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私は名無し(TT)

なんだか、まだ長くなりそうだよ(笑)


あと、2話でブクマ5つ、評価まで頂いて


と っ て も、と っ て も


嬉しいし、感謝していますし


ありがとうなのです!!!


 さてさて、今日は散々だった。

 僕の人生の中では、最悪だと断言出来る。

 何故っていうと、僕が医師に説明した内容がかなり曲解されていたらしくて、女らしさの矯正が必要と判断された訳だ。


 処方箋には、お茶とお花、裁縫にピアノ、習字にお菓子作り、料理教室、ダンスとバレー、アロマに風水、はたまた語学の数まで処方箋に書かれていた……らしい。


 らしいって、両親が僕に言ったんだから、信じる他はない。だって、彼等を疑うともう何を信じていいかさえ分からなくなるもんね。

 ということで、僕には自由時間が無くなった(涙)


 話は飛ぶがまだ自身の事を姿見などでは見てない。

 だが、かなり可愛いらしい。

 しかし、残念なことだが、僕の根がヘタレなので鏡を見る勇気さえ無い。

 まあ、男子としてもヘタレだったから、基本的にヘタレを引きづり就職もしないで、ヒッキーとなる予定だったが、少しだけ変更になった訳だ。

 でも、今となれば考えようによっては今までよりもラッキーなことも多い。

 親父と母親から内緒でお小遣いが貰えたり、一人暮らしをしている大学の兄貴からも図書カードやら、家庭教師の旨味として生徒の家から貰った物を送って来てくれる。


 ……今までこんな事は無かったよな。


 ………………やっぱり女はずりぃ!


 全てのジャンルを余すことなく、詰め込み授業を家庭教師から受けて、再び登校することになったが、いつもの自転車での登校は、父親から却下された。

 このため渋々と歩いて家を出て、公園を抜けた辺りで目新しいスポーツカーのグラサン野郎からクラクションを鳴らされた。

 どうも運転手から手招きされたようだが、これはガン無視して、走り去ろうとしたのだが、そのサングラス男が足早に追ってきて、僕の華奢な腕を掴まえた。

 思わず、叫ばないとって思い、「キャー」って叫ぶ寸前に、その不審者が兄だと分かり、安心してしまった。しかも、不甲斐ないことに涙がポロポロと落ちてしまったみたいだ。

 けど、男の時よりも泣く感覚は自覚が薄く、やはり女子って微妙に感受性が高いんだと思ってしまった。


 真っ赤なスポーツカーは、両親が僕の送迎を条件に兄に買ってあげたものと分かるのは、後部座席に乗せられてからなのだけれど、それまでも紆余曲折というか、小さなドラマが待っていた。


 目の前に映る真っ赤なスポーツカーの周りは、白いチョークで何やら記され、赤い切符が切られそうな様子だった。

 兄の顔を横からチラ見するが、固まっている。

 ホント、なんとも頼りない男だ。


「……あのー、お巡りさん」

「んっ、なんだ君は? 邪魔だから退きなさい」

「えっと、お巡りさんのお仕事の邪魔をするつもりはありません。実は、聞いて欲しい事があるのです」

「えっ、それはどんなこと?」


 ふふっ、所轄のお巡りさんが釣れたぜ!

 何にしょうかな?

 ああ、あれがいい。

 一番迷惑が掛からないよな。

 僕も策士よのう(笑)


「いえ、私がここを通る時に、私の事を見ながらニヤリと笑って、ズボンを下げたおじさんがいたから、この方に助けを求めたのです。だから、この方の駐車違反は、私のせいです」

「そうですか、しかし、前にも居たんですよ。

 駐車違反の彼氏を庇う女子高生がね!

 もう、その手にはのらないよ」


 あらら…………ダメだったか?

 兄よ、ジタバタせずに成仏しておくれ。

 兄の肩をポンっと叩いて、学校に向かい歩き出そうとした瞬間、小女神の声が聞こえた。


「あらっ、それは大変ですわね。

 ヒロ様もお気の毒に、そこのお巡りさんも相手が女子高生だからといって、ちゃんと聞かないなんていけませんわ。交番がダメなら父にお願いしましょうか?」

 自信に満ちた言動の主は、峯岸ゆりはだった。

 優等生でクラス委員長でもあり、実はコアなアニオタという二面性を僕は知っている。


「あっ、峯岸管理官の娘さんでしょうか。失礼致しました」

「いいえ、いいのよ。ただ、私も変質者には会いたくないから、良ければそちらのお車で学校まで送って頂けるのなら有難いのですけれど?」


 峯岸の視線は、兄ではなくお巡りさんに向けられているが、その意図をはじめ分からなかった。


「んっ、おい君、この車は君の物ですか?」

「ええ、僕のです」

「なら、この女子高生達を送ってもらえませんか?

 やはり、峯岸管理官の娘さんの言うとおり、危ないかもしれない。だから君は、善意の協力者とみなして、ここでの駐車違反は無かった事にしたいのだが?」

「結構です。お二人を送るのは任せてください」


 いつしか敵意をむき出しにしていた二人が、かたい握手を交わしている。


 兄よ。

 まあ、気持ちは分かるが、やっぱ気持ち悪いぜ!

 っと、峯岸は『ハアハア』言って涎を垂らすなよ。

 んとにBLやGLが趣味な残念女だよな!

 お淑やかにしていたら、香澄と同レベルの美少女だと思うんだけれど……。

 ホント惜しいなぁ。


 学校までは、普通にアニメの話題で兄と話をしていた峯岸から、いきなり僕に質問が投げかけられた。

「ねぇ、ヒロトちゃん。お名前は決まったの?」


 ……ああ、それってまだ決まってないよ。

 どうしようか?


「あら、その顔はまだみたいね。なら、美琴はどう? あとは撫子とか?」


 また、アニメの名前なのか?

 だがしかし…………、琴美ならいいんじゃね?

 両親共に最後は僕に任せると言い残して昨晩の検討も打ち切られたから、チャンスだよな。

 そう、僕は琴美だ。


「あっ、あの、あのねっ! 僕の事は、琴美と呼んでください」


 何故か緊張して、耳まで真っ赤になっているだろうな。心臓もバクバクいっているし、何より恥ずい。


「へぇー、良い名前じゃん。

 じゃあ、琴美、これからよろしくだね!」

 隣に座る峯岸の溢れんばかりの笑顔は、自分の事のように喜んでいてくれる。

 これから、この子達は僕にとってかけがえの無い友達になるのだろう。この笑顔から僕は偏見を捨てて、みんなを純粋に見なおすべきだと、心から誓うキッカケになる出来事だった。

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