表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もふもふ!  作者: min
高校編(二年生)
44/51

争乱の兆し

GWということでそれなりに筆が進みましたので更新。さあ展開が加速するぞ…!←

 神の名のもとに人間絶対主義を掲げる絶大な権力を持つ三家。彼らは俗に「教会三家」と呼ばれ、人間以外を過剰なまでに排除することで有名な一族です。


 獣人としての形質が現れれば一族直系であっても即抹殺で、その癖、神の祝福を受けし一族であるため一族に獣人が存在したことは一度たりともないと豪語する、恐ろしい盲信者。

 独立二家と同じくより人間として完成された血筋になるためならば近親婚も辞さない一族で、血の濃さ故かそれとも本当に神の加護があるのか、精霊魔法の使い手に恵まれていて、三年に一度は使い手を排出しています。


 家名はそれぞれ、「祈部(いのりべ)」「招見(しょうみ)」「(おろし)」。


 神に「祈り」、そして「招き」、最後には「降ろす」という意味合いで付けられた家名はそれ故に序列が決まっていて、祈部から順に招見、降と続きます。

 その他にも色々と面倒な問題などがあって派閥争いなどあるらしいのですが、獣人との諍いなどで前面に立つのは幹部たるこの三家と教父ぐらいしかいないので割愛です。

 ともかく、彼ら三家は教会派というグループ内においてかなりの権力を持っているのです。教会派の派閥内で実質的にナンバー2を誇っている彼らさえ後ろ盾にできれば、教父直々の命で動いているだとか父が理事長だとかそんな不確かな情報なんて無くたってクラスどころか学園丸ごと掌握だって余裕です。

 そして、案の定、その懸念は当たってしまいました。


***


「―もうほんっとヤバいんだよ。祈部はなんでだかベタ惚れだし、狂犬とか言われてた招見も早々に懐いちゃうし。降はまあ、―好感度は高いけどフツー、みたいな感じだったのは救いだけど。

 あと、『本当のあなたを見せて欲しい。私は絶対に受け入れるから』っつってすげー付き纏ってくんのがウザい。教会派筆頭みたいな選民野郎のクセして何言ってんだよっつー感じ。まじ授業ボイコットしたい」


 そう言って、春日井くんは人の姿のまま私をぎゅっと抱きしめました。

 あれから数週間。事態は恐ろしい速さで進行しているようです。


「あー…。マジゆまならこんなにもかわいいのに。アイツは顔だけだよ、顔だけ」


 そう言いながら春日井くんは私を抱きこんでほっぺとかをすりすりしてきます。

 正直、男の子の姿でそういうことをやられると「セクハラですよ!」と叫びたくなるのですがちらっと見えた春日井くんの目があまりにも虚ろだったので下手に拒絶も出来ず、私はぬいぐるみよろしく大人しくしていました。先生や郡も一瞬身構えたのが気配で分かりましたが、珍しくどんよりモードな春日井くんにドン引いたらしく今回は放置に落ち着いたようです。


「…クラスの雰囲気はどうなんだ?」


 どんよりモードが幾分か落ち着いた頃、御上土くんが声を低くして問いかけました。


「もうサイアク。オヒメサマのやりたい放題。

つっても、オヒメサマのこと好きで従ってるのは三家以外いないっぽいけど。

 『権力が怖いから指示には従うけど、アイツ自体が気に喰わない』って子、多いみたいでさー。おかげでいじめもオヒメサマの目がある場所ではされてるけど、内容が骨抜きになっちゃって。

 あと、オヒメサマがあまりにもヤなヤツすぎて、教室内での妙な連帯感生まれちゃったみたいで?なんか普通科と魔法科の生徒間でも友情育まれ出してるんだよね」


 やれやれと首を横に振りつつ、春日井くんはソファに腰かけました。

 ちなみに、本日巧闇くんはにゃんこ光井くんとともに仮眠室でお昼寝中です。真っ黒にゃんこと真っ白にゃんこが身を寄せ合ってすよすよ寝息を立てている光景は正に眼福でした。っと、今はそんなこと考えている場合じゃないですよね。レナさんが酷い人すぎて、普通科と魔法科の生徒が友情を、


 …うん?


「えっと…?」

「―権力者は常に自らのもつ力に見合う態度をとり続けなければならない。

 まあ、そういうことだろう」

「傲慢で愚かな暴君なんて誰だってオコトワリ、ってこと」


 御上土くんの言葉に、郡がなんでもないようにさらりと付け足します。確かに、無能な人間にトップを任せるとか碌でもないことにしかなりませんけど。惣火の本家とか惣火の本家とか惣火の本家とかですかね。

 ええ。郡の件は一生根に持ちますがなにか?


「それでさぁ。別に仲良くなるのはどうにでもして、って感じなんだけど。

 ―抑圧された感情が、もうそろそろ爆発しそうだなぁ、って思って」

「それは警告か?」

「えすおーえすっしょ。センセ」


 茶化したように返しましたが、瞳の奥ではゆらゆらと不安が揺れています。

 彼の不安も、(もっと)もと言えました。


「これが普通科だけならまだどうにかなるけど、…魔法科のヤツもだからねぇ…」


 郡が溜息を吐き出します。


「あ?いざとなりゃ纏めて沈めりゃいいだけだろ」


 首を傾げる御上土くんは頼もしいことこの上ありませんが、…その発想は、聊か楽天的ではないでしょうかねぇ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ