作戦会議
~前回の流れ~
郡 「魔法科も相手取るとかキツイ…」
御上土「いざとなったら全員ぶっとばせばいんじゃね?」
「御上土くんの言葉は非常に心強いのですが、…現実的に考えて、そう簡単に事は運ばないかと」
「…惣火。何が言いたい」
睨みつけてくる御上土くんの様子に頭痛を覚えていると、東雷先生が補足するように口を開きました。
「元々治安維持部隊は魔法科が発祥だ。
魔法ってモンは、普段は凡庸な才に過ぎなくても暴発となるとその威力は計り知れないからな。数多くの不確定因子を抱え込む魔法科には設立当初から抑止力としての治安維持部隊が組み込まれていた。
―分かるか?個々で独立二家並なんだぞ?」
単純に考えて、巧闇くん、光井くん並の実力者がわんさかです。そんなのを纏めて沈めるとか…。無謀にも程があります。
「『教義』への信仰心が抑圧の鎖の代わりを果たしていますが、それでも彼らは一人一人が爆弾を抱えているのと同じです。一つ一つと対峙することは易しくても一斉に攻撃をしかけられたら、いくら防御に特化した御上土くんでも危険がないとは言えませんよ?」
「っち。…ならおまえが守れ。無効化は得意なんだろうが」
まあ確かに、自分が使役する魔法と同じ系統の魔法というのもあって、解除を施すのは属性魔法に対するものよりもかなり余裕なのですが。
「目の届く範囲でしかできませんよ。さすがに」
「おい惣火。視認できれば可能とか聞いてないんだが」
「え?解除ならば式が完成する前に介入すればいいだけですから割と簡単に―、…先生?」
「…なんでもない。惣火はそういうヤツだったよな。続けてくれ」
なんだか先生がぐったりしていますが、…まあ、よく分からないので放置の方向で。
「一気にカタをつけたいのは分かりますが、御上土くんや郡と相性の悪い属性が相手になった場合、分が悪いでしょうし、数の暴力で押されても困りますから。私が色々やって撹乱しますから、それで混乱したところを御上土くんと郡が高火力で叩く、ということで―」
「待って。ゆま待って。なに参加する気満々なの」
「一理あるな。万が一が起きたらそれでいくか」
「御上土も待って。ゆまは女の子だよ?」
解せない、という顔をしている郡を見やって、私と御上土くんは思わず顔を見合わせました。
「元々普通科教棟で治安維持に当たっていた三家は現状抑止になるどころか生徒たちのフラストレーション上昇の元凶と化しているようですし、普通科教棟の備品修理申請の書類が最近こちらに流れてきていることからも通常時の組織より機能が低下していることは明白」
「と、なりゃぁいざ騒動が起きた時に当てにされるのはもう一つの治安維持組織である俺たちだ。何れ来る事態に備えて最善の策を練る。何もおかしかねぇだろ」
「いやいや、何もゆままで出なくても―」
たぶん、これは心配してくれてるんですよね。
でもですね。私にも引けない理由があるのですよ。
「多数の属性が使えない以上、御上土くん・郡ともに、ほとんどの場合、打消し呪文の使用は不可。その上、防御として魔法を展開するにしても相性がありますから、防御効果すらない、という展開もあり得ます。その点、私の解除ならば使用する魔法式事態を捕捉することさえできれば確実に効果が打ち消せます。
加えて、私が長期詠唱の大規模魔法以外の高火力の呪文を持ち合わせていない以上、短期詠唱可能な高火力の魔法を持つ御上土くんと郡の魔力を温存すべく私が防御に回るのは当然でしょう?」
「戦略的には何も間違ってないけど…!」
そう言って郡は頭を抱えました。
大丈夫ですよ。たぶん魔法科では「解除」の概念自体ないので「いきなり魔法が消えた…!」ってびっくりしてる間に隙を突けば割とすぐに一掃できちゃいますから。きっと。
「じゃあ俺っ!!せめて俺がゆま乗っけて駆ける!!」
唐突に挙手した春日井くんに、御上土くんがふむ、と考え込むように顎に手をやりました。
「確かに、惣火は機動力に難ありかもな。そのままじゃ攻撃避けるとか厳しいだろ」
「いや、でも春日井は普通科だろ?肉体強化できないだろ、おまえ」
東雷先生に指摘され、春日井くんはしょんぼりと肩を落としました。でも、…そうですね。研究に携わって特殊な講義の組み方してましたから、私体術方面の教科がっつり削られてたんですよね…。体力には自信ないです。
「あ、じゃあ本番は高坂くんに頼んでみます」
「あー、あの不良っぽいヤツ?隆盛サンほどじゃないけど優秀らしいし、…まあ、妥当なんじゃない?」
郡が大分投げやりに答えました。うーん…。適性的には問題なさそうなのでいいとして、引き受けてくれるでしょうか?
あと、高坂くんの名前を出したら更に春日井くんがへこんでしまいました。
ごめんなさい、春日井くん。春日井くんがいない時に話すべきでしたね。
御上土&ゆま「懸念事項は全力で駆逐すべし!」
郡 「御上土はともかく、ゆまはもっと自分を大切にしてぇえっ!!」
割と武闘派だったゆまちゃん。そして郡くんは一見常識人に見えますが、もしかしなくてもゆま絡みの時だけです。




