避けている理由が解決しない。
他に何かあったのだろうか?
そう考えている最中にもう一人からのメールの着信音が鳴った。
メールの長い本文を読むがどうも信じがたい。
だけど、今の状況なら、この人が一番まともな人なんだろうな。
しかし、このは先輩の考え方は納得できるが、あやめちゃんのことは、引っかかる。
まさか、そんなことする人とは思えないし、彼女からは実害は無い。
しかし、クラスメイトの件を納得するのは、あやめちゃんの関与しか理由がない。
本当のことを知っているなら、彼女と敵対する側に立つことになる。たぶん、多かれ少なかれ、事実を知った人がこっそりと広めたのだろう。
だから、自分が疑われないように僕と距離を置いているのだろう……としか仮説が立たない。
やはり、事実は自分で判断するしかない。
自分が正しいと思う方が自分にとって本当であり、それが、たとえ間違っていても、他人に被害が無いなら後悔はしない。
だから、あとは僕の気持ちに素直になるだけだ。
ふと腕時計を見るともう十七時近い。
スッキリしない、どちらかといえばモヤッとした気持ちだが、行かないといけない。
今までの事を全てを白紙に戻したいとの思いから、全てのメールを消して、香澄達がのもとに向かった。




