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二人の悪戯

少し短めです。堪忍ね!

 結局、お昼ごはんは全て食べきれず、弁当箱にはかなりの重さが詰まったまま。その重さは、僕の心苦しい重い気分を表現しているみたいだった。


 昼休みが終わって、午後の授業が始まると、隣に座る香澄が手を挙げて、「教科書を忘れたから見せてもらいます」と先生に言って、僕の机に香澄の机を引っ付けて来た。


 当然、これは香澄の嘘だと、クラス中が予想できる簡単なことなので、怪訝そうな顔をする者もいた。クラス中で一番の真面目で美少女という看板は伊達じゃない。

 その香澄がクラスの全員がいる中で、先生にこんな事を言い出すとは、思ってもみなった。

 クラスのみんなも同じだろうな。


 いそいそと机を引っ付ける香澄の顔を見上げると、チラッと舌を出して嘘を吐いたと僕に伝えている。その仕草が僕に向けてとは、思わず感動で心が震える。でも、どうしてなんだろ?

 という疑問だけは拭えない。


 可愛い仕草で、思考能力を奪われかけたが、なんとか思い出した。


「さあ、琴美ちゃん。教科書を見せてくれる?」「いや、自分のを出せばいいでしょう。みんな嘘だと知ってるよ」


 平然とした声で返事をするものの、顔は見れない。顔を見た瞬間に僕の負けが決まってしまう。あの、屈託の無い笑顔には逆らえない。


「ほぅ、私に助けを求めたのは誰でしょうね?

 一緒に着替えに誘わないと、更衣室には入れない子は誰かな?たまにトイレで手を振っているあなたにハンカチを渡す役目は誰でしょう?

 お昼に……」

「まてまてまてまてっ! 待ってください。

 香澄ちゃん。教科書見せるから、それ以上は言わないで」


 香澄はニコリと微笑むと、机の下でそっと右手を握って来た。……なんてことを。

 恥ずかしいから、強引に手を振って避けるが、手首を捕まえられるとどうしようもない無い。

 そのまま、しっかり右手は繋がれる。

 これって、なんの意味だろう?

 しかも右手が捕まえられたままだから、シャーペンも握れない。

 成績は良くもなく、悪くも無いけど、なぎさ先輩の体育の時以外は、意外と真面目に授業は受ける方だから、かなり居心地が悪い。


 ジロっと香澄を睨むけど、全く意味が無かった。それより驚くような展開になってしまった。今日、泊まりにおいでと香澄がノートに書いてくる。


 フルフルフルと首を横に振り、即断で断ると、香澄の暴走は益々エスカレートしていく。

 右手は香澄の左手から右手にいつの間にかチェンジしていて、左手は悪夢のように僕の膝の上に載っている。


 恐怖と共に香澄の顔を覗き込むと、そこには香澄と似た鬼がいた。


「お、お泊まりなんて楽しみだな!」

「そうでしょう。やっとわかった?」


「はい、ついさっきから、少し分かりました」

「あらっ、まだ良く分かってないみたいね。

 なら、こうしましょうか?」


 ふふふって小さく笑う声が聞こえた後、膝下のスカートから這い上がり、内股を撫でる。


 くっぅ……。

 ダメだ。

 声が出るよ〜〜!


「ぁっ、いやぁ。や、やめてよ」

「ほぅ〜、やめてよ?」


「ゃ、ゃめて、くださぃ!」

「まあ、良かろう。なら私の言う事に従う?」


 キラリと光る香澄の瞳には、邪悪なモノが取り付いているみたいだ。あの、品行方正な香澄と同一人物とは思えない。


「し、従います」

「まあ、良かろう」


 そう言った途端に、香澄は授業の間だというのに我慢出来ずに大声で笑い始めた。


 ☆


「香澄ってば、馬鹿じゃない? 私が教えた悪ふざけもここまで来たら琴美が可哀想だよ。

 おまけに先生にも怒られるし、信じらんない」

「いやいや、悶える琴美は可愛いくてね!」


 ……この二人がグルになって、僕を弄んだわけか。

 二人とも悦に入っているが、僕には大迷惑だったよ。おかげで僕も声が漏れそうだったよ。



 しかも…………気持ち良かった。

 これだけは口が裂けても二人には言えない。



 しかし、そう思っているのも束の間で、三十秒後には、頬を赤く染めた僕の姿が映った写真がメールと共に送られて来た。


『この写真を売れば、五千円札にはなるけど、可哀想だから、本人には特別に三千円に負けとくわ』


 こんなメールを出して来るのは、この学校がいかに広いとはいえ、一人しかいない。

 言わずと知れた、ゆりはの姉であった!


 くうっ、三千円はこの二人に払わせてやる!

 そう誓ったのだが、その二人からも強制的に違う写真を買わされる羽目になるとは、神様でも予想出来なかったに違いない。


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