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ともだち

 緩い坂道を登れば正門が見えてくる。

 自転車で行く時は、キツい坂だと思っていたけど、歩きの時は爽快だ。登校しているといった感じがありありで、自然と新鮮な気持ちに切り替わる。



 ── んーっ、青春してるな!



 校門に差し掛かると、このは先輩がいた。

 今日は服装のチェックの日なのだろうか?

 普段なら風紀委員のみで行うはずたが、このは先輩のことだから他に狙いがあるのかもしれない。


 このは先輩に一礼して、すました顔で通り過ぎる予定だったが、見事に捕縛された。

 つまりこのは先輩の目的は僕だった訳だ。


「琴美さん、昨日はどうしていたのかな?

 お姉様がどれほどの心配されたかなんて、知らないでしょう」

「えーっと、ごめんなさい。あやめちゃんにはすぐに連絡します。これで許してください」


「そーね、あやめお姉様は許してくださるでしょうね。しかし、私はそう簡単にはいきませんよ。

 そりゃあ香澄とゆりはから色々なことをされたんだろうけど、なぜ私に話さなかったの?

 あなたの姉である私に話さないなんて、かなり酷いよ。あやめお姉様から、私はあなたの事を守るように言われているのは知っているでしょう。

 さて、私にどんな謝罪をしてくれるのかしら?」


 うーっ、僕は昔から、この人の勝ち誇った顔つきを受け付けられない。

 どこか見下したような、というか見下されている感がはっきりと分かるから嫌なんだ。

 となれば、素早く逃げるが勝ちだろう。


「このはお姉様、ご心配をお掛けしてごめんなさい。これはお詫びのしるしです。少ないですけど、どうかお納めください」


 サッとスカートのポケットからパスケースを掴んで、その中にあるプリペイドカードを握らせた。

 このは先輩は、一瞬でカードの種類と金額を見てから胸ポケットにしまい込んだ。


 ……成功したみたいだ。


 昔、ゆりはが姉を怒らせた時の避難方法として、ランチタイムに話していたことを試したまでのこと。

 ここまで効果てきめんとは思わなかったが、何か欲しいものがあったのだろうな。


 申し訳なさそうな顔をして、このは先輩を仰ぎ見ると、そこには別人がいた。


「んっ、ううんっ、どうやらあなたもかなり反省しているみたいね。たぶんあやめお姉様もお許しになるのだから、このくらいにしておきましょう。でも、次は無いわよ」


 そう言いながら、僕に背を向けて校舎の方に立ち去って行った。やはり現金な人だ。


 しかし、このは先輩の話の中では僕の姉がこのは先輩だと言っていたな。そんなん知らないぞ!

 スマホを取り出して、学校サイトに繋いだ。

 その中の僕の個人フォルダを開くと未読メールが沢山届いていた。


 ここ数日の分だけ、順を追って見ていくと、あやめ先輩から妹指定のメールが来ていた。

 それもTOではなく、MLとなっている。

 ……この場合のMLって、先生がよく使うメーリングリストの略だろうか?


 なら、全生徒に一斉送信されたことになる。


 ……うそだろ!


 また頭の痛いことが加わった。

 あやめちゃんは、意外とトラブルメーカーだったのだろうか?


 でもきっと本人には悪気は無かったのだろうな。

 あの人はそんな人だと思う。

 さて、そんなことより、教室に向かおう。

 これからもっとハードなことがあるかもしれない。

 でも、逃げない。


 叔母さんやまぁちゃんとの約束だし、僕も限界だ。



 そもそも香澄とゆりははやっぱり僕にとって大切な友達だ。

 悪戯の理由を聞いて、それでも離れるのなら……、はなから友達じゃなかったということだろうな。


 もともとぼっちのオタクヤローなヒロトに戻るだけだ。でも、今はあやめちゃんがいてくれる。

 このは先輩もいる。


 一人じゃ無い、あとは進むのみ。

 そう思いながら、髪を結んでいたリボンをキツく結び直した。

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