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第九話:狩り狩り狩り狩り狩りばっ狩り

 飛べない鳥は世界最強なのさ。そんな感じのお話


 さて、天才科学者ともなれば、悪魔の一人や二人使役するものだろう。


 そこは「科学者ではなく魔法使いではないのか?」と思われるかもしれないが、賢明なる読者諸氏ならそろそろ主人公ロゼという少女の超越した頭脳の片鱗を理解できるだろう。


 すなわち、魔術的ではなく科学的に使役するということは……まぁ、こういうことだ。



「はぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~♪♪♪」


「ふふっ♪ 悪魔だけあって性欲は人並み以上、と。

 これは良いデータね」



 ここはロゼの研究所。

 日夜、あやしげな実験が行われたり頑張る場所である。


 そんな場所に、今日も彼女は居る。使役することになった悪魔っ子と一緒に。


 前回ロゼとの知恵比べで敗北して配下に加わった超悪魔ミッシェル。


 元々はもう少しカッコイイ名前だったのだが、ロゼの思いつきでこのように弱そうな名前になってしまった哀れな悪魔少女だ。



「んもぉ゛お゛お゛ぉぉ、止めてくらしゃいぃにゃのぉおお゛ぉおォおんっほお゛お゛っー♪」


「嫌よ。もう少しデータが欲しいんだもの」



 ミッシェルが受けている実験とは、悪魔の肉体の耐久性(主に性的感度)などを調べるものであるため、むしろ壊れるギリギリまで続けるのが実験の基本。


 全身をくすぐる特殊加工のボディスーツによって呼吸もままならなくなっているが、命の危機に関してはご安心ください。

 ロゼの科学力は超越的ですから。



「……ふぅ、それじゃ実験はこれでおしまい。

 お腹も減ったしご飯にしましょうか」


「……(返事はしない。屍のフリ)」


「死んだふりするくらいなら心臓も止めなさいよ。

 科学者イヤーは地獄耳。その程度の演技じゃ騙されないわよ」


「……ロゼ様は我に厳しいのでは?」


「そこはほら、アレよ。

 貴女っていじめたくなるオーラをだしているから」


「うぅ……、かつての超悪魔がこんな仕打ちを受けるとは……」


「じゃあ過去を捨てて口調も変えて、新しく生まれ変わった設定を追加すれば?」



 ほら、この通り♪

 ロゼの科学力はミッシェルの悪魔的回復力を想定しての実験なので命に別状はありません。


 極めて健全で平和的な科学実験なのですから。



「今日のご飯は確かサムゲタンね。

 料理長がこの世界の一般的なニワトリで作るって張り切っていたわ」


「一般的と言うと……コカトリス!?

 ロゼ様! ロゼ様の世界ではどうだったか知らないですけど、こちらの世界での肉の強さは、鳥>豚>牛なんですよ!?

 悪魔の私でさえニワトリ狩りはきついんですから!」


「でも、そのヒエラルキーはそのまま美味しさの基準にも使われるそうじゃないの。

 大丈夫。私の配下でも武闘派連中に捕獲依頼を出しておいたから。

 てか、口調を変えるの早いわね」


「これでもロゼ様に心酔しているのも事実なんですからね!

 これからはいじられ系かわいこブリっ子悪魔娘としてやっていこうと思います♪」



 ……二人のことは置いておくとして、まぁ~たロゼの興味本位の命令が配下達に下されたいつものコンビに話を移ろうと思う。


 とんでもない化物狩りを依頼されたのは勿論あの二人! アクスとセムである。



 ◆ ◆ ◆



「でりゃあ!」「うりゃあ!」「チョイサー!」



 斬りつけるたびに剣が欠けていく。しかしそんなことにお構いなしに振るうのは騎士アクス。



「フンフンッ! フンフンフンッ!」


 左右から繰り出すショートフックをリズミカルに叩き込み、突進の推進力も加えて獲物を弱らせるのはセム。


 彼の場合は元・神様パワーとロゼの改造手術によって得た自動修復機能付きの手甲で殴る。



「なぁ、アクス!

 このニワトリ無茶苦茶強くないか!?」


「当然だぜ、セム!

 お前の前居た世界はどうだったか知らないが、この世界のニワトリは火を吐くし、空を飛ぶし、雷や風を操るし、姿を消して全長5メートルの巨体で襲ってくる。

 世界最強の生物はニワトリなんだZE!」



 確かにニワトリは最強だ。ただし、この二人の次にだが。



「俺の本気は大地を砕く~♪ 俺的必殺技:足払い!

 セム! 今だ大技を決めろ!」


「フフンフンフンフンッ! セムセムパンチ♪」



 ノリの良いリズムを刻みながらのアクスの足払いで体勢を崩したコカトリスは、セムの必殺パンチが命中した頭部は永遠にその体とオサラバした。


 しかしここで終わるようなら盛り上がりに欠ける。この戦闘を見ていた者ならそう思うだろう。


 彼らの敬愛する主人であり惚れた女性の好奇心を刺激するには、ちと刺激が足りなかったようだ。



「(二人とも強いんだから本気出せる相手が居た方がいいでしょうね)」



 勿論、監視カメラで研究所から二人を覗いていたのはロゼ。


 彼女は戦闘を終えて、倒したコカトリスから剥ぎ取りを行っているところに強敵を出現させたのだ。



「は~っはっはっはっ! 俺様は史上最強の魔王様だぁぁぁ~!!!」



 なんと!? これが人間のすることか!?


 ロゼが二人の側に召喚したのは魔王!


 ロゼ達がこの世界に訪れて最初の頃、彼女が魔王に間違えられたように、本物の魔王はこの世界に実在していたのだッ!!



「ふん、貴様ら人間と……神か。

 それなりに強そうだし、この魔王ブライルド様が直々に相手してやろう!

 (ところで何で俺様こんなところにいるんだろ?)」



 これを見ているロゼは笑いが止まらずに転げまわる。


 側で一緒に見ていたチャックルとミッシェルは慌てて逃げ出そうとしたが、笑い暴れているロゼのうっかりキックや、うっかりパンチで吹き飛ばされている。


 そして魔王を召喚したロゼの技術は召喚魔法ではなく、召喚科学であることを間違えないように。ロゼは科学者なのだから。


 しかしこの魔王は強そうだ。ロゼも幾らなんでもやり過ぎじゃないだろうか?


 このままアクスとセムのコンビは魔王に殺されてしまうのか!?



「セム、まだイケそうか?」


「アクス、俺達は死なねぇさ」


「そうだな。まだコカトリスの肉を美味しそうに食べるロゼさんの笑顔を見てないもんな」


「ロゼ様の笑顔は世界一ィィィィ!」



「は~っはっはっはっ! 幾ら強かろうと魔王である俺様に敵うものか!」



 さぁ! セムとアクスのコンビは魔王ブライルドに勝てるのか!?


 彼らの帰りを待っているロゼは笑い過ぎで過呼吸になるのか!?


 そんな感じで次話にご期待ください!



 

 否! 二人が負ける理由など、この世に存在するはずはなかった。


アクス「惚れた女を抱くまで死ねるかYO!」


セム「主を持つ者が負ける道理は無い!」


魔王ブライルド「グフッ……」



 二人は魔王に勝ちました。

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