第一章 僕の日々
僕の名前は日比谷俊樹。高校二年生だ。
身長は平均。成績はいい方。ルックスについては、「知的そうだけど馴染みやすそう」という評判を受けている。天然でこげ茶の髪に、銀フレームの眼鏡。近視ではなく遠視だ。
そして、クラスでは学級委員長をやっている。自ら望んでそうなったのではなく、高1の時に仲良かった友達に推薦され、クラスメイトも賛同したせいで(やや強制的に)選ばれたのだ。この場合、だったらお前がなれという反論は通用しないから不思議だ。
もっとも今は、このポジションが嫌いではないのだけれど。
「礼!」
「ありがとうございましたー」
終礼が終わり、一日が無事終了する。
「おーい、俊樹!」
鞄の持ち手に手をかける暇さえ与えず、背後から声がかかった。
「きょう提出の課題まだ終わってねーんだけど、うつさせてくれない?」
茶髪のチャラそうな男子がノート片手に懇願してくる。
俺を学級委員長に推薦した張本人でバカでアホなことで有名な海音だ。
「またか?」
うっとうしそうな僕の声を感じ取ったのか、海音はさらに頭を下げる。
「頼む俊樹、もうお前だけが頼りなんだ!これすっ飛ばしたら明日の朝日が拝めない可能性が著しく大になる……」
何を言いたいのかわからないが、要するに自業自得だ。
「僕、この後委員会でないといけないんだけど」
「すぐ終わるから!俊樹が帰ってくるまでに終わらせるから!こう見えても、課題写すことだけは一流なんだ」
「自慢になってないぞそれ」
呆れつつもノートを差し出すと、海音は速攻で僕の手からノートを奪い取った。
「この恩はいつか返すからな!」
「じゃあ今度スタバ奢れ」
「いやそれはちょっと厳し……」
「いいからさっさと写せバカ」
僕は海音に背を向けて駆け足で委員会の集合場所へと向かう。
何の変哲もない、普通の日々だけど、僕はこの生活が気に入っている。
友達はバカだけどいいやつばかりだし、授業はたまに難しいけど面白い。
何も変わらないまま、無事に卒業できたら、それに勝る幸せはないだろう。
そう思っていた。